ひねくれ者の落とし方?

2007-02-26 00:00:55 | マーケティング
6c9a2aef.jpg”AERA”は朝日新聞社が発行するいくつかの雑誌の一つである。「週刊朝日とどう違うのか?」と言われてもちょっと答えに窮するが、いずれにしても日本のクウォンティティ・マガジンである。それにしては、品位のないタイトルの記事が2月26日号に掲載されていた。

「ヒネクレ団塊の落とし方(連中にモノを売るには?)」いわゆる「2007年問題」として注目されている団塊世代700~800万人の退職金を狙ったビジネスがなかなか当たらないということを書いた記事である。記者はまちがいなく団塊世代ではないだろうが、随分とバカにした書き方である。60歳の退職者が買いそうなものを色々と並べてみても、なかなか財布の紐を緩めて買ってもらえない、という現実についての解説なのだが、書かれている内容が当たっているだけに、なおさら失礼だ。

要は、彼らはひねくれているから、「団塊と言われるのを嫌う。→同世代の中で、自分だけは異なると思っている。」。「CMに乗らない。→今まで、だまされ続けているからCMを信じない。」。ということだ。

例えば、ゴルフクラブでも、軽く老人でも遠くまで飛ばせるクラブを作っても買ってくれず、「あたなだけの特別なクラブ」の方を買ったりする。レクサスを買わずにスカイラインを買う(スカイラインは北米では、普通の量販車なのにだ)。要するに多少の例外はあるにしても、特別に団塊世代のニーズに合わせた商品を開発しても、何も買ってくれないということだそうだ。

面白いグラフが紹介されていた。退職予定者が退職前に希望した商品(サービス)と実際に退職した後に購入した商品のズレについてだ。

6c9a2aef.jpg退職前の希望順位は、

 1.夫婦で国内旅行
 2.株や投信
 3.夫婦で海外旅行
 4.クルマ
 5.自宅リフォーム
    ・
    ・
    ・

だが、実態とのギャップは大きい。

希望より実態が大きいものは、パソコン、クルマ、冷蔵庫、DVDプレーヤー、国内旅行、孫の誕生祝

希望より実態が少ないものは、大型テレビ、海外旅行、別荘、ホームシアター

というところだ。一言で言うと、「夢は小さくなり」「アナログっぽいものを買う」ということだ。

この期待されている団塊世代がモノを買わないという現象については、既にいくつもの仮説がある。主なものは、

1.もともと豊かでない。住宅ローンを精算すると、使うほどの退職金がない。
2.既に早期退職した方や、定年延長ということで、ピークがばらけている。
3.こどもの頃、モノ不足の時代だったため、何も買わなくても我慢できる。
4.本当に必要なものは、退職前にだって必要なのだから、あわてて買うものもない。
5.「団塊商法」と騒いでいる間は買いたくない。誰も売りつけなくなったら、買うつもり。
6.本当に団塊世代が飛びつくような、すばらしい商品がない。
7.孫の教育費に使いたい(こどもも恵まれない団塊ジュニア世代だから)。


実は私は、ボランティアで自宅近隣でこども将棋教室を運営しているのだが、3ヶ月ほど前、近くのカルチャー・センターから「『2007年問題』をターゲットにして将棋教室を開きたいので、講師をお願いしたい」旨、頼まれた。まあ、「カネを払って習い事をする」ようなことがあるわけないだろう、とたかをくくって、二つ返事をしたところ、案の定、シニアはゼロ。主婦とこどもの希望者ばかり、ということになったそうで、すべてを巻き直して、「初心者教室」スタイルで再募集するということらしい。そうやって、「団塊」のことを忘れたころに、案外、シニアの応募があるのかもしれないが、たぶんうまくいかない。習い事には素直な気持ちが必要だからだ。

それに、今の例では、「団塊世代」というコトバが嫌われていることから「2007年問題」と言い換えているようだが、実は、大量出生者が60歳になるのは、年度統計では2007年からかもしれないが、月別統計で言うならば、既に2006年夏から退職者が増加しているのである。しかし、現実は、何も売れていないのである。もう、ターゲットと考えるのは、やめた方がいいのかもしれない。

あるいは、「あなただけのクルマ」や、「あなただけのゴルフクラブ」を買ってしまった方々が、「やはり、年齢に合った簡単な製品の方がいい」と、心を入れ替えて買い直しをすることになるのだろうか。あるいは、孫用のベビー服とか、雛人形などがいいのではないだろうか、とか、またも団塊売込み商法に頭が向かうのである。


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