最中(さいちゅう)なのか最中(もなか)なのか

2020-06-26 00:00:14 | あじ
最中という漢字を、「さいちゅう」と読むか「もなか」と読むかは、日本語の難問題の一つだが、あえて混同した菓子がある。



岐阜市の柳ヶ瀬といえば、今年はウイルスで話題だが、本来、織田信長の出世城である岐阜城のお膝元だ。柳ヶ瀬にある「起き上り本舗」という和菓子店の看板名菓が『起き上り最中』だ。

由来は信長に関する史実に由る。

岐阜城に登るのは一苦労なのだが、天守閣は山の上にあり下界には長良川が見下ろせる。いかにも難攻不落の城である。しかし、地理的に信長の本拠地の清洲から天下統一のため京都に向かうには、どうしても斎藤氏を打破して突破しなければならない最初のバリケードだった。東京駅からディズニーランドに電車で行こうとすると、最初の難関が予想外の場所にある京葉線のホームに辿り着くことであるのと同じだ。

実に5年間で7回も攻撃し、そのつど失敗していた。家来には、失敗したとは言わず、「我まさに、起き上がり最中なり」と言っていたそうだ。つまり七転び八起きの途中だ、という意味だ。もちろん大将だから言えるわけだ。途中で討死にした家来は文句が言えないし、生き残っている者だけを励ます言葉だ。

そして、ついに八度目の戦いで、岐阜の地を手に入れることができた。

という故事に基づき、「さいちゅう」を「もなか」と読み直して菓子にしたわけだ。

実は、伝統的には「もなか」よりもずっと以前から、「ダルマ」として商品化されていたそうで、故事→ダルマ→モナカと変異したようだ。



大粒の栗入り最中で、実はダルマのように起き上がるかどうか、何度も実験しているうちに外皮が破れてしまい、浅野内匠頭由来の東京銘菓「切腹最中」のようになってしまった。



なお、栗入りではなく、小豆、抹茶、金団といった製品もあるので入手の上、転がしてみたらどうだろうか。(実は、180度回して逆立ち状態で指を離すと、元の状態に戻る。たぶん完全起き上がり最中は作れるのだと思う)