名水百選『御手洗池』(能登)

2020-04-15 00:00:00 | たび
能登半島の東側、和倉温泉より北になるが、湧き水で有名な池がある。細い道路の入口に小学生が作った看板が立てられている。『みたらし池』と書かれている。漢字で書くと『御手洗池』となる。しかし『御手洗』という字は「おてあらい」「みたらい」「みたらし」と三通りに読める。本件は「みたらし」だ。

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看板の絵は池に赤い馬の鞍が浮かんでいるが、戦国時代に追い詰められた武士が馬とともに入水自殺したといわれ、鞍だけが赤く染まって浮き上がってきたことからこの一帯を赤倉と呼ぶようになったという怖い言い伝えを小学生に無理やり描かせたのだろう。馬も武士も見つからず鞍だけが池に残されたということなら、入水したと推測するより、単に鞍を捨てて馬も武士も逃げたと思うのが普通かもしれない。



この池は晴れている時は一帯が緑の光に包まれるそうだが、あいにく強風ビュービューの日で、ウイルスもどこかに飛んで行ってしまうはずだ(池のカエルがあらたな潜伏先になることもないだろう)。



池にも、杉の木にも、地面にも大量の苔が群生していて、マイナスイオンであふれているそうだ。ミネラルが豊富な水が一日600トンも湧き出すそうで、古くからお茶用に重宝されていたそうだ。



ただし、環境が苔に包まれているので、そのままでは飲まない方がいいそうだ。ウイルスだけではなく菌類のことだって、あまり研究されていないはずだ。これ以上、地球に厄災が増えないようにしなければならない。パワースポット3。

能登中島駅にある郵便車

2020-04-14 00:00:39 | たび
のと鉄道能登中島駅には鉄道郵便車「オユ102565」が保存されている(といっても屋外展示)。郵便車は全国で72台製作され、全国で活躍したが、昭和61年(1986年)を最後として、すべて退役。現在は2両の車体のみが存在している。1両はどこかの研修所にあるらしく、一般人が見ることができるのは、この一台だけだ。



内部は、郵便や小包などが積み込まれ、目的駅に着くと手際よく荷物が下ろされ、また受取荷物を積み込むことになる。小さな駅だと停車時間は短いため大忙しで仕事をしなければならないし、中には切迫した手紙もあっただろうし、荷物だって重たい生鮮食品もあったかもしれない。お歳暮のみかん箱とか・・



すべてがトラックに変わってしまった。国鉄で運んでも、駅から郵便局までトラックが必要なので、二度手間になるということだろう。ただ、この件を調べてみると、今や建て替えられて、ビル家賃の基準価格にもなっている東京駅前の中央郵便局なのだが、東京駅との間に地下トンネルがあってトンネルの中を通って郵便物を台車で運んでいたそうだ。



小包は乱雑に積まれているが、ハガキや書簡はあて先駅別に小棚があって一瞬で取り出せるようになっている。

この小文を書きながら20年ほど前のことを思い出したのだが、現在存命かどうかはわからないのだが、洞爺丸事故(1954年に青函連絡船の沈没で1155名の方が犠牲になった)の当時、都内の大学生だった方に聞いた話だが、事故の何か月も後に、北海道の両親からの仕送りの現金書留が水につかり文字が消えかけた状態で届いたそうだ。その時に、嬉しいと思ったのか申し訳ないと思ったのかを聞いた記憶はあるのだが。



そして、この今は使われていないはずの車両の中に、郵便ポストがある。もちろん現役で稼働していた時にポストがあるわけはない。実は、このポストだが、あるサービスが行われている。

未来への手紙。

(少しだけ違うかもしれないが)最長3年までの特定の日に、郵便を配達してくれるそうだ。もちろん、過去には送れない。送る相手は、意外にも自分宛が多いようだ。「3年後の私に」ということ。もちろん、相手は家族でもいいし、愛する誰かでもいい。(アリバイ工作に使うのは禁止だ。)とは言うものの、人間にはそれぞれの寿命というものがある。人間関係にも変化がある。運命は年月を待ってくれるだろうか。



穴水駅までの間、「のと里山里海号」という観光列車が運行していて、日本有数の牡蠣の産地を眺めながら能登特産のビールを飲むことができる。

七人の侍(1954年 映画)

