湘南オンラインフレネ日誌

フリースクール湘南オンラインフレネ学習的就労支援活動・災害ボランティアの実践を書き溜めていきます。

2/28 黒田裕子氏講演会レポートをまとめていました

2013-03-02 04:20:44 | 引きこもり
以下は、既にブログで流した記事をまとめ、来年度のセミナーをさぐったものです。修正を加えてあります。

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~被災者支援と防災の連続セミナーの種 災害看護の講演会を実施して~

今回の講演会(2/18)は、医療・福祉の目で防災・東北被災者の有効な生活支援の見通しをたてていく、その素地となる先進活動と情報を提示し意見交流を行うというノード(集積交差点)作りの活動だった。

第一回講演では、県茅ヶ崎保健福祉事務所の保健予防課の講演をお願いした。この話を口火にして、今回の黒田裕子氏の「要援護者の保護と医療・生活支援」を焦点にした

「被災地の災害看護活動から考える生活復興期の支援~災害時要援護者の支援を中心に~」

というテーマを語ってもらった。

ー☆ー☆ー☆ー

~災害看護と「地域トリアージ」から見える論の隙間~

黒田さんは、訪問災害看護活動の視点に「地域トリアージ」という概念があるという。限界ある人材の中で有効性と効率を考えた、飛田の使い慣れた言葉で言えば「パーソナル・ケア」の「パーソナル」にあたる個々人の状態、個別性を、「適切に分類して対処しやすくする」という、いわゆる「優先仕分け」のことで、これを地域に適切に対処できるように処理情報をファイリングしておくという、徹頭徹尾「施療者のための」行動基礎情報なのだった。

福祉の立場からは、「共感と伴走」というケアの視点が入ってくる。しかし、これは安全避難の後に活きてくる概念だ。災害看護の場では、保護と安全確保ということが第一となる。これは「被災から避難・治療生活、生活再建」という時間軸のどこの論議なのかということで、内容の重要性の比率が変わる。災害を一括して語ってはいけない。常に時期と場面を意識して考えていかねば行動を見誤る。

黒田さんの説明は、被災時の住民の保護に携わる方の話にシフトしていった。防災構想の大局の中で、「どの組織がどのように対処し連携していくのか」という点に概括的に触れて、セルフチェックの手法を使って、「あなたは的確な行動をとれるように準備していますか」と問う。あなたとは「災害救護・看護・介護の関係者」である。この部分の話はさらりと流れたのだが、この論法は基準となる構想をバイブル(真理)としているので、臨機応変さを価値とする社会活動(市民活動)畑からみると、硬直化しているように見える。

社会活動は基本は「探り当てていく活動」、「ひとや現象と対話しながら解決に導く活動」だから、実践と企画更新は一体のもの「試みつつ、過ちを活かしていく活動」ともいえる。いわば「過ち組み込み済み」論、臨機応変性が、組織の遂行論を超える独自の命のようなところである。

ところが災害の場合は過ちは命に関わることであって、やり直しは効かない。被災後、企画は改良企画で見直しをされていくが、基準更新のスパンは長く、経験の固有名詞は消し去られ一般化される。

日常的に訓練を受けた者が災害対処法を啓蒙し、迷える子羊を領導するという基本線に沿って、防災活動は展開されている。

~「要援護者」とは~

ところがそこに、はまることができない事情を抱えた方たちが「要援護者」なのであって、それを無視して効率と有効性のなたで「ひと」を整形すれば、「ひと」の全体性は失われ、削ぎ落とされた体幹がただ残るだけということになりかねないのだ。「要援護者の保護・支援」とはそういう「ひとの多様性・個別性に丸ごと寄り添う」ということだ。

抜け落ちていくひとたちを保護するために「地域トリアージ」が行われる。そこに「自助・共助・公助」という論が日常待機の枠組みとして登場してくるが、この「自助・共助」が難しいひとたちの防災論、自分らなりの「自助・共助」論が成長しうる防災論はないかと私は考える。

発想は「被災前・被災時・避難生活時・生活再建時」という時間軸を意識しないと、ひとを丸抱えした防災論はありえなくなってしまう。災害が去った「避難生活時」について考える場合、救急医療の観点は退き、治療と保健の福祉に近づいた視点が重要性を増してくる。

黒田さんの話は、この後、避難所生活と看護の話へとシフトしていく。茅ヶ崎の避難所は現在8箇所、福祉避難所は3カ所だとの市行政担当者から話が出て、避難所の数について黒田さんから「比較的進んでいる地域」という評価があり、それでもまだ「被災者を収容しきれないだろう」という行政担当者の悩みのコメントが参加者から入った。

