白い肌の異常な夜(1971年 映画)

2020-08-21 00:00:04 | 映画・演劇・Video
原題は『THE BEGUILED』。同名の小説の映画化である。Beguile は誘惑するという動詞で、実は2017年にソフィア・コッポラ監督により同じ小説から同名の映画が製作された。こちらの邦題は、『ベガイルド 誘惑のめざめ』。これもいまいちだ。原作の題名もイマイチかもしれない。



『白い肌の異常な夜(1971年)』は男性中心主義、『誘惑のめざめ(2017年)』は女性中心主義だそうだ。監督の男女差もあるだろう。1971年は主役は伍長役のイーストウッド。2017年版の主役は学園長役のニコール・キッドマン。2017年版は見ていないので関連話は終わりにして、1971年版の方。舞台は南北戦争時の南部での戦闘で、北軍のマクバニー伍長が負傷し、森で倒れているところを近くの寄宿制女学校のエイミーに助けられる。エイミーは日本なら小学校低学年。

運び込まれた女学校には学園長、女性教師、17歳から幼児まで女生徒が6人。南部であったことから、捕虜として南軍に引き渡すことになっていたが、重症なので刑務所で死ぬのは確実だった。実は保護された当初から女性たちはそれぞれ彼に対して、思惑を持ち始めた。

そして、女性学園長も女性教師も17歳も小学生女子も、彼の愛情を独り占めしようと思い始める。そのため、ケガが治れば南軍に引き渡されるはずだった伍長の滞在日数はどんどん長くなり、女性たちの争いが始まるわけだ。

ある時は南軍に突き出されそうになったりしたが、ついに17歳の屋根裏部屋に潜入してベッド体操しているところを他の女性たちに見つけられ、階段から突き落とされ、片足を壊死しそうと言い渡され、のこぎりで切り落とされる。

一方で、戦局は北軍に有利に展開され、学校は北軍支配下に入る。そうなると、女性たちの奴隷状態だったクリント伍長は、突然豹変し、暴君になり、俺の足を返せとか言い始める。

最終的に、彼を待っていたのは大好物だったキノコ料理のゴチソウだったわけだ。


初上映が1971年といえばベトナム戦争が泥沼化していた年で、翌年、パリ会議で米国の足抜けが始まる。勝てない戦争からは、さっさと手を引いて、残された南ベトナムは野となれ山となれ。現代で言うと、(日+米)×(中+ロ)戦争が始まり、途中で米軍が撤退したようなものと想像すればいい。その時代に南北戦争物とは、おそらく何か意味があったのだろう。基本は社会問題がテーマということで始まり、途中で心理映画に変わり、最後は悲劇なのか喜劇なのか判別できない。

出演者はみな好演なのだが、個人的には冒頭の方で、南軍に捕まって瀕死状態で血まみれのまま地面を引きずられて護送馬車に放り込まれた無名の北軍兵士の役をやった無名の男優に星5つをあげたい。