虎は死して皮を残すのだが・・

2005-01-28 21:49:18 | MBAの意見
商品先物取引業者、東京ゼネラルが、数々の不正行為の末、「先物商品取引受託許可」を取り消される行政処分を受けたのが、2004年1月13日。当然の帰結ながら同年4月に銀行取引の停止となり、4ヵ月後の8月6日に破産宣告を受けた。負債総額は約500億円程度らしい。事件の深淵にはなにか危険な臭いがするのだが、危険すぎて井戸を掘る気にはならない。数日前にある年配の女性被害者から聞いた話と、ネット上の情報、データバンクからの資料などで考えてみる。

そして、最近この事件で2つの動きがあった。

一つ目は、社長の飯田氏の裁判で、懲役1年10ヶ月の実刑判決。有印公文書偽造等の罪らしいが、その他にも罪状は複数あるらしい。難しい法律論は置いて、この社が何をやっていたかというと約5000人からの発注を、そのまま実行したのではなく、いわゆる「ノミ行為」を行い、勝手に運用していたわけだ。さらに一般のノミ行為なら商品相場内での取引なのだろうが、海外のホテルに投資したりしていたようだから、相当の大暴走だ。

記事を見ていると、最大債券者は情報労連という労働組合だ。なぜ、こんなことになったかというと、平成5年に組合が東邦生命から、預けていた積立金を担保に300億円を引き出し、東京ゼネラルに運用を任せたそうである。当初は5年後の平成10年に90億円の運用益を乗せ、390億円が情報労連に還元される予定だったらしい(年利6%)。しかし、実際に平成10年には破綻していて、金利分だけ85億円が戻ってきただけだった。そのため東邦生命に戻す分に穴があき、200億円以上をNTT労組が保証する形の追加借金で穴埋めしている。もし、この時に、東京ゼネラルの状況が世間に明らかになっていれば、後述の被害者はでなかったはずだ。しかし、関係者すべてが自らの無能を表面化することを恐れ、表に出ることなくズルズルと無法は続いた。

二つ目のエポックは(おそらく1月26日?)破産した東京ゼネラルの債権者(というか被害者)説明会が行われた。私が会った恰幅たる老女は、数十万円の被害と言っていたが、たぶんその10倍くらいだろう(人は本当のことは言わない)。その会合に出席したそうだ。

状況が悲惨なのは、山一證券の整理などと違い、まず分配すべき資産が無いということだろう。彼女の少額被害は無論のこと、3000万円や4000万円の人はもとより、4億円の債権者も切り捨てだそうである。要するに犯罪被害者のようなものだ。相場下落で損をするなら、諦めもつくだろうが、もともと商品以外も含めたノミであり、不都合は書類の偽造で帳尻を合わせる。
4000万円被害の方は、若干の知的障害をかかえていて、親が彼に残した遺産を持っていかれたそうだ(というのは被害者の妹の話だそうだ)。4億円の被害者はもう立ち直れない感じだそうだ。

もっとも、こういうのもサクラがいて、「4億円の人があきらめるのだから、私もあきらめるしかない」と思わせているのかもしれないのと疑う気持ちは必要だ。

私は、商品先物など興味ないのでやらない。というか「先物」は基本的にゼロサムゲームに過ぎず、誰かの損失の上にしか利益は生じないので、株も含め、やらない。現物だけだ。10年近く前、上場商品になっているある商品の大量売買の仕事をしていたことがあるのだが、一度、ある大手の商品取引の会社からコンタクトがあった。自分で口座を作って、商品の現物売買で相場を動かして稼いだらどうかという提案だ。彼らは、それに乗って儲ける。仮に発覚すれば、「特別背任」で捕まるのは私だ。彼らは裏でちょうちんを持っているだけ。もちろん固辞して終わり。そんなものだ。

ところが、くだんの老女だが、債権者説明会の後、別の投資話の説明会に行っている。電話中継機ビジネスだそうだ。まず、新型の(IP???)電話中継機を1200万円で購入するそうだ。そうすると電話回線が利用されるごとに利用料が発生し、平均的には月間80万円の収入があるそうだ。ただし、管理料金として胴元に月間30万円払うそうだ。こちらの方が東京ゼネラルより儲かる。1200万円の投資に対して、月間50万円、つまり年間600万円の利益だ。利回り年利50%。ただし、あなたの中継機を通る通話が一本もなけれが月間30万円の損。年間360万円のマイナス。もちろん1200万円がいずれ0円になる複雑なルールもあるのだろう。こういう話にうかうかと突入する人を見ると、「人間無くて七癖」ということばを思い出す。運悪く「一癖」が、こういう方面に突出している人が意外に多いのだろうと思う。

そして、東京ゼネラルは本店登記は福岡だが、本社は東京都港区虎ノ門4丁目から3丁目へと移転したことがわかった。そしてその4丁目のビルと最後に存在していた虎ノ門3丁目の高層ビル、城山JTトラストビルにカメラを持っていったのだが、そこにはもはやいかなる痕跡も残っていなかった。

虎は死して皮を残すと言うが、東京ゼネラルが残したものは、企業破綻が始まる約2ヶ月前、2003年10月17日付けの、2004年4月入社社員を勧誘するメッセージを含むホームページだけである。いかにも虚実混沌としたこの事件の忘れ物としては、ふさわしいではないか・・・


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