「島国根性を捨ててはいけない」(布施克彦著)

2010-11-24 00:00:40 | 書評
日本は島国であって大陸国家ではない。多くの見識者は、その事実をとらえて、「島国根性」と呼んでいる。どうもネガティブな言葉である。一方、反対語はなかなか見つからず、「大陸的」とかいって、ややポジティブな語感である。



そして、筆者の布施氏は、日本は島国なのだから、島国的な思想や行動様式を捨てられないのは当然で、しかも日本流が必要な場合もある、としている。

一方、大陸的といっても大陸国家は周囲にある別の国と陸続きだし、領土紛争は、いつどこで起きるかもしれない。しょせんは隣国を疑ってかかるしかないというところが出発点。

それで、比べてみれば、島国の方が大陸国よりずっと住みやすいのではないか、ということになる。


ところで、この本の内容は、私の持論と同じなのである。だから、この本を読んで、何か「ああそうか」というような部分が、割に少ない。


近代史を見ても、満州国を作ってから日本が大陸的な発想を始めたのが、逆に失敗の第一歩ということかもしれない。文化の形成時間は長い。

そして、本書の最後が英国論。つい最近、公務員数の大幅削減を打ち出したが、日本と英国では似て非なるということなのだろうか。でも、真似をした方がいいのは、公務員削減だけではなく、民主主義そのものとか、ウィンブルドンや全英オープンゴルフもそうだろう。

それらのスポーツはどんどん外国人に席巻されているのだが、何かを自由化すべき時に、農業ではなくスポーツを自由化してお茶を濁したのだろう。日本も大相撲の外国人制限枠を撤廃すればいいのにと思うわけだ。

ただ、テニスやゴルフは英国の上流階級が自らプレーをしていたものを、庶民がまねをするようになったという「プレーするスポーツ」であるのに対し、相撲は江戸時代に遡っても、「見るスポーツ」であったという違いがあるので、外国人制限枠を撤廃しても世界の先進国から続々とプレーヤーが集まってくることもないだろうとは思えるのだが。

そして、政治的な差といえば、国連の安保理での椅子の場所である。さらに、核兵器を持っている国と持たざる国の差も大きいような気がする。