将棋の神は残酷なのか否か

2019-08-24 00:00:24 | しょうぎ
自身のうつ病経歴を、『うつ病九段』として出版した棋士が先崎学九段。同時代の天才棋士と言えば元女流名人の林葉直子さんかもしれない。同門である。その天才九段が、盤上以外の過密な仕事をこなしているうちに、うつ病になり入院を余儀なくされ、退院後も本人談では七手詰の詰将棋が解けず泣きたくなったとされる(七手詰でも超難解作はあるが)。

私は「メンタルヘルスマネジメント一種合格者」でもあるので、客観的に言うと、うつ病の既往歴がある人は15%程度いて、治療中の人は3%位いるということなので、「うつ病はよく罹る病気であり、たいてい治る」という結論を知っている。

なんらかのストレスがあると免疫力が下がり、体力に自信のない人は「神経内科」に行き、体力に自信がある人は「精神科」にいくことが多い。そのままにしておくとガンに罹りやすい状態である。特に、遺伝的要因はないし、人によってストレスは異なるし、さらに患者数に対して専門医が少ないため、一人当たり診察時間が短く、ストレスの真因がつかみにくい。

ともあれ、最近は棋戦に復帰しているのだが、落とし穴があった。8月12日に行われた叡王戦九段戦予選の島朗九段との対局。184手目に二歩を打って負けた。こういうのは、実にいけないわけだ。



この将棋、一風変わった図になっている。60手目の段階で、先手陣地の一番奥の5九にと金、と金をまもるために後手は5八に歩を打った。まだ中盤の段階で、盤の中央にこんな形が現れるのを見たことはない。しかし、この二枚を無理に取ろうとすると大損害になるため、なかなか形が崩れない。まさに天才先崎の面目躍如たるところだ。



そして100手進んだ160手目、ここで先崎九段が△6六竜と竜を捨てると以下▲同玉△5五金で15手詰。と金と歩が生きて快勝となるはずだったが、△6六角打と常識的な手で決めきれず、混戦になり、最終局面となる。



そして、▲6四角の王手に対して、△5三歩と禁断の二歩を打ち反則負け。

調べてみると、どこに逃げても何を合駒しても詰まされるようだ。▲6四角でなくても▲3一角でも詰んでいる。つまり、元々負けている上、反則までしてしまったということ。

うつ病体質の方は、こういう場合「詰みを逃した上、二歩を打って負けた。二歩の原因は100手以上前に5八に歩を打ったからだ」と思うわけだ。

病気にならない人の考え方は、「何を指しても詰んでいて負けなのに、二歩までして、本来二敗のところ、一敗ですんだ。たまたま、詰みを見逃してしまったが、本当は自分が勝っていた」ということ。

もしかしたら昨今の日韓問題のこじれも、こういう国民性的認知の差があるのかもしれない。

さて、8月10日出題作の解答。





初手に▲3二角成と捨てるが、取ってくれない。3手目の▲3四飛は△同玉と取ってくれる。△5五玉と逃げると、▲5四飛 △6五玉 ▲5七飛と空中すかし詰めがある。この段階で2四銀が邪魔駒になっているが、▲3五銀と捨てても取ってくれない。最後の5手は馬がビュンビュンビュンと鷹狩りのように飛び回る。発見できるかどうかは感覚の問題。

動く将棋盤はこちら

テスト的に作ってみました。




今週の問題。



一応、普通感覚の問題だが、やはり鷹狩り風に追いかける(注:鷹狩りとは、鷹を捕まえるのではなく、鷹を使って弱小動物をイジメるゲームのこと)。

わかったと思われた方はコメント欄に最終手と総手数を記していただければ、正誤判定します。