とどまってみえるもの(あざみ野フォトアニュアル)

2021-02-07 00:00:52 | 美術館・博物館・工芸品
21世紀になって写真表現は新たな模索を続けている。「これっ、写真?」という感じだ。横浜市民ギャラリーあざみ野はもともと横浜市が保有する写真芸術を紹介する場であったが、毎年「あざみ野フォトアニュアル」という企画で、若手の前衛的作家展を行っている。今回(~2/14)は20代から40歳までの7人が出展。

まず、コロナ禍で写真作家に起きていることは、ごく普通の市民と同じで、気軽に撮影に行くわけにはいかなくなったこと。多くの作家は、屋外に出て撮影するのが一般だったのだが、屋内(自宅)で創作しなければならない。

パンフレット左から、宇田川直寛「Backward Walking Problem」シリーズから。風景を見るときに、ぼんやりと本質を見るため主題/主体を消し去って背景だけを取り出したそうだ。作家によれば公園のベンチに座っているとこういう風景が見えたそうだ。

次は川島崇志「新しい岸、女を巡る断片」シリーズ。宮城出身の作家は震災の時に偶然見つけた流れ着いたアルバムを見て、持ち主に届けたときに、カタストロフィの物語を綴り始めたそうだ。自らの原点「0地点」を探す。

新居上実の「untaitled03 2020」。絵画のような写真。写真のような絵画というのはあるが、逆だ。被写体はミニチュアだ。写真にするために被写体のミニチュアを作るというのは何となく倒錯的だ。たまたま、昨年の夏に郊外の一戸建てに引っ越したそうだが、コロナ禍によって家から出られない自分が、共同体の中に組み込まれた感じがあったそうだ。町のジオラマの中にあるミニチュアの家という感じを、家の中のミニチュアの家という二重構造で表現。



右側の上から、吉田志穂「測量 山」屋外写真だが2016年の作品。航空写真や画像検索で見つけた自分の行きたい場所を実際に探して撮影に行く。実際には、既存媒体の風景を超えることができないことも多いそうだ。想像を超えるほど見たことがないような光景を写したいということ。

街角の平凡風景を撮影したのは、チバガク「sturdy(m,g-itbd)」。日常生活の中で、なんとなく「何かがいる」という感じがある時がある。その神でもなく幽霊でもない何かを写そうとしたそうだ。いわゆる「妖怪」のことかな。妖怪は写真には映らないはずだが・・

最後は木原結花「大阪府岸和田市小松里町の空き地」。テーマは「行旅死亡人」。えらいものを題材にしたものだ。官報や新聞の記事などにより身元不明で亡くなった行旅人の情報を集め、想像できるご遺体を再現しているそうだ。大きな特徴しては、発見された時の場所に行って現場の太陽光や水洗洗浄も行うそうだ。


多くの作家にとって、今写したいのは自分の心象ということかもしれない。