2020-04-13 00:00:43 | 映画・演劇・Video
黒沢明監督。三船敏郎と志村喬がW主演。戦国時代の最終盤(1586年)。豊臣秀吉が九州征伐を行った年だ。つい最近、「太閤と百姓」という歴史書を読んだので、まさにその時代の荒廃した農村が舞台である。秀吉が天下統一を達成する過程で、多くの戦いがあり、当然ながら負けた方は、死者多数となるが、かなりの将兵は逃げ出している。山中にひそんだり、池にもぐって頭に水草をかぶり死に物狂いで生き延びる。



そうなると、大将のいなくなった武士は、ほとぼりが冷めるまで放浪の旅をするしかない。運がいいと、再就職の道が開けるが、腕が立たないと使ってもらえない。就職試験の代わりに腕試しを命じられて、殿の目の前で斬殺されることもある。当然ながら世渡り上手にならないと生き残れない。最悪は野武士というあいまいな山賊になり、旅人を追いはぎしたり、農家の収穫期を見計らって略奪をはたらく。

百姓は、正規の年貢のほかに野武士にも財を取り上げられる。歴史書に書いてある通りだ。

そして、ある村では、流れ者の武士を雇って、用心棒にしようということになる。現代的にいうと、何らかの理由で警察官をクビになった男たちを集めて、三食付き宿泊無料でホテルに泊まれる代わりに、暴力団関係者や政治家秘書からの圧力に対し、暴力を持って排除しようということだ。

そして、集まったのが七人の武士。大部分が剣の達人で、戦略にも詳しい。もっとも野武士は馬も持っているし、種子島と呼ばれる火縄銃も使う。百姓の自衛団は竹槍が主力の武器だ。この映画のように鉄砲に竹槍で対抗しようとしたのは360年も後なのだから、情けない。

結果、野武士を全滅させるために、多くの百姓と七人の侍の中で四人が戦死した。三船敏郎は最後に野武士団の首領と相打ちで戦いに終止符を打つ。


本作は、国内外で高い評価を得て、日本映画史の最高傑作とも言われたのだが、1954年頃には、日本には多くの農民がいて、相変わらず苦しい生活を送っていた。しかし、それから50年以上の歳月が過ぎ、日本から農民や農業が消滅し、元農地だけが残るということになってしまえば、この映画の見どころを理解することも難しくなるのだろうなと、心配になる。

余談であるが、本映画の出演者は、農家の子供たちを演じたエキストラの子役以外はすでに他界されているようだ。七人の侍のうち、映画の中では生き残った三人が、実は先に亡くなっている。映画の中で、最初に討ち死にした侍が、最後まで頑張ることになった。

真脇遺跡(縄文時代)そのままが残っている

2020-04-12 00:00:24 | たび
能登半島の東側、富山湾の中にさらに入り江があり、その入り江に面した平地に真脇遺跡がある。現代人はごく小規模な沿岸漁業を営んでいるが、縄文時代の漁業は、もっとダイナミックだった。入り江に入ったイルカを封じ込め、竹槍などで捕獲し、食用にしていたようだ。大量の骨が出土しているからだ。まさかイルカが陸上に住んでいたわけではないだろう。

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そして、この地が素晴らしかったのは、地面が大量に水分を含んでいること。見学した当日も前日の大雨を吸い込んだようで、地表を歩くと水が浮かび上がってくる。このため、数千年前の遺物がそのままの形で大量に残されていた。

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すばらしいのは、展示されている主に縄文土器だが、オリジナルである。レプリカではないわけだ。多くは当時実用に使われていたもの。当時の人が実用に使っていたと思われる煤がついているような鍋もあるし、何らかの鑑賞用あるいは祭祀用に使われたと推測できるものもある。掘ればまだまだでるだろう。

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そして復元されていたのが、当時の住居と環状木柱列。特に環状木柱列はなんのためのものなのかわかっていない。実用なのだろうか、祭祀なのだろうか、あるいは単なる芸術。復元されたものは、木材を継ぎ合わせたものだが、残された木柱は栗の木の一本物。直径1メートルに近いような巨木だ。現在ではほぼ入手困難だ。イルカ漁の時に使う丸木舟の素材ではないかとも考えられる。古代人の生活の場が実感できる。パワースポット3。

人気復活のためには?

