樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

大極殿

2010年05月20日 | 木造建築
平城遷都1300年で盛り上がっている奈良に行ってきました。
主な目的は大極殿。3年前、まだ工事中に訪れたときもご紹介しましたが、文化庁が原寸で復元した巨大木造建築です。
工事期間9年、総工費180億円という一大プロジェクト。その半分以上の98億円が木材調達費だそうです。


(復元された平城京の大極殿)

奈良県の林業地・吉野のヒノキを使ったという情報と、輸入材(ベイヒバ…北米産ヒノキ)を調達したという情報が入り混じっていますが、私は後者だと思います。
現在の日本にこんな巨大建築をまかなうヒノキの大木はないはずで、同じ奈良の薬師寺金堂の再建にはタイワンヒノキが、現在再建中の興福寺金堂にもアフリカ産の木材が使われています。
いずれにしても木材だけで98億円というのは信じられない額。今なら多分、事業仕分けで廃止されるでしょう。
建物の規模は、間口44m×奥行き19.5m×高さ27m。当時はこの巨大な木造建造物の中で、天皇の即位や元旦の儀式、外国使節の謁見など国家的なセレモニーが行われたわけです。
実は、遷都のメモリアルイヤーに復元された大極殿がもう一つあります。京都では平安遷都1100年の記念事業として、明治27年に大極殿が復元されています。それが、現在の平安神宮。


(平安京の大極殿=平安神宮の外拝殿)

平城京の大極殿と異なるのは、屋根が1層であること。また、こちらは原寸ではなく、8分の5に縮小されています。そのサイズが間口33m×奥行き12mですから、原寸なら53m×19m。奈良の大極殿よりもやや大きかったわけです。
もう一つの相違点は、奈良の大極殿が当時とほぼ同じ場所に建てられたのに対して、京都の大極殿は離れた場所に再建されたこと。実際の場所である都心部(千本丸太町あたり)に建てる計画でしたが、用地買収に失敗して現在の場所(岡崎地区)に変更されたそうです。
また木材調達の面でも、明治時代なら輸入材に頼らなくてもよかったでしょうから、こちらの大極殿は国産材のはずです。


(平安京大極殿は復元後すでに115年)

平城遷都1300年祭は今年の11月まで続く一大イベント。一方、平安遷都1100年では京都三大祭の一つ「時代祭」が始まり、内国博覧会も行われましたから、イベントの規模としては京都の方が大きかったようです。
それにしても、京都は遷都1100年、奈良は遷都1300年。1200年とか1500年ではなく、中途半端なメモリアルイヤーに大事業が行われるんですね。
コメント (4)
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