樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

「モナ・リザ」とポプラ

2010年05月13日 | 木と作家
子供の頃は絵が好きで、一時は画家を夢見て高校の美術部で油絵を描いていました。
絵の具や筆もそうですが、高価だったのはキャンバス。貧しい田舎なので、私も含めて多くの部員が新しいキャンバスはたまにしか使えず、先輩が残した作品の絵の具を削り取って白く塗り直して使ったり、大きな作品はベニヤ板に描いたりしていました。
世に伝わる名作はキャンバスに描かれていると思い込んでいましたが、先日、有名な油絵も実は板に描かれていることを知って驚きました。キャンバスが普及するのは16世紀半ばのことで、それまでは板絵が一般的だったそうです。
使われた板の種類は国や地方によってさまざまで、例えばデューラーはイタリアにいる頃はポプラ、オランダやドイツにいる頃はオークやシナノキのパネルに描いたとか。


(デューラーの自画像。ドイツ時代の作品なので多分シナノキ)

ポプラはイタリアヤマナラシ、オークはヨーロッパナラ、シナノキはドイツ歌曲にある「菩提樹(リンデン・バウム)」のことだと思います。そのほか、クラナッハというドイツの画家はブナを多用し、北ヨーロッパではクルミやクリ、ノルウェーではモミのパネルも使ったそうです。
ダ・ヴィンチもイタリア時代はポプラ、フランス時代はオークのパネルに描いたようです。ということは、「モナ・リザ」はポプラに描かれているはずです。


(ポプラのパネルに描かれている「モナ・リザ」)

たくさんの名作が板に描かれていることもさることながら、それぞれの国を代表する木が使われていることが私には興味深いです。


(宇治市植物公園のイタリアヤマナラシ=ポプラ)
コメント (2)
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