2020-04-11 00:00:24 | しょうぎ
将棋教室が次々と休眠しているという話を聞く。早い話が、コロナウイルスにうつりやすいからというのがある。対面だし、駒は取ったり取られたり、相手の駒になったり自分の駒になったり。

そしてもう一つの理由だが、数年前の将棋ブームは藤井聡太七段の活躍に負うところが大きかったのだが、その後なかなかタイトルを取ってくれない。

現状についてだが、八大タイトルのうち、名人戦、棋王戦、叡王戦以外は、年度内にまだタイトル獲得の可能性がある。勝手ながら独自の推測で各タイトル戦の時期と奪取確率を試算したのだが、棋聖戦(7月/30%)、王位戦(8月/40%)、王座戦(10月/10%)、竜王戦(12月/10%)、王将戦(来3月/30%)といったところだろうか。合わせて考えると、タイトル挑戦・奪取の回数は1回から2回。

ここで、なぜ彼がタイトルにこだわっていないように見えるのかを考えてみると、彼自身が自分の実力を「発展途上」とみている可能性がある。だから相手の不得意作戦を探すといった、やや正統から外れた作戦をとらないでいるようなことではないだろうか。

「無敵の大名人を目指す」といったことかもしれないが、実はそれでは将棋界も、また彼自身も人気がでないのではないだろうか。そういう独り勝ちのような状態を好む人は少ないわけだ。

大衆が待っているのは、「藤井聡太大名人の出現」ではなく「藤井聡太、大名人へのストーリー」のはずだ。だいたいドラマや映画でもそうだ。まずチャレンジャーになるもコロナウイルスでタイトルマッチ中止。次にせっかくとった一つだけのタイトルを失う。失意の彼ににじり寄る先輩女流棋士。そしてリベンジのタイトル戦。謎の覆面新人棋士の登場と対決。というのがいい。

もっとも彼のタイトル獲得も重要だが、棋士の感染者が出た時の将棋連盟の対応も重要だ。先週の今ごろは「非常事態宣言が出ても将棋連盟に行って対局する」方針が決まったようだが、宣言が出ると、警察官が街中を巡回し、「おいこら!」と警棒を振り回して、外出の要件が不要不急かどうかを確認するらしい。千駄ヶ谷の駅前には交番があるので、そこが対局前の第一の関門になる。

現在のところ、東西の交流ナシということになり、愛知県在住の藤井七段は、県内封鎖で師匠と戦うしかなくなった(竜王戦)。名人戦は第一局から第三局までが中止となり、長野県での第四局が第一局となった。四番勝負となるのだろうか。

さて、3月28日出題作の解答。



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解説は後にして、まず棋譜やGIF版で確認してほしい。合駒が3回登場。

動く将棋盤は、こちら。(Flash版)

GIF版。
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序盤は、盤面の整理。初手で▲3九竜△同金が入ればいいが駒取りからということで自重。12手目で△3九玉は▲3八飛△4九玉▲9三角以下。14手目、角桂以外の合駒Xは▲4八角成△2八玉▲3八馬△1七玉▲1八X以下。15手目以降▲4八角成△2八玉▲4九馬△1九玉▲2八角△1八玉▲4六角に22手目△3八香となる。代わって△2八歩は▲1九歩以下早詰となる。続いて24手目△2八歩の焦点の歩を取っては詰まない。あくまでも飛車は3九に引き、香、歩で詰ませる。


酒井克彦氏作

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なお、酒井作は同様に進み、▲4六角ではなく▲7三角成と展開し16手目が△3八歩となり。以下、馬を▲2八馬と捨て△同玉▲3八馬以下23手詰めとなる。

どちらの作も銀を片付けるところから始まるが、▲2八金打ちからはじめるのも主題がはっきりしていいかもしれない。


今週の問題。

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手数の割には簡単なはず。野球で言えば、ホームランバッターが先頭打者で三振し、そのまま病院に行ってしまうようなものだ。

