樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

茶碗と木

2008年03月28日 | 木と飲食
京都の陶磁器と言えば清水焼ですが、現在は清水に登り窯はありません。煙害を避けて、一部の陶工が宇治の炭山という山村に移住して登り窯を築いています。清水焼は宇治の山奥でも作られているのです。
その炭山はうちから5~6km。のどかな山里で、たまに鳥を見に行きますが、先日は登り窯をウォッチングしてきました。何人かに尋ねて、ようやくある組合の登り釜を見せていただくことができました。

       
             (今では数少なくなった登り窯)

登り窯で燃やす薪はアカマツ。火力が強いのに加え、油煙が多く、それが土や釉薬に作用していい焼物ができるそうです。登り釜の前にはたくさんのアカマツの薪が積み上げられていました。わざわざ備前から取り寄せるとか。

       
          (登り窯の前に積み上げられたアカマツの薪)

茶碗と木の関係は薪だけではありません。釉薬には木の灰を使います。中でも重要なのがウバメガシ、ツバキ、クリ、イスノキの4種類の木灰。イスノキについては、以前bulbulさんから「先祖の陶工が釉薬に使うために庭にイスノキを植えていた」というコメントをいただいたことがあります。特に高級な焼物にはイスノキとツバキの灰を使うので、江戸時代には尾張藩が瀬戸にイスノキを植林していたそうです。
案内してくださった若い陶工は、「登り窯で燃やしたアカマツの灰も釉(うわぐすり)に使うので大切に取っておきます」と教えてくれました。釉用の灰を専門に扱う「灰屋さん」もまだあるそうです。

        
                 (薪を継ぎ足す横穴)

ロクロを回しながら形を整えるヘラもアカマツ。土がねばり付かないだけでなく、万一手を切っても大した傷にならないそうです。多分、マツヤニがそういう働きをするのでしょう。
この炭山でも登り窯に火を入れるのは年に1~2回。他の産地でもそうでしょうが、多くの陶磁器は電気かガスの窯で焼かれています。
コメント (6)
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