花のあと(2010年 映画)

2021-02-04 00:00:45 | 映画・演劇・Video
何本、藤沢周平原作の映画を見ただろう、と思い調べると8本中5本を観ている。「たそがれ清兵衛」とか「蝉しぐれ」がいい。本映画も趣向が濃い。

主演女優は北川景子。東北の小藩の武士の娘で、剣の達人少女伊登を演じる。映画の現在時制は伊登が68歳になり、孫に50年前の出来事を語る形式になっている。

hananoato伊登には片桐才助という許嫁がいる。しかし片桐(甲本雅裕)が江戸勤めからなかなか帰ってこないうちに父親の剣道場の筆頭剣士である江口(宮尾俊太郎)という男に恋をしてしまうのだが、片桐が城下に帰ってきて、さらに密かに恋する江口も結婚してしまい、一件落着かと思いきや江口の新妻は藩の重臣と不倫関係を続けていた。

その重臣は、不倫だけではなく、豪商からの賄賂をせびっていたりするのだが、どうも露見しそうになっていた。そのため計略をめぐらせ、江口を切腹に追い込む。しかし、これで一件落着にはならなかった。伊登が許嫁の片桐に、あろうことか江口の死の真相調査を依頼する。片桐は剣の道はまったくだめだが人望があるために渋々調査を進めると、すべてが見えてきたわけだ。

そして伊登は、ついに重臣と刃を合わせることになる。それにて一件落着となり、後日譚として、伊都と結婚した片桐は、昼行燈ではあるものの藩内での人望を得、筆頭家老の職を務めることになる。


本作、68才の伊都が、自分の人生を肯定的に考えたのか否定的に考えたのかは明らかにされない。封建制社会の中でのできごとには、どうしても制度と現実の壁があり、藤沢周平の映画は、多くはその壁までを表現して、解釈は観客にまかせる、というのが多いように思える。(案外、パターン化すると書きやすいのかもしれない)

主演の北川景子だが、この映画の前にも後にも時代劇には多く出演していないようだ。長頭型の顔に日本髪が似合わない。しかし、女剣士として髪を振り乱した姿がサマになっているのは、いかにも惜しい。といって体育大学在籍中の土屋太鳳のように忍者を演じるには、基礎的な体力が厳しいだろうか。やはり剣士役がいい。とはいえ、本映画では斬り合いの場面はスタンドインが使われたようだ。長刀を失ったあと、短刀で逆襲する場面に切り替わった時に本人が登場したのだろう。(現場に長刀1本が残されたままになり、死体の数より刀が一本多いことの疑惑をどうしたのだろうと疑問が残ってしまったが)

なお、人望はあるが剣はまったく使えないことになっている片桐を演じた甲本雅裕だが、剣道四段だそうだ。