わかったと思われた方は、コメント欄に最終手と総手数とご意見をいただければ正誤判定します。

丸柚餅子は、けっこう固い

2020-04-10 00:00:55 | あじ
ウイルスから逃れるように石川県の能登半島探索に行ったのだが、本来、重要な目的地だった輪島の朝市が不発に終わった。なにしろ観光客が激減というのがベーシックな大問題。通常の半分以下の出店らしいとは聞いていたが、もっと大問題が発生。当日の朝、能登半島は大風が吹き荒れた。テントを張ろうとしても、風でテントが張れなかったそうだ。

ということで、朝市で賑わうはずの通りにはわずか3つのテントがあるだけだった。もちろん海は時化ていて船を出すわけにもいかず、魚介もとれないわけだ。

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ということで、飲食店で「ふぐ丼」を食べた後、有名な和菓子店、総本家中浦屋に行き、『丸柚餅子』を購入する。

『丸柚餅子』を除けば普通の和菓子店であるのだが、丸柚餅子は高額な食品であるところから、試食も特に頼まないといけない。値段が高いということだけでなく、一つずつ作らないといけないので、手間がかかるし、製造工程は半年かかるそうだ。

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そして、試食の末、購入に至るのだが、原料が柚子で中をくり抜いて餅を詰め込むらしい。サイズは、柚子の大きさによって、大、中、小とあり、大を購入。

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そして、いただくことにするが、切るのに苦労するほど固い。たとえは悪いが石鹸を包丁で切るようなもの。色の風合いは柚子というより柿かもしれない。

そして、ゴーストタウン化した町を後にする。

雨の宮古墳群(中能登)

2020-04-09 00:00:21 | たび
雨の宮古墳は能登半島の比較的南の方にある。滋賀県には雨宮古墳というのがあって、間違いやすい。古墳群といっても堺にある天皇(大王)の古墳群という日本版王家の谷のように巨大ではない。コンパクトに36基の大小の古墳が揃っている。非常に珍しいのは、前方後円墳と前方後方墳の二つの墓がならんでいること。

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発掘は手前の方から行われたため、この二基は比較的新しい墓で、奥に行くと小さな古墳が並んでいる。二つの形の墓が存在しているということは、その頃の日本に何らかの文化的変革があったと思われるが、よくわからない。日本にとって3世紀から5世紀までは国家形成に重要な時期だったはずだがその詳細はわかっていない。

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わかると、困る人たちがいるわけで、天皇陵の可能性がある古墳が研究されないためだが、雨の宮古墳の場合、36基の古墳があるわけで、天皇陵ではなくても地方豪族だったことは間違いないだろう。さらにかなりの長い期間、土地を治めていたことが感じられる。土地が民間地であるということは調査には都合がいいが、とはいえ許可とおカネが必要ということらしい。

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縄文時代から弥生時代前期の研究は進んでいっても、その後の弥生時代後期から古墳時代の研究が進まないと、歴史に穴の開いた状態は、いつまでも「神話時代」のままということになる。

毎年、夏から秋にかけて「雨の宮古墳まつり」というのがあって盛り上がっているそうだが、昨年は台風で中止になったようだ。

古代のことはよくわからないが、現代人は、墓場で盛り上がっているわけだ。もしかしたら、埋葬された人物は、わたしたちの祖先なのかもしれないのだが。

たとえば1700年前から1世代25歳とすると現在は68世代目になる。仮に人口が同じで(2000万人と仮定)、外部流出入がないとすると、二人の子供に遺伝子の1/2が引き継がれるとして、625年後の西暦925年、25世代目は3355万分の1となり、全人口に遺伝子が行き届くことになる。(逆をいえば、現代人は誰でも西暦1400年頃より前の歴史上の人物の直属の末裔である可能性が高いわけだ。足利義満より前。知らない方がいい場合もあるだろう。)

太閤と百姓(松好貞夫著)

2020-04-08 00:00:40 | 歴史
1957年の岩波新書。かなり古い。コロナ禍により外出不自由で読む本の在庫はあまりなく、大きな書店も近くにないし、かといって予約だけ受け付けている図書館から借りる本はウイルスフリーかどうかも不明だし、宅配業者も忙しいだろうし、本の注文なんて不急不要もいいとこだ。ということで、父親が残した本を段ボールの上の方から探して読み始める。つい最近は「豊臣秀吉」という本を読んだので、成り行きだ。

