連邦破産法による「破産の形態」

2005-11-11 23:09:46 | MBAの意見
アメリカの大手航空会社デルタとノースウェストが次々に破綻して、破産法11条適用ということになったのが9月の始めのこと。どうも破産法強化になる直前のかけこみ破産のようだ。マイケル・ジャクソンも申請したと言う噂もある。というようなことは、何となく読んでいたのだが、尾崎選手の個人民事再生法適用の件もあり、アメリカの事情を覘いてみた。というのも、かつて世界最大企業であったGM(ゼネラル・モータース)の破産が噂される最近、ちょっと予習しておいた方がいいかな?ということもある。

まず、連邦法だが、全部で50編にまとまっている(50という数字が好きな国だ)。そのうち第11編が「破産」について。いわゆる連邦破産法と言われる。そして条文は13条までだが、2条、4条、6条、8条、10条は空文になっている。つまり実質は8条分。うち、1条、3条、5条は用語や権利者の特定化のような部分なので、実質的な法令は7条、9条、11条、12条、13条である。さらに第9条は自治体の破綻、第12条は農業・漁業従事者を対象にしているので、法人・個人の破綻について規定しているのは、第7条(清算)、第11条(再建)、第13条(所得のある個人の再建)ということになる。日本流にいうと、第7条は破産清算(個人でも法人でも)、第11条は会社更生法ということになる。そして日本でいう民事再生法は第11条の中に含まれている。尾崎の場合は、とりあえず第13条の適用で行こうということだが、「所得のある」というのが条件で、再建計画が失敗すれば破産=清算ということになり、クレジットカードでラウンド前のホテルの朝食を食べることもできなくなる。

そして10月に発効した新破産法になると、この11条、13条の適用が厳しくなるわけだ。企業の場合、申請後、短期間(18ヶ月)に再建計画を提出しなければならないし、実行できないとあっけなく清算になる。個人の場合も、保持できる財産が制限される。

それではなぜ、この破産整理という非人道的な制度が、さらに厳しくなるのかということなのだが、この第11条や日本の民事再生法の場合、単に借金の棒引きのようなことになり申請した企業の金利負担が軽減されることにより、順調な企業が競争劣位になり、逆に業界総崩れになったりする。そういう競争阻害企業が生まれないようにダメなものはさっそと見切りをつけようということである。現に、デルタ・ノースウェストが破産法申請したことにより、米国大手航空会社7社中4社が破産中という異常事態になってしまった。このため、この4社は競合他社(あるいは海外の航空会社)に対して、かなり有利な競争条件になり、他の会社の収益を圧迫し、結局は全員が倒れてしまうのではないかということだ。日本でいえば、かなり危険領域にいるJALの債務を免除すると、安売り航空券を乱発し、ANAまでが傾いてしまうというようなイメージだ。

ところでGM(ゼネラルモーターズ)をスピンアウトした部品会社デルファイが破産法11条を申請したため、GMに飛び火するのではないかと言われている。退職者の医療費や年金の肩代わりをGMが最大110億ドル(1兆4000億円)負担するという情報や、格付け会社による格下げ、SECによる会計調査開始と立て続けに不幸のチェーンメールが続いている。あとは、政治的判断、といっても判断基準もはっきりしない。これこそ、11条適用を申請して、労働組合と決別し、リストラ路線に突っ走りそうな予感がする。

日本でもスズキはGMと提携しているのだが、こちらは超優良会社。さらに、2年前に私が調査した情報では、GMグループの中で小型車のハイブリッド化の研究という位置付けになったいたはず。今後、GMグループの中にとどまるのか、独立系となるのか、あるいはトヨタグループにトレードとなるのか、注目だ。もともと燃費の優れた軽自動車をさらにハイブリッド化するようなことも狙っているのではないだろうか。

追記:元々、燃費のいい軽自動車をさらに燃費対策であるハイブリッド化しても、ユーザーには受けないだろうという考え方も一方にあるだろうが、人間というのは、「非論理的に、こだわりを持つ動物」のように思っている。例えば、私の知人にゴルフで280yほどティーショットを打つ男がいる。ただし、トータルは100位だ。はたでみれば、彼の欠点は第2打以降であるのは明白なのだが、彼とゴルフの話をすると、距離の話ばかりになる。より遠くに飛ぶクラブ、ボール、フォーム・・・。まあ、ラウンド中に「君の問題は、・・・」と言うと反則行為(助言)となるので黙っているだけなのだが。


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