阪神淡路大震災のとき、この「地域サポート」と「地域トリアージ」が行われていなかったために、単身者の孤独死は700名強に及んだ。自殺者も増えるが、生活破綻・病死によるものが主だった。そのことについて、私は意見をはさみ、東日本大震災の被災者の中から既に「孤独死」が始まっているが、阪神淡路大震災のときと同様、「孤独死」が際立ってくるのは被災後数年経ってから、つまり二年目以降の現在の課題ではないかと黒田さんに問いかけた。

「孤独死」は「地域の絆の問題」だと応答する黒田さんのその視野には、どのような人々が写っていたのだろう。ローカルの集落の場合、地縁・血縁の結びつきは濃い。日常生活のプライベートな部分まで、互いに明け透けに見えている社会。一方、分譲地やマンションのように、広域から集まった「ひと」で地域ができている場合は、隣人を知らないことが珍しくない地域である。一般に後者の現状としての地域は否定的に扱われ、「ローカル・モデル」の地域の絆作りがすべての地域でも必要という論のもとに、都市・都市近郊地域の防災活動が空転する。それは住民の公共意識の浅さなのだろうか。

黒田さんの応答は、教科書通りの「防災・防犯の必要性に基く地域コミュニティ作り論」だった。ある家庭は高齢者の介護を抱え、ある家族は週半分は仕事の関係で家を留守にし、ある家族は三交代勤務で夜勤がある。ある家庭は水終売を営み、ある家族は宗教に夢中である。またある家は事情があって単身生活を行い、ある家族は10人家族である。ある家族は、せん妄を伴う若年性認知症の方がいる…という具合に、家庭生活は多様であり、そこには噂や差別による傷つけあいや無理解が潜んでいる。

「人間、早起きはいいことだ」式に、防災コミュニティの鋳型を当てはめていくのだろうか。民生委員や地域自治会役員によるプライバシーの集中管理おこなわれても、それは相互理解・相互扶助というひとりひとりの自覚的行動育成には直結しないだろう。

この従来型の防災シフトは現在の防災構想が、都市型の特徴である「外出時被災」の、いわば「地域コミュニティの手の届かぬところの防災」というシステム的な穴を持っていることも、新たな防災ネット論が検討されるべきなのだ。集落の地域コミュニティは、農漁業の社会的生産の背景や、地域が同一職種に属するというような歴史が生み出したものだ。それを安全避難の都合でコミュニティ像を社会にかぶせていくことに、疑問を感じないだろうか。

被災直後、黒田さんはそのコミュニティから独立した職業として、人命救護や安全確保にあたる。避難が済んだ時点からの看護ケアと避難所運営スタッフつぃて、災害コミュニティを立ち上げる。地域まるごと避難の避難所でない限り、避難所は見ず知らずの家族も混じった「仮想コミュニティ」である。

「外出時被災」については、「通勤者の一時避難」以外、誰も生活圏の研究経過を語るひとがいない。見知らぬ他者に囲まれた時の被災は、生活圏といえども、要援護者には過酷な状況となる。

指示が聞こえない聴覚障がい者や、私のような見かけからは健常者に見える網膜色素変性症の視覚障がい者、指示が理解困難な知的障がいや、発達障がい、精神障がい、外国人、指示通り動くことに困難のある妊婦さんや乳幼児連れの親子、高齢者や身体障がい・病人の方なども、場の集団にシャッフルされてしまう。こうした方を安全避難させ、次に家族と再会させる活動が方法論を持っていないことがあるにも関わらず、みごとにこの「外出時被災」については、論じられることもなく、無視されていくのだった。

災害看護の立場からは、急性期(被災直後)、地域に派遣され地域住民の命を守るという立場からすれば、「外出時被災」は守備エリア外にはみ出してしまう。その意味で、今回の会で数回「外出時被災」について、私は黒田さんに水を向けたのだが、すべて空振りに終わってしまったのは、災害看護の組織的対応を仕事とする対象を明確にした活動であるがゆえの、範疇外の質問だったと理解している。

結局、講演は、被災時の「救急医療と災害看護」「避難生活管理の留意点」を紹介することで、災害時の看護師の活動の重要性は語られたが、それは関係者向けの会という意味では、全体像を語るには、漠然と全体のシステムを語るのではなく、逆にピンポイントの具体的場面の、場面カンファレンス型の論議(針の穴から世界を覗く。)、テーマの立て直しが不可欠だった。黒田さんには、研修型の語りから経験紹介の語りへの誘いが必要だった。