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それで、内容だが、実は太閤秀吉の行った政策により、今まで戦国時代の間に徐々に崩壊していった農村経済が、武士階級による農民からの搾取構造という形で確立した、という内容で、農村がいかに武士によって荒らされて、好き勝手されたあげく、二公一民(所得税率67%)という高税に苦しむことになったか、という内容が、ずっと書き続けられるわけだ。

感じとしては「著者はマルクス・レーニン主義者なのだろう。ロシアの農奴制のような書き方だな」と思ったわけだ。実際1957年というと昭和32年。戦国時代の農村よりも戦前の小作制度のイメージがあったのではないだろうか。戦前の小作制度こそロシアの農奴制に近い仕組みで、中世から近世にかけての方が農民の自由はあったように思う(地方にもよると思う)が。

全編を通じて、「農民側が被害者であって、武士も商人もけしからない」という書きかたなのだが、実際に当時の人口の80%が農民世帯だったのだから、ある程度の社会を維持するためには、統治機構としての武士とか大名が必要だったはずで、致し方なかったような気もする。秀吉も家康もやっとの思いで中央集権と地方分権の中間的統一国家を作ったわけで、百姓に冷たいと一言で評価していいのかは考慮が必要だと思う。農村に必要なのは、作量増加のための技術開発と米作以外(たとえば東北地方では芋作などもしべきだった)の転作だったように思っている。

搾取という見方からいうと、まさに現代の現政権下において国民の80%が会社員で、結構高率の租税負担を担っていて、そのリターンが将軍のゴル友や夫人のノミ友に再配分されるサマと、相似とも思える。

著者は後で経歴を見ると、どうも大名の経済に詳しい方のようで、「歴史上の金持ち側の経済」と「百姓やアイヌ民族といった差別された人たちの経済」という二刀流で著書をなしていたようである。

ところで、著者の松好先生は、間違いなく「秀吉が嫌い」なのだろう。『彼(秀吉)自身がいわば中世史の集約的な表現なのだから』と書いている。実際は江戸時代の政策の多くは秀吉の作った社会構造の上に立っている。

好きな人と嫌いな人はどちらが多いのだろう。

バルカン超特急(1938年 映画)

2020-04-07 00:00:23 | 映画・演劇・Video
ヒッチコックの英国時代の集大成というべき映画。翌年、戦火の近づく欧州から離れ、ハリウッドに活躍の場を移す。

この1938年というのは、悪名高い「ミュンヘン会議」のあった年だ。ヒトラーの率いるドイツがチェコスロバキアを吸収しようとして英仏と対立。しかし英国は、ナチズムよりソ連の共産主義を恐れ、ドイツを使って共産主義からの堤防にしようと、チェコをドイツが支配することを容認してしまう。そして、ヒトラーは世界制覇に向けて邁進をはじめてしまうわけだ。英国首相のチェンバレンは会議でドイツやソ連との戦争を回避したとしてロンドン帰朝時には市民の熱烈な支持を受けるが、後に「ナチ躍進を招いた無能首相」と言われる。

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この映画も、英国のスパイ(老女)がドイツ側の某国から列車で逃走する途中に国際列車内で消えるという事件をテーマにしている。ある意味、007の『ロシアから愛をこめて』にも影響しているのだろう。ストーリーは、第一話は列車に乗る前夜の田舎ホテルにはじまる。様々な国籍の様々な無関係な男女が泊まったホテルで、殺人事件が起きる。ホテルの庭で演奏中のイタリア人(のちに英国側スパイであることがわかる)が殺されるのだが、謎の音楽で客室の老女(学校の先生でありスパイ)に情報を伝達したあとだった。

そして老女殺害計画は失敗し、第二話の機関車超特急に乗ってしまう。そして英国人の若い女性(アイリス)と親しくなるが居眠りしているうちに老女は忽然と消えてしまった。さらにまったくの別人が替玉で登場。そこに登場したのが、長身で女性に親切な音楽家のギルヴァ-ト。真相解明に動き出すが、乗客たちは「めんどうなのはゴメン」とばかり口を閉じてしまう。さらに多くの乗員は買収されている。

そして第三幕は、真相を知ったアイリスとギルヴァートが列車内で敵と戦い、さらに老女や英国人乗客と列車内に立て籠もって銃撃戦をやったり、列車を自分たちで動かしたりして、ついに国境を突破するわけだ。

