写真集『遺影、撮ります』(野寺夕子)

2010-11-08 00:00:51 | 書評
何の因果で、この本を読むことになったのかもよくわからないし、何の因果で76人の市井の人たちが遺影を撮影したのかもわからないし、何の因果で写真家、野寺夕子が48歳で遺影の撮影に取り組んだのかもよくわからない。



ともかくも、遺影が免許証の写真や集合写真の中から引き伸ばした写真じゃ、まずいのではないか。ということから出発し、朝日新聞社の大阪支社が「遺影撮影プロジェクト」をはじめたわけだ。

被写体になったのは、普通のおばさんやおじさんなのだが、それぞれ、軽い意味を持つ人や重い意味を持つ人がいるわけだ。

軽い気持ちの人は、「将来の自分の死について意識を持とう」というタイプの人が多い。

もう少し真剣な人は、近親者に先立たれた後、やはり自分の遺影は元気なうちに撮影しておこうと考える人。

そして、もっとも重く考えている人は、すでに余命を宣告されている人。

それなりに精いっぱいの笑顔を作るわけだ。本書が刊行されたのは2007年。3年前である。果たして何人の遺影が、すでに額におさまってしまったのだろうか。

ところで、それならばと、自分の遺影でも3年おきくらいに撮影しておいた方がいいかな、と思ってみたものの、鏡を見てみると、撮影より前に、もっとお肌の手入れをすべきだなあ、と思ってしまい、軽くマッサージをしてみた。もちろん、何も変わるわけはないわけだ。