エネミー・オブ・アメリカ(1998年 映画)

2020-08-03 00:00:42 | 映画・演劇・Video
22年前の映画だが、やたら現代的だ。テーマは「監視社会の可否」。亡命したスノーデン氏が実話として語っているように、米国のNSAは通信だけではなく監視カメラやスパイ衛星や過去のプロファイル、クレジットカードの使用状況などを統合的に使って個人を監視している。

その「監視法案」を連邦議会で通過させようと、反対派の下院議員が暗殺される。実際にはNSAの要員による殺人なのだが、自殺に偽装工作が行われる。

ところが郊外の湖畔は野鳥の天国でもあり、野鳥愛好家の男性が野鳥の観察用のビデオカメラに犯行のすべてを録画していた。ところが運悪く、そのカメラを野鳥愛好家が持ち帰るところをNSAの人間が目撃する。

そしてビデオデータの争奪の第一弾は、その野鳥愛好家をNSAが追い詰めていくところだ。屋根の上を逃げ回ったり、自動車専用道路を自転車で逆走したり、その途中で偶然にも大学同級生のディーン(演:ウィル・スミス)と出くわし、ディーンが持っていたこどもへのプレゼントの紙袋の中にビデオデータが隠される。

そして野鳥愛好家は、まもなく殺されるのだが、次に追われることになるのがディーン。なにしろ、紙袋のビデオデータのことを知らないわけだ。知らない間に国家権力に追い詰められていく。今度は彼が逃げ回ることになるが、そこに助っ人ブリル(演:ジーン・ハックマン)が現れる。元NSAに一員で深い恨みを持っている。彼ら二人は反撃に出るわけだ。

この先、まだまだ危機とチャンスがあり、結局は、劇中にばらまかれたいくつかの種は大部分が回収される(最後の方でブリルが1億8000万円をNSAから巻き上げようとして失敗するが、本気だったのかは不明。もし、手にしたらディーンを裏切って一人で逃走しそうな感じもあった)。

本来は、単なる「うさ晴らし系映画」のはずが、現代的に言うと現実そのものという感じがある。中国なんか街中に顔認証カメラがあり、反体制派の監視が続いているし、米国だって同じようなことはある。5Gなんてそのものだ。街中に高出力の電波が飛び交うことになる。多くの買い物はクレジットカードの記録が蓄積されていく。

日本でも政府のキャッシュレス化推進の裏には情報監視があるのかもしれない。

ところで、この映画の主演のウィル・スミスだがアフリカ系アメリカ人だ。善良な弁護士である。アメリカンの映画ではアフリカ系アメリカ人は常に善良な人間として登場する。悪役は、常にイタリア系、メキシコ系、中国系と決まっている。イタリア、メキシコ、中国政府は抗議しないのだろうか。(たぶん、実際には映画以上の悪漢ばかりだからだろう)