要するに、ドイツ人(とは断定していないが)は悪で、英国人は善という構造なのだ。しかし、敵国内に潜伏したスパイは、それ自体が犯罪者とみられてもしかたないのに、捕まえようとしたら逃げられて、それの方に正義があるというようなストーリーは、いつものように英米主義だ。

ちなみに『ロシアから愛』だけではなく、ジョディ・フォスター主演の『フライトプラン』という映画は、航空機の中から人(こども)が消えるという仕掛けになっていて、本作を下敷きとしていると言われるが、買収された乗員が彼女をハイジャック犯に仕立て身代金を要求させ、途中で巻き上げて飛行機も炎上させて証拠隠滅してしまおうというケチな話になっている。ただし、おもしろいし、怖くないし、正義が勝つ。

青の洞窟(聖域の岬)

2020-04-06 00:00:48 | たび
青の洞窟といえばイタリアにある本物が有名だが、日本にもある。能登半島の先端に近い聖域の岬というエリアにある。ただ、イタリアのものと較べるようなものではない。岡山県の日生(ひなせ)をオリーブ畑つながりで地中海に例えるようなものだ。

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とはいえ、古くからのパワースポットとして知られる聖域の岬の断崖を曲がりくねった歩道にしたがって下っていく。能登半島には、このように断崖絶壁が多く、刑事ドラマの撮影スポットが多いそうだ。東尋坊だけでは、視聴者に「またか・・」と言われるからだろう。船越英一郎氏が断崖情報に詳しいかも。何度犯人を追い詰めて、「白状しなければ海に落す」とピストルで脅したことだろうか。

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そして、ついに洞窟に辿り着く。驚くことに青々としている。LEDによる照明だ。確か青い色は米国人科学者が発明したはずだ。空が晴れていると自然に青く見えるそうだが、当日のように悪天候の日は青くないので、補助光を使うらしい。

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さらに目が慣れてくると、壁に心霊写真のような顔が浮かんでくる。昔、インドから青年僧が修業に来て、念仏と黙想に励む一方、アーリア系の仏様の顔を彫ったそうだ。これがそうなのだろう。

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そして、海辺から小石を拾ってお守りにするとパワーが付くと言われるそうなので、平らで丸っこい石を探す。白い石や黒い石もあるのだが、あえて白っぽい灰色(ジンクホワイト)の石を見つける。そういう色の人間だからだ。ゴルフのパターのマーカーにしようと思いついたが止めた。崖を登ると売店があって、拾った石を詰めるお守り袋が売られている。一方、『洞窟で石を拾わないように』とも注意書きがあった。矛盾の国、日本。パワースポット2。

珠洲製塩、揚げ浜式

2020-04-05 00:00:52 | たび
今まで、瀬戸内海の製塩会社には何回か見学に行ったが、能登半島で製塩が行われていたことは知らなかった。もっとも塩は人間にとって必須の食物で、先日読んだ大岡昇平の『野火』という戦争サバイバル小説の中でもレイテ島の山奥に逃げ込んだ日本兵が塩のために現地人を銃殺したり、夜間に海岸に下りてきて海の水を飲んで、また山中に戻るといった場面があった。日本各地で製塩業はあったはずだ。確か、江戸の塩は高級で、全国各地の塩(未完成品)を浦安の海岸で精製し直して食用にしていた。

能登半島は対馬海流とリマン海流が交錯する場所でさまざまな海藻類がミネラルやにがりの味を豊富にしているそうだ。

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実際、揚げ浜式というのは塩水を何回も海岸の砂の上にまき散らし、濃度を上げていく方法で、最後は煮詰めていくということらしい。煮詰める釜は、どうみても昔ながらの五右エ門風呂と同じだ。みかけはフロに入浴剤を加えたような色である。

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塩水の砂浜へのまき散らしの実演もやってくれる。(Agehama-style Salt Farm)



口のうまい珠洲製塩(すずせいえん)の工場長の話を聞いた後、塩のお土産を買う(買わされる)ことになる。実際、海塩の中では相当旨いと思う。帰宅後、色々な料理に塩をかけて食べている。

2015年のNHKの連続テレビ小説「まれ」(ヒロイン:土屋太鳳、役:津村希)は、この工場で働くシーンを撮影したそうだ。高校在学中に塩田の手伝いをして、地元(輪島)の市役所に勤めることになったが、能登を捨て横浜元町のケーキ店に修業に行く。塩味のケーキを創作して、怒られる。

棋士感染で、禁断のテレワーク?

