クロノゲート見学

2016-12-29 00:00:15 | 市民A
ヤマト運輸の羽田クロノゲートを見学した。株主でもあるのだが、そちらの見学会は落選したが、見学のあと会社の社員の人と懇談し、感想文を書くという面倒な企画で参加した。

実は20年ほど前に経営セミナーで、「クロネコヤマトの宅急便」の生みの親である小倉昌男氏の講演を聞いたことがあって、1970年代はM越デパートの配送が売り上げの中核であったのに、一方的に商売打切となり、倒産確実状態に追い込まれたそうだ。そして、以前からアメリカのフェデックスという宅配形態のことが気になっていて、急遽渡米し、調査の結果、社運をかけることにした、という話だった。

当時の日本は国鉄が駅をつかった個人向け運送をしていたが、駅から駅まで運ぶだけだったので、そこから先は利用者は自力でなんとかしなければならなかった。しかし需要があるからといって、フェデックスは「魔法の箱」といわれる立方体の段ボールを統一し、顧客はその箱に荷物をつめなければならない。立方体なら向きがどっち向きでも隙間なくトラックに積むことができて、コストダウンになる。(AMAZONのすかすかの箱はその思想なのだろう)

ところが、日本のお客さんの荷物は、袋に詰めたり、スーパーでおすそわけしてもらった段ボールにつめたり、カバンだったり、形はバラバラだ。需要があっても方法に行き詰るわけだ。つまり、荷物がなくなって運転員とトラックが余った状態だからこそ第一歩が始まったということだろう。

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ところが、見学コースにある社史には、そういうことは全く書かれてなく、もうすぐ100年というように何事もなく自然に宅急便が始まったかのようになっている。忘れたい過去なのだろうか。

そして、羽田のクロノゲートは配送エリアとしては世田谷、大田、渋谷、目黒、品川というまさに富裕層エリアを担当しているそうで、ガラス越しにベルトの上を位置を自動的に微調整しながら配送エリアごとに仕分けられていく荷物をみると、時節がらほとんどがお歳暮といっていい状態だ。物流基地を見学しているのか、日本のお歳暮状況を見学しているのかよくわからない。

お歳暮状況で驚いたのは、ある特定の商品が非常に多いのだ。それは「愛媛みかん」だ。段ボールに詰まった普通の愛媛みかんは、全体の約1割といった感じだが、高速でベルトの上を移動するミカン箱はきわめて目立つ。みかんは他の県でも作っているのだろうが、なぜか全部が愛媛産といっていい(少なくとも箱には愛媛と書かれている)。自宅に届くミカン箱があるかなと目を凝らしたが高速すぎて行き先を読めない(というか上記配送エリアには住んでいないので)。

意外なのは社員数と構成。総従業員が20万人で、うちセールスドライバーが6万人(30%)ということだそうだ。残り14万人もいるわけだ。

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そして、昨年から稼働しているANAの那覇空港の貨物ハブ空港化だが、ANAとヤマト社が提携しているそうだ。ANA側の情報では、あえてヤマト運輸の名前は目立ってなく、ANA自体が物流を行っているのかと思っていたのだが、ヤマトの方はおおっぴらにANAとの提携を公開している。

最後に「クロノゲート」ということばだが、普通は「クロネコ」からの連想と思うだろうが、ギリシア神話の時間の神であるクロノスとゲートウェーの合成語だということだそうだ。もし信じればの話だが。