参加された方(13名)を満足させる内容であったかと問われれば、いささか心もとないのだが、「要援護者の救護・支援」が喫緊の課題として、今問われているという感触は、改めて感じ取ってもらえたのではないかと思う。

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~災害発生時の救護活動への社会活動連携~

黒田さんの講演は、在宅被災者の救護を出発点として、救援者のネットワークへの説明へと話を拡張していく。

黒田さんにとっての救援者とは、消防団とか町内会・防災リーダーや、自衛隊とか警察・赤十字という救護のプロ集団のことで、市民活動のような自発的即席運動体は位置づけや、連携のスケッチすら見当たらない。被災時活動は訓練された者でという常識が通っている。隣人の急場の保護や連れ添い避難が自然発生的集団行動になっても、その力とは防災論上接点を持たない。綱渡り的に見えるが、実はこの協力に立ち上がる人々・正しい災害リテラシーを持つ人々の自発行動を、平常時如何に増やしていくかが鍵になる。その行動が危険行動であるか否かは綱渡りであるが、東日本大震災の津波避難行動の場面では、この人たちが当人を含む隣人の命を大きく左右したのだ。

時間が経てば、全国の災害ボランティアが集まってくる。この段階でボラセン等が対策本部の形で集まってくるが、退職看護師の会のような有資格者以外は、蚊帳の外に放置される。実際には救護場面では、障害物撤去や死傷者身元確認等の限定的な連携が行われるが、救援の公的団体の指導下の動きとなる。しかし、救急医療から災害看護に引き渡された傷病者は、介護の枠の中で、ボランティアの連携の場は広がるのだ。ここでさえも、地域の絆からはみだした市民活動的介護ボランティアが働き出すのであって、地区社協・地域自治会の管轄外の動きが意味を持ってくる。予測の難しい自然発生的な協力者のファクタを動的に組み入れておく災害論が望まれている。

「外出時被災」のようなシャッフルされた状況の中で、災害弱者の保護という課題は、混乱した集団から安全確保して避難させる自発的な「準・防災士」のような活動が必要になる。研修と資格試験を受けて、防災士になるという道も大事なことだが、いわば活動の裾野、「自発的保護の社会活動の登場」が期待されている。

地付き援護者育成の枠組み外の、都市型災害対策の社会活動を考えたい。その思いが初めて登場したかのように黒田さんに聞こえている現状こそ、専門職の横断カンファレンスというか、情報と発想交流のロビー活動、実践的な検討会が必要なのだ。

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セミナーの個性・目的・予定などまとめたメールを書いたので、その抜粋を以下にのせます。まだ来年度のラフスケッチ段階ですが、ご覧下さい。

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セミナー育成の目的は、ざっくり言えば、

1)被被災地後方支援の立場から、東北被災者の継続支援のエネルギーの水路をたてていくか。

2)生活・就労・居住にシフトしていく被災地のニーズによりそう、現地長期滞在型ボラの活動の質の焦点(生活支援)化。

というような「東北被災者継続支援の内容検討」という社会活動の必要に応じる論議。

「孤独死」や「自殺」というような矛盾の頂点にある対策課題に連続して広がる、生活破壊・生活苦に対する生活再建連携支援の骨格作り。

これらは、東北の次は防災という水をかけられてしまった焚き火の再燃にふんばる災害ボランティアのニースに答えるものです。その中に「災害時要援護者の救護支援と生活支援」が出てくる。

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もう一つは、

3)東日本大震災の状況報道などにもブラインドまたは無視されてきた災害弱者の支援と、それを通じて自分たちの防災の予防対策作り。東北の災害弱者継続支援と災害弱者防災の一体展開。

これは、災害ボランティアと行政・議会の共通課題で、セミナーの中心課題となるものです。

「東日本大震災の災害弱者と生活再建支援」
「災害弱者の地域防災」

のふたつ、「災害時要援護者の救護と支援」という個性を持った災害ボランティア活動の補完支援活動なのです。報道にブラインドされてきた高齢者・障がい者被災実態と避難生活を見失わず災害対策活動を作っていくこと。ここにあります。

支援活動が退潮期に入る中、一般向け活動でそれを成すには、ステレオタイプ化した支援活動の説得という時間のかかる問題が控えています。逃げるのではなく、時間的余裕の無い喫緊の課題だからです。

第一に、拡散している支援活動に、このような大上段ふりかぶった見通し立て活動を一般向け活動に託すのは無理だと思います。

だから「要援護者・災害弱者」を支援する関係者が議論となるにこしたことはないですが、それは、まず無理なので、関連ゲストを呼んで、話の口火を切ってもらう。リアルに論点を掴ん
で考えるという懇談型講演会を作りたいのです。

