湘南オンラインフレネ日誌

フリースクール湘南オンラインフレネ学習的就労支援活動・災害ボランティアの実践を書き溜めていきます。

ポータブルトイレが空を飛ぶ日

2008-11-28 08:00:34 | 引きこもり
父の言葉がめっきり減ってきた。苛立ちのようなものは感じないが、行動が粗雑になって、大きな失敗が繰り返されるようになってきた。教科書通りなら、外部観察だけでなく、当人との会話の中で困難を掴むことが大事ということになるだろう。しかし関わりを持つということは、これは常識とは異なるが家族・関係者すべて何らかの関係の中に当事者と向き合っている。その者が客観を確保するという構造は実は擬制なのだと思う。関係の歪みを受けつつ、もつれを離脱していく道を求めていく。その関係性が空転し始めている。

朝食を出して、階段を降りたところで、父の部屋からただ事ではない大きな物音と悲鳴があがった。急いで部屋に戻ると、ひとつの足に10数kgのコンクリートの塊をつけた椅子型ポータブルトイレが吹き飛び、父が部屋の真ん中で横転して呻いていた。椅子の下に挟んである汚物バケツが防水シート一面に排泄物を溢れさせ、転がっていた。猛烈な悪臭が立ち込めていた。

父はポータブルトイレもろとも、吹き飛んでいたのだった。

父の身体を拭き、怪我をチェック。母に救急箱を(焦らずに)持ってくるように親子電話で指示。父を安全な場所に引きずって移動し、汚物処理に移った。手元にある尿取りパッド全部をかぶせ、もともと準備してある30リットルゴミ袋に詰め込んだ。

母が救急箱を持って上がってきたが、悪臭に驚き呆然としていた。父の四肢と頭部の細かいチェックと消毒、着替えを支持して、階段を急ぎ足で降りた。私は、足の骨折後遺症で、走ることが出来ない。ありったけの雑巾とひとにぎりの新聞紙を集め、バケツに水をいれて現場に戻った。

憎まれ口を言っているから平気だと母が言った。頭を動かさないでと私がどなる。転倒が連日続いている。今回は派手だった。コンクリートやぐらのようなポータブルトイレが上下逆にひっくり返って数m先にころがっていた。父が手すりに全体重をかけたのだった。ただごとではない。

父はポータブルトイレを投げ飛ばしたのだった。今日はインフルエンザ予防接種が午後からある。それに影響すると入所できなくなる。腹をくくって、しばらく父の傍にいることにした。まずは周辺の清掃と、父の安静の確保。

私が大田区の塾に勤務していた頃、すぐそばの4車線路を飛ばしてきた自家用車が暴走して追突した。車が派手に空中を一回転し、中からひとが走り出てきて崩れた。周囲に緊急停止した車に呼びかけて、非常灯を焚かせ、追突の連鎖を避けさせ、クラクションを鳴らせるように依頼した。緊急時を知らせるためだった。車道の安全を確保し、彼の気道を確保した。

彼は骨折で歩けるはずがないと警官が語っていた。しかし私が見たのは、運転席から立ち上がって走り出た姿だった。この違いは何のだろうという思いが残っていた。

だから派手な事故が起きたとき、その当事者の意識の具合だけでは身体の状態は現場ではわからないものなのだと思ってきた。父は毛布にくるまって寝息をたてはじめた。いびきではなく、私の立ち上がる気配にも反応していたので、階段を降り、雑巾を洗濯していた母に状況を説明した。朝食を無理して食べさせることは、やめよう。私が父の部屋のソファーで眠ることにし、母を寝かせた。

11時すぎて、緑内障の眼圧を下げる薬の点眼を忘れたことに気が付いた。薄い曇りガラスの視野がどろりとした透明なゼリーが渦巻いているのがわかったからだ。右目はささないと失明すると脅されていた。点滴を済ませて目をつむっていると、父が起き出した。気まずそうに、ベッドから降りてポータブルトイレで立小便を始めようとしていた。身体は驚異的に丈夫だと分かったものの、周囲を汚すから座ってという指示は全く忘れ去られていた。尿で再び汚されていくベッドサイドに虚しさを感じつつ、父の紙パンツ交換をして嫌になった。全く汚れていないのだ。

拭き掃除のやり直しをして、沈黙と無視を続ける父に、お絞りを渡す。視野をゼリーが渦巻いていた。

昼食を作って食べさせて、ホームに状況連絡を入れ、ケアマネさん経由で、階段昇降介助のHさんと、介護タクシーのAさんに間接連絡を取った。母が保険証が見当たらないと焦っている。余計な何かが芋づる式に出てくるから、とりあえず病院にいこうと母を説得。母は昨日の検査の後始末の便意が不安定なので留守番をするという。我が家の借用車椅子が初めて出動することになった。

無事、接種を終えて家に戻ると、今度は自分に睡魔が襲ってきた。仮眠1時間半。夕食準備をして、巡回に出る予定で立ちくらみが起きた。メモを見ると、学習指導だったので、堪忍してもらうことに。そのまま2時間仮眠を取った。

起きて焦った。今日はドットコムの集いの日ではないか!全く脳裏になかった。自己嫌悪と幻滅がのしかかってきた。がっかりして、コーヒーを入れていると、母が笑った。「二代目だわ、今日は27日(木)よ」と。安堵と自分の危うさが見えて、コーヒーが苦かった。

今日、茅ヶ崎市役所1階のCafe.COMで「バリアフリーカフェ同窓会」が18時から開かれる。もうハプニングは沢山なのである。


夜間傾聴:******君(仮名)
     自由が丘君夫妻(仮名・傾聴にあらず、家事引退勧告)

<気になる記事>
●「経済困窮者の高卒資格支援/東京」
●「「氷河期」再来に危機感/マナー講座は満員/茨城」
●「県内就職、苦戦する高校生/秋田」

<チェック中>
●「大人のアスペルガー症候群」

p.s.介護タクシー、片道1,090円なり。夜間救急の帰りも24時間対応しているとか。助かる。浜見平の業者さん。

(校正1回目済み)
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