2020-04-04 00:00:00 | しょうぎ
新型コロナウイルスの感染者数が特に都市部で拡大している。棋士は対局の都合で多くが東京、阪神地区に在住しているのだろう(最も大切な棋士は別のエリアだが)。仮に(というか、今すぐでも)棋士に感染者が出るとどうするのだろう。将棋は長い時間、対面で対局するし、盤上で取った駒は、消毒もせずに駒台に乗せる。

しかも全棋士には一部の例外を除き、全棋戦への参加が認められ、さらに義務化されている。強ければ対局数が増えていき、感染リスクはそれだけ上昇する。全棋士が感染することになることもありうる。また、陽性になり、対局場に行けないとなると不戦敗になるが、多くはトーナメントなので同一棋戦でのチャンスは1年後となる。

将棋会館に行くこと自体、そもそも不要不急ということにもなりかねない。

普通の会社なら、テレワークということになる。が、将棋界には黒歴史があり、自宅からのインターネット対局なんてとんでもない!という人たちが出るだろう。(といっても、前回の事件では、誰一人不正工作は行っていなかったということになった。)

将棋会館での対局をネット対局に切り替えるためにはどうすればいいのか。隣に別のパソコンを置いて検討したり、親友の強豪棋士に電話で相談するとかしないようにする方法。

基本的には、ネット会議のように対局中の相手が見えるようにしたり、ネット上で棋譜も同時配信してしまえばいいと思う。衆人環視状態なら怪しいことはできないし、今、不正で勝ち星を積み重ねても、いずれ発覚するはず。

もっともテレワーク対局でいいとなると、大きなスペースの将棋連盟は不要になるわけだ。



今週の出題。

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先週作が長かったので、今週は一桁。


わかったと思われた方は、コメント欄に最終手と総手数とご意見をいただければ正誤判定します。

どこか空しい枝垂桜(しだれざくら)

2020-04-03 00:00:42 | 市民A
近隣のUR系のマンション群の中の広場に、見事なしだれ桜が咲いている。そして、その周辺にはさまざまな花も植えられている。毎年、この時期にはこの広場でお祭りがあるのだが、今年は中止。今も、毎日花の世話をしている人もいて、なんともむなしい。

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同じように、卒業式や結婚式やさまざまなパーティ用の生花を扱うお店は、大打撃であるし、花を作っている農家も同様だ。某首相夫人も、生花店で花を買い込んで奥渋の自宅でパーティをすれば、ばれなかったのにと思ってしまう。

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ところで、全世帯に2枚ずつ布製マスクの配布、と嬉々として発表したのをテレビで見ていたのだが、全世帯ではなく、一番必要なのは、あなたの夫人ではないかと思ってしまった。一世帯だけでいいのではないだろうか。

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パチスロ店もやり球に上がっているが、あれも無観客競馬と同じように、自宅のPCでパチンコが打てるようにすれば、問題は一挙に解決するはず。そもそも交換所という偽装ギャンブル方式でやっているだけの話だ。勝った分を、所定の口座に税金天引きして振り込めばいいだけだ。

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それと「かつてない」という経済政策だが、方向性も不明だし、斬新性も期待できない。

もともとが、アベノミクスは市場にマネーをまいて、実質的な貨幣価値を下げることにより疑似インフレ(2%)を起こし、タイムラグを使って企業収益や賃金上昇につなげようとした作戦だったはす。

実際には貨幣があまるだけで銀行は優良企業に金を実質無利子で借りてもらって、自行のみせかけの健全性を保ったり、様々な海外投資のうち、うまくいった部分だけを清算して円転して利益出しし、失敗した分は清算を先延ばしして実損が表面に出ないようにしているらしい。

企業業績がいいというのも、実際は海外子会社との連結決算の話で、海外で作ったものを海外で売って稼いでいるのに、なぜ日本の労働者の給料を上げなければならないかという疑問を抱えている。

また、所得減問題だが、正規、非正規の格差の話ばかりだが、視点を変えると、日本の産業が内需主体に変わっていて第三次産業が全世帯の60%を超えているのだ。第三次産業は物や人が動かないと、売り上げがないわけだ。そもそも自営業者を会社として助けるのは難しいはずだ。

