ふちしすこ(2022年 映画)

2024-08-16 00:00:19 | 映画・演劇・Video
ぴあフィルムフェスティバル・アワード2022の『ふちしすこ』。監督は亀井史興。

監督が主演を兼ねる。チャップリン方式だ。この「ふちしすこ」という言葉がよくわからない。

画面に登場する人物は3人。本人、兄、友人(男)。男三人で99%の時間は、主演が借りている1DKの東京のアパート。主演には地方に父と母と姉が住んでいる。実家にはしばらく帰っていない。

定職はなく、何か創造的な生活を送ろうとするが、能力が足りない感じだが、まだ諦めていないようだ。といって努力もしていない。

思い立って、地方の父母に、実家に置いていった「ふちしすこ」があるか確認の電話をするが、母親はすぐには見つけられない。(本当は見つかっていたのかもしれない)

それで、この映画で何かが起こったり、どこかに進み始めたりはしない。友人は結婚するという(つまり、もう遊びには来ない)。実家からは『ふちしすこ』は見つかって、兄が持っていると伝える。ここで、『ふちしすこ』が、亀井家の家族新聞であったことがあきらかになる。こどもの頃からの記録で家族の記録を「新聞」という客観的な文字群で後に残していたわけだ。

それで、主演の男の推定年齢は30歳位。かつて言われた『モラトリウム世代』と同じように見える。自分では決められずに、結局は波に流されていくわけだ。ただ、一般にモラトリウム世代は1956年から1964年の間に生まれた世代とされ、ちょうど主演の親の世代にあたるわけだ。モラトリウム世代の子がモラトリウム的になるというのは、自然な流れと言えるのだろう。

書き落としたが、「ふちしすこ」は5人家族の名前から一文字を取って家族新聞の名前にしたわけだ。といっても劇中で主演は「ふ」だが、父親は「おっとう」、母親は「おっかあ」、姉は「おねい」と言っているので、なんでもよかったはず。「ふ」というのは監督兼主演の本名の「史興(ふみおき)」だろうから、年齢の逆順と考えれば、「ち」は姉の千鶴子。「し」は長男の「真之介」。「す」は母の「すず」。「こ」は父の「剛太郎」とかだろうか。