テムズの川霧が消えた(小林一喜著)

2012-10-29 00:00:53 | 書評
okbaya題名から言うと、テムズ川のほとりに長期滞在して、うつりゆく英国の興亡史などをつれづれに語る、という感じがするが、まったくハズレ。

小林一喜氏といえば、テレビ朝日のニュースステーションのキャスターとして思い出す方も多いかもしれない。1991年2月、56歳で亡くなったのだが、久米宏氏を中心としたニュースステーションの話、そして出身母体の朝日新聞の論説委員としての意見を並べた話、さらに海外特派員としてロンドン時代を振り返った話。こういう記事やエッセイを、亡くなった翌年に朝日新聞社がまとめたものである。

そして、それから20年が経っている。

ところで、最近、「過去・現在・未来」ということをよく考えている。歳のせいか、老人ホームでの話が耳に入ってくる。ホームでは、過去の話と現在の話が中心だ。ずっと未来のことなんか誰も気にしていない。30年後に日本が沈没したって、富士山が爆発したって、九州や四国が中国に占領されようが、深く考えない。

年金の心配をする世代にとっては、未来が重要なことなのかもしれないが、本質的に、未来の事はよくわからないわけだ。また、いじめで自殺する子どもたちは、現在にとらわれ過ぎているのだろう。

この20年前に書かれた、当時一流の論客でさえ、将来への提言については、いくつも方向違いになっている。核の安全性、領土問題の本質、いじめ問題を認識していないこと、高校野球絶賛は所属会社のせいだろうか。赤字ローカル線を廃止してバス路線に変えたことを評価しているのは、どうなのかなあ。

もちろん、現在でもそういう意見の人もいるのだろうけど、おそらく、失われた何十年とか、今でも続いている劇場型政権争いとか、巨大地震とか領土紛争というような多事多難の中で、複雑な世界を生き抜く個々の国民の知性レベルはかなり上昇しているのに、政治家や政治評論家や官僚たちとかジャーナリズムの世界って、ステイなんだろうね。


AKBみたいに毎年総選挙をやって、2回落選したら立候補禁止とか、投票しなかったら罰金とか、候補者は他党の悪口は禁止して自分の政策だけを訴えることとかビシビシやってみればいいんじゃないかな。