そうなると個人ベースの消費税の減税ということになるが財務省は絶対反対という立場だろう。本来、財政学というのは、「政府の金をどのように使えばいいのだろうか」という使う側の理論と、「どうやって税金を集めればいいのだろうか」という徴税の理論があるのだが、財務省は徴税派ばかりなのだ。そして、徴税理論上は、消費税は最高の税なのだ。取りはぐれが少ないこと(集金が楽)と、商品代と一緒に払うので取られた消費者の痛みが少ないということだ。

日本ではれいわ新選組の山本党首や米国では早々と大統領候補から撤退したオカシオ=コルテス下院議員は消費税ゼロにした方が成長率は高まるし、所得税や法人税が増えるはずと主張している。ところが、実際にそういう例は世界にほとんどないので、本当は、どうなのか、わかっていないわけだ。いいチャンスなので2年間税率を10%→5%に下げて実験してみたらどうだろう。実際、中小企業は消費者から集めた10%税金分を企業のつなぎ資金として使ってしまい、税務署に払うことができないのではないかと思う。

能登金剛から白米千枚田へ

2020-04-02 00:00:30 | たび
能登半島を北上する。当初予定では、能登金剛で観光船に乗って、海上から奇岩の景観を楽しむ予定だったが、当日は大風により波高5m。とても航行できるような状態ではない。

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しかも観光船は岩の間を走る設計なので、おそらく船底まで浅く荒天堪航性が悪いはず。沈没した韓国の改造フェリーと同じだ。

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ということで陸上から巌門洞窟を抜け、岩石ゴロゴロの海岸に向かうが、強風と雨、そして波しぶき。ムチャクチャ危険だ。日本海は、穏やかな砂浜もあるし、こういう浸食の進んだ岸壁もある。天候の前にひれ伏すしかない。

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能登金剛センターというお土産物センターの方々は全員マスクで、危険な岩場に入らないように注意するが、声が通らない。風の強い日は、要領よく風上に立ち、風下の方に向かって立つのが感染されるのを防止するコツだ。


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そして次の目的地は『白米千枚田』。「はくまい」ではなく「しろよね」と読む。いわゆる棚田である。1007枚あるそうで、そのうち2枚を、小泉純一郎、進次郎親子が所有しているそうだ。たぶん自分では稲作りをせず、誰か小作人を雇っているのだろう。農地の転貸しだろうか。

沖合に陸地が見えるのだが、半島国家かと思ったが、見えるはずはない。七ツ島という無人島群と舳倉島(へぐらじま)があり、野鳥の島になっている。取られないようにしないといけない。

気多神社(能登)

2020-04-01 00:00:54 | たび
3月はじめに能登半島の先の方まで行ってみた。いわゆる奥能登。まだ日本の大部分は新型コロナウイルス禍には巻き込まれていなかった(もっとも東京都の陽性者数の異常な少なさには、人為的なものを感じている人が多く『〇氏の裏工作』という人もいた。たぶんそうだったのだろう)。石川県ではフランス出張中に感染した人が数人、金沢にいたくらいだった。

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最初に半島の西側を南から北上すると、気多神社はある。「けたじんじゃ」と読む。歴史として書物に登場したのは万葉集の中で、大伴家持(越中守)が参詣し、一首を詠んでいる。748年の頃だ。しかし、北陸各地に気多神社という名の神社が分布していることより、もっとずっと古い時代(古代)にこの神社が崇められていたことが、伝わってくる。

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多くの建物が400年ほど以前に建立され、重要文化財となっている。

「心結び」の神様として知られ、縁結び祈願に訪れる人たちが多いのかと思うが、絵馬には「運気向上」とか「家内安全」とか「第一志望合格」とか近視眼的な目標を祈願する人が多いようだ。背後の森は、「入らず(いらず)の森」と言われ、限られた神職の方のみが入れることになっている。前田利家と正室のまつが愛した神社としても有名だ。

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経済的都合により、旅行中の期間のみについてお祓いをしてもらい、帰宅後の安全は、別紙において行うように指示が出た。A4の厚紙に貼って部屋の一角に飾る。パワースポット1。