マクドナルドは価格破壊か味覚破壊か?

2005-07-30 19:38:03 | マーケティング
134320ef.jpg日本マクドナルドが経営に苦しんでいる。7月28日の経済ニュースを見ていたら、早朝の時間に「藤田家」が25%の持株を香港の投資会社ロングリーチに売却と書いてあった。夕方の正式発表では、レイクヴューリミテッド(ケイマン法人・代表者マーク・チバ)が購入したとなっている。(チバ)というのが日本人風の名前なので気になるが、少なくても私は知らない。132,960,000株のうち、約25%の33,210,000株を約750億円で購入したらしいが、そんなにいいのだろうか?この株で痛い目にあった人は大勢いるらしいのだが・・

公表された財務諸表を見ると、何しろ債務超過だ。そして、短期的な問題ではなく、利益率が非常に低い。さらに、特別支出が多いという特殊要因がある。2003年度には「経営役務契約解約金(要するに藤田田氏への手切れ金)に62億円。早期退職金36億円。2004年度には、狂牛病と鳥インフルエンザのために、食材の廃棄で9億円。泣けてくる。

しかし、よく見ると利益率が低いように思える。粗利で10%とは、設備産業的で、レストラン業としては低すぎる。そして店舗数と売り上げの推移を見ると2000年の段階で3,598店で4,389億円(1.2億円/店)が2004年は3,774店で3,959億円(1.0億円/店)と下がっている。驚くことに、1990年は776店で1,749億円(2.3億円/店)、1995年には1,479店で2,528億円(1.7億円/店)ということなので、店舗あたり売上高が下がり続けていることがわかる。現在の1店舗1億円/年というのは、日販で28万円であり、コンビ二以下であり、一方、従業員数はコンビ二以上だ。では、何が問題なのか。さっそく、マックへ行く。

ご存知のとおり、マックは価格政策が猫の目のように変わる。7月22日には500円セットに加え、530円セットを作ったのだが、ますますメニューは解読しにくくなる。そして、あいかわらず100円メニューはある。メニューの二極化で、中間がない。そして、都心のマックには金持ちは絶対に行かないから100円サイドの一極化になる。私は、チーズバーガーとチキンバーガーとコーヒーという変な組み合わせで300円払うのだが、最近の流行は、チーズとチキンのバーガーを200円で買い、缶コーヒーを買って、公園のベンチで食べることらしい。マックには200円、自販機(コンビ二)に110円。実は、これがマックには最悪のパターンだ。

原価はわからないのだが、バーガーとフライドポテトとコーヒーを比べると、利益率はコーヒー、ポテト、バーガーの順ではないかな。100円バーガー売っても儲からないだろうが、ついでにポテトとコーヒーを買ってくれると、さまになるはずだ。とすると、私のバーガーX2+コーヒーもあまり嬉しくないかな。

では、なぜ100円のメニュー(さらにシェークも100円)が売れるのかというと、それが100円の味だからなのではないかというところに行き着くのではないだろうか。

実は、かなり以前、あるハンバーガーのフランチャイズチェーン(マックに粉砕された)の仕事をかじったことがある。当時、日本マクドナルドは、妙なことで差別化をはじめていたのである。(といっても、例の「スマイル=0円」の話ではない。)

まず、3大メニューである、バーガー・ポテト・コーヒー(ジュース)をセットにしたことである。次に、バーガーのバンズ(パンの部分)を限りなく柔らかくして、「前歯で噛み切れるよう」に規格化し、大手の製パンメーカーに特注品を要求したのである。今でも、奥歯で食べると、バンズが溶けて奥歯の横に張り付くはずだ。ごく幼児からこの柔らかさに慣れるように仕向けたのだ。そして次にポテト。これをポテトというのは本来ちょっと違うかもしれない。ポテトをドロドロにして、搾り出して、本物風にしているが、もちろんどこを食べても同じ太さで同じ味。そしてとても柔らかい。さらにコーヒーは香りがなく、味だけにしている。喫茶店ではなく、あくまでもバーガーの付録という存在だ。そして、1990年ごろにマックを大量に食べ始めてから、実はこどもだけでなく、大人も、老人もみんな15年から20年経ったわけだ。

ずっと柔らかいものを食べていると、それ以外食べたくなくなる、というのは実は一つの真実なのだが、あまり実証されていない。食べ過ぎて、突然、嫌いになるというのも聞く話だ。案外、今までのマックの味に国民全体が飽きてしまったのではないかとも考えられる。柔らかいものばかり食べてきて、突然、堅いものが食べたくなったのかもしれない。味もそうだ。バンズが柔らかいせいかもしれないが、生ぬるい味だ。以前、シンガポールのバーガーキングでとった朝食は、完全なエスニックだった。それと、缶コーヒーに負けるようなコーヒーでは100円も払ってもらえないだろう。

それで、批判ばかり書いてしまうが、香港の投資法人は何が狙いなのかよくわからないが、ふと頭をよぎったのが株主優待券だ。Yahoo!の株価掲示板で日本マクドナルドは、優待券の話題で盛り上がっていた。普通郵便で郵送するのはおかしいとか、まだ届かないとか・・そんなに魅力的なのか。たまたま手元に雑誌ZAIの9月号の特集で、優待券の特集があり、探すと書いてあった。100株で、「バーガー・ポテト・ソフトドリンク」のセットシート6枚(1冊)。

1セット500円とすると、3,000円分か。しかし、とすると33,210,000株の株主には332,100冊(約10億円)の優待券が渡され、ほとんどが金券ショップへ持ち込まれるのだろうか?
まさかと思い、読直すと、500株以上の人は5冊となっているので、要するに33,210,000株の方にも5冊だけしか渡されないのである。やれやれ・・


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