ジャイロ・ボールの特許権?

2007-02-27 00:00:09 | スポーツ

米国球界ではジャイロ・ボールの話題で持ち切りである。ついにニューヨーク・タイムズにも「The Japanese Gyroball Mystery」と特集される。要するに松坂大輔が、このジャイロ・ボールを投げるというのだが・・・

まず、このジャイロというのは、ジャイロコンパスとか地球ごまとかイメージすればいい。駒は普通、横に回るのだが、地球ごまは縦に回っている。だから、むしろ今話題になっている野球のジャイロ・ボールは「逆ジャイロボール」というのが正しいかもしれない。

どんなボールかと言う前に、普通のピッチャーの投球だが、ゴルフのボールと同じように、進行方向に対して、バックスピンがかかっている。ピンポンでカットしたボールといってもいい。ピッチャーはボールを投げ下ろすときに指でボールを切るように投げるからバックスピンがかかる。縫い目を横向きにして、人差し指と中指で縫い目に指をかけて投げるのが4シームボールで、バックスピンで起きる気流でボール上部の気圧が下がり、比較的落ちにくいストレートになるが、空気抵抗が少しある。同様の投げ方で、2本の指を別の縫い目に合わせて投げるのを2シームボールといい、若干ランダムに起動がぶれる。また、このバックスピン量を落としたのがフォークボールであり、ほぼ無回転とし、縫い目の空気抵抗で不安定に落ちるのがナックルボールである。カーブやスライダーは、このバックスピンにサイドスピンを加える。ゴルフのボールが右や左に曲がるのも、このバックスピンにサイドスピンが加わるからだ。

ところが、ジャイロボールは、この回転軸がまったく異なるわけだ。キャッチャーから見ると、普通のボールは進行方向に対して横軸で逆回転で飛んでくるのだが、ジャイロボールはこの軸が進行方向と同じわけだ。わかりやすくいうと、飛行機のプロペラのように回転してくる。補球する時にミットに捻じ込まれるような感じがあるわけだ。(やり投げとかアメリカンフットボールのパスもこのジャイロ回転だ)

では、そのボールの効果だが、まず、空気抵抗が少ないため、初速と終速の差が少ない。早く見えるわけだ。さらに、バックスピンがないため、ボールが放物線になるという効果がある。いつも、バックスピンボールを打っている眼からいうと、落ちるような感じがある。まさに魔球だ。

さらに、このジャイロボールにも4シームと2シームがあって、2シームジャイロは速度が遅い反面、軌道がランダムにぶれる、とても危険な球らしい。

d86c1202.jpgそして、このボールが急に話題になったのは、ボールの発明者が今、アメリカで一騒ぎしているから、ということらしいのだ。その人物の名前だが「手塚一志」氏という。れっきとしたピッチングコーチでレンジャーズの大塚投手のコーチをするため、渡米中だったそうだ。しかも、このボールの発明は今から12年も前、1995年だそうだ。阪神淡路大地震、地下鉄サリン事件、ウィンドウズ95の年である。ビッグニュースに埋もれたというわけではないが、この秘球は、ほんの一部のピッチャーが使っていたそうだ。たとえばトモキ・ホシノ、シュンスケ・ワタナベといったところで、松坂は昨年、覚えたらしい。そして、日本勢は2シーム・ジャイロを投げるそうだ。(ということは4シームジャイロも投げられるのではないだろうか)

投げ方は、上手投げの場合は、肘から先を内側ではなく外側に捻るそうだ(抜いて投げるとスクリューボールにしかならない)。要するに横回転を与えるため、本気で投げなければならないので、体を壊しそうな感じもある。そして、米国では、今、ジャイロボール探しがはじまっていて、ペドロ・マルチネスは4シームジャイロを投げているということが解析されたそうだ。

さらに、考えてみると、何も投手でなくとも、センターを守ることが多くなったイチローあたりは本塁返球とかに使えるのではないだろうか。高速放物線返球だ。「レーザービーム」と二刀流。ジャイロの方は、名付けて「テポドーン」。

さて、日本のメジャー・ジャーナリズムでも、先週のテレビ東京モーニングサテライトでは、井川もジャイロを投げるという情報を紹介しているが、朝日新聞は2月26日夕刊で、レッドソックスのファウルズコーチの話として「ジャイロボールはあり得ない」と書いている(自分の新聞社の意見として書かないところが用心深い)。


ところで、こういう魔球なのだが、発明者、手塚氏の方には、何か特典があるのだろうか。一球投げるごとに、1万円とか発明者に入るのならば、さらに技術革新も進みそうな気もするのだが、裁判には向かないような気もしないではない。商標登録程度は可能かもしれないが、むしろ『ジャイロボールの投げ方』解説DVDでも発売したほうがいいのではないか、と思ったら、既に発売されていた

何か、変だなあ・・



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