行政関係者にも入ってもらいたいので、路線化の志向は各自の所属団体に持ち帰ってもらって活かしてもらうという「野球のファーム」のような場を作りたいのです。内容は、災害ボランティア全域に及ぶ必要は無く、補完的(実はまったく補完的というより扇子の要)領域の講演会です。

できるだけ現場の関係者を頼み、視界がクリアになる内容を仕掛けたいんです。だから、いわゆるお偉いさんに限ってはいない。ただ被災地や阪神淡路の関係者から呼ぶことが多いので、
交通費がかかります。また少人数(3~4人)ですが、長期休暇を利用して、ピンポイントの見学会を年1回入れたいので、ガス代、車調達費、1泊宿泊費がかかる。全額参加者負担では、
怪しいので、民泊含んで宿泊費はセミナー負担で行きたい。

現場が見えるひとが育って欲しい。




来年度は

JR茅ヶ崎駅駅長

大店舗会災害担当者

包括支援センター担当者

医療介護機器販売レンタル業者

民生委員等

地元関係者との懇談も視野に入れているので、交通費は一概には言えないが。なかなか成立するとは思わない。

災害と災害弱者をめぐる活動をあちこちで活性化させていく、チャージの活動の感じだ。ただ、切れ味だけは、通していきたい。

実施回数は地元ものはできるだけ多く、それとは別に、遠方からの招待・1回の見学交流小ドライブを入れて、年4回かっちりしたものを実現したい。

被災地の訪問介護・看護業者
被災地の障がい者施設関係者
被災地の行政職員(または社協)
被災地滞在高齢者支援研究者

一般向けよりは少し難しくなるが、A4両面版通信を、このかっちりした4回企画ごとに発行する。

運営資金がかかるのは、被災地関係の話は、現地に行って口説いてくる資金が要るからだ。行き先は東北に限らず、阪神淡路大震災関連で関西にも行く。

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私は黒田さんの講演と以下のような(すれ違ったが)バックアップ資料提供を行った。

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より状況を読み取る大事な記事「☆」
注目すべき記事は「★」
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<講演会当日配布分>

☆「被災地の75歳以上の女性、仮設でこもりがち 厚労省調査」(2/10)
☆「仮設暮らし一層厳しく 仙台の入居世帯、不安くっきり」(1/21)
☆「震災後、けいれん増加 気仙沼市立病院患者」(1/29)
☆「被災地支援センター 岩手県陸前高田市における障害者訪問調査 第一次報告(速報)について」
★「要援護者対策に遅れ 災害時全体計画、策定54.3%(宮城)」
★「震災時の周産期医療の実例を報告 岩手・遠野でフォーラム」(2/4)
★「障害者働く場、念願の再建 被災地女川町のNPO、4月にも」(1/23)
★「陸前高田市 デマンド交通スタート 広田・小友気仙町対象 自宅と病院・商業地結ぶ」(2/2)
★「「陸前高田の在宅療養を支える会」震災1年11カ月、念願の発足 ケア充実へ連携強化」(2/11)
●「郡山から避難の男性 都内の宿舎で孤独死 死後約1ヵ月」(2/1)
●「被災50代男性2人、雇用促進住宅で昨年暮れに孤独死 八戸

●「福島へ介護支援 参加を 府中の有志PR」(2/3)
●「「避難の手助け受けた」は48% 陸前高田の障害者ら」(1/12)
●「東日本大震災二年目の検証と インクルーシブな復興」

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<追加資料分>(河北新報を中心に)

☆「焦点/福祉避難所、進まぬ指定/被災3県・既存の利用者優先」(2/18)
☆「焦点/福祉避難所どう運営/地域との連携カギ」(2/18)
☆「焦点/要介護、3県沿岸1.2万人増/仮設長期化、体調崩す」(8/17)
☆「焦点/要介護認定者が急増/自力生活に不安、拍車」(8/17)
☆「焦点/要介護認定者が急増/支える家族、苦悩深く」(8/17)
☆「焦点/障害者の避難・介護/医療機器、運び出せず」(9/24)
☆「焦点/岩手、宮城、福島3県 障害者1655人犠牲」(9/24)
☆「被災地の医師 「震災で在宅医療が広まった」と語る」(3/23)
☆「焦点/中高年女性、再就職進まず 被災3県」(9/26)


★「焦点/お産、震災機に役割分担/津波で閉院続出 拠点に集中、負担軽減」(8/27)
★「焦点/石巻・お産の役割分担進む/妊婦の安心、目配りを」(8/27)
★「焦点/福島県、県内自主避難の家賃補助へ 子どもや妊婦いる世帯」(11/6)


以上

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