自在鷹置物の作者

2020-08-09 00:00:21 | 美術館・博物館・工芸品
読まずに積んでいたのだが月刊経団連の2020年5月号。なぜか、この雑誌、ずっとSociety5.0 の特集を続けている。誰がなんのためにやっているのか不明だが、全国の学校とか公共施設のような場所に5Gのネットワークが設置されはじめていて、電磁波障害の懸念も指摘されている。今回は、災害対策とSociety5.0の関係がテーマだが、行政が連携しても災害を防げるわけでもない。すでに危険な場所はわかっていて、そこが崩れて災害が起きている。災害が起きてから救助に向かうのが早くなるのだろうか。疑問だらけだが、そんなものだ。日本の問題は、コロナ禍をみてもわかるように技術や情報というところではなく、人為的な組織問題だからだ。



その雑誌の表紙に登場したのが、『自在鷹置物』。江戸時代の再末期の作のようだ。金属を使って細かな部品を作り、リアルかつフレキシブルに可動する動物(昆虫)像を組み立てるそうだ。現物は見たことがない。今年は9月15日以降、国立博物館本館で展示されるそうだ。鷹の羽の一部を動かすと羽根を畳めたり拡げたりできるそうだ。



似たようなものでも動かない鷹は、よくある。自宅にも一羽いるが、犬の興味も惹かないものだった。(近日中に公開かな)

ところで、この置物の作者だが明珍清春という。明珍家は古くは武田信玄に仕えた甲冑師の家系で、武田氏壊滅後も諸大名のために甲冑を作っていた。

しかし、江戸に入り、甲冑師は流行らない。姫路藩酒井家に仕え、姫路城の金具などを作っていた。さらに明治になり、あらゆる面で苦境に立ち、伝統技術を活かして、風鈴作りを行う、明珍の苗字も、武具が触れ合うと明るくチーンとなる甲冑が得意だったところから与えられたと伝えられている。さらに、しばらく前は、囲炉裏用の鉄箸などが主要製品だったそうだ。

しかし、なかなか大変だろうなと同情してしまう。日本の夏は暑くなりすぎてエアコン生活になり、風鈴の出る幕はないし、風鈴の音で近隣トラブルも起こる。囲炉裏がなくなったあとの鉄箸はただの凶器だ。

ゴルフのパターでも作ったらいいような気もする。プレーヤーの意のままにボールをコントロールできる自在パター。ボールを打つ時には、なぜか金属音がして、カップインしてチーンと聞こえる。

響きのいいトンカチとか、音にこだわれば、まだまだいけるような気もする。