開戦で原油生産国の得失は

2022-02-22 00:00:09 | マーケティング
ウクライナ危機で、とりあえず民主主義国側からの制裁のうち大項目は原油・天然ガスの輸入停止だろう。天然ガスについてはテクニカルな問題があって、今までパイプラインで輸入していた分をLNGタンカーで受け入れる設備があるかどうかが問題になる。特にドイツが安全保障的に、余剰なタンクや船舶受け入れ設備を持っているかが問題。もともと東ドイツはロシアに依存していたはずで、完全ストップできるかどうか。

そのかわり、原油については大部分が大型タンカーで沿海の製油所で受け入れていたはずで物理的問題は少ないだろう。しかも米国がイランと何らかの核合意をして貿易再開となると様相は一気にロシアに不利になる。米国から他国をみた時の悪漢度はイラン>北朝鮮>中国だったものが、一気にロシアがトップになり、イランは番外になったからだ。

一部には、ウクライナで戦争が始ると米国のシェールオイルが儲かるという説があるが、実際にはそれで得られる米国の利益よりも、原油が売れなくなって損をするロシアの損害の方が大きいと思われる。

ある石油開発関係の団体の開発エリア別の損益分岐点の資料によると、

 サウジアラビア:10ドル/バレル
 OPEC内陸上エリア:20ドル/バレル
 OPEC内浅海エリア:30ドル/バレル
 米国シェールオイル:60ドル/バレル
 OPEC内深海エリア:65ドル/バレル

と推定されている。損益分岐点というのは生産コスト近似であるので、この価格と原油価格との差が利益ということになる。ちなみにロシア原油は欧州地域では20ドルぐらいでシベリアでは40ドルくらいではないだろうか。

つまり80ドルぐらいになるとシェールオイルの生産が増えるだろうが、利益がそうあるものでもないが、その分ロシアの生産量が減少すると、失われる利益はかなり大きい。ロシアとしては単に価格が上がる緊張状態が一番良いことになる。

ただ、サウジのようにお金持ち国家になると、「むやみに原油を掘って売ってしまうのは、現在手にできる現金は増えるが、その分地下資源がなくなるので国家の富としてはたいして喜ばしいわけではない」と考えるわけだ。

ところで、ドイツは原発ゼロを国論にしようとしているが、逆にロシアは米国が輸入するウランの40%を輸出しているし、最近は洋上浮体型の原発の運用をはじめている。発展途上国に輸出を考えているようだ。10年ほど前には原子力潜水艦を発展途上国に着岸させ、発電所のように電力供給を行うプランを持ちかけたのだが、同意した国は1か国もなかった。国の電力をロシアの原潜に委ねる国はなかったわけだ。ロシアが気に食わない国には、潜水艦から陸上につなぐ電線をちょん切って、「ではサヨウナラ」といなくなるのが自明だからだ。最初に書いたドイツが原油・ガスのロシアからの供給が止められたら困る、ということならば、発展途上国以下の安全保障レベルだ。

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