Oversleeping

2010-02-06 00:00:10 | しょうぎ
将棋A級順位戦リーグ第8回戦が終わる。名人挑戦権をかけ、10人のトップ棋士が1年間9局のリーグ戦を戦い、トップになると名人戦挑戦者となる。9番目と10番目はB級に降級となる。最終局を残し、6勝2敗が三浦八段、5勝3敗に丸山、谷川、高橋の三人の九段が並んでいる。最終局は3月2日。三浦八段が負ければ同率決戦になる。

だが、・・

口には出さないものの、追いかける3人にとって共通の、巨大な気がかりがある。

三浦八段の対戦相手が、郷田九段であることだ。

事件は今年1月21日に発生した。

実は、郷田九段は、竜王戦1組1回戦の森内九段との対局で、寝坊のため、不戦敗を喫していたわけだ。対局開始時間は10時であり、規定により遅刻時間の3倍が持時間5時間から差し引かれるため、1時間40分を経過した段階で、時間切れ負けになった。

順位戦最終局で、再び郷田九段が対局室に現われなければ・・・

自動的に三浦八段が7勝2敗になり、3人の九段のいかなる奮闘も、むなしくなるだけである。喜ぶのは、三浦九段と羽生名人だけだ。

3人とも郷田宅に自主的モーニングコールをすることになるのだろう。


さて、寝坊の話に戻ると、郷田九段は、森内九段との対局ということで興奮し、朝の4時まで眠れなかったそうだ。危ないと思い、目覚ましを2台セットしていたものの、起きたときには既に11時を回っていて、もはや間に合わないむねを将棋連盟に電話連絡したようだ。

3年前の名人戦7番勝負で、当時の森内名人から「扇子の音がウルサイ!」と挑発されたことに今もって悶々としているのだろうか。

不戦勝で勝ったというものの、森内九段にしたって、来ない相手を待つのも辛い。ギリギリに相手が到着して、自分の持時間が5時間で、相手が5分であっても勝てる保証もないわけで、逆にプロ仲間で哄笑されることになる。「不戦勝でも対局料はもらえるのだろうか」とか、余計なことばかり考えてしまうだろう。

そして、将棋連盟は、1月27日に謹慎中の郷田九段に、3点の処分を発表した。

1.当該局の対局料はなし。
2.竜王戦出場の1年分の定額報酬100万円の半分、50万円の返納勧告。
3.指導対局などのファン奉仕活動1日。

ということだそうだ。

対局場に行かなかったのだから、対局料(40万円位?)が出ないのは当然だろう。また、実力次第の高額賞金が売り物の竜王戦にも、生活保障的な定額支給があったことを公開してしまったわけだ。

最も気に食わないのは、ファン奉仕活動をペナルティの一つにしたこと。ゴミひろい並だ。「ファン第一」とは口ばかりということだろうか。

さて、棋士にとって、「悪夢」というものの第一にあるのが、この「寝過ごし」というものではないだろうか。ほとんどの棋士は、「目が覚めたら、寝過ごしていたことに気付き、パジャマのままタクシーに乗ったら渋滞に巻き込まれてしまった」というような夢を見たことがあるのだろう。悪夢というのは、次々に悪いことが襲い掛かり、想像することのできないような不運に落ち込むことなのだが、今回の事例で、不戦敗した時の結果を想定することが可能になった。これからは安眠できるのかもしれない。もちろん1回目の寝坊の話だが。

ところで、不戦敗によるダメージ、郷田九段の場合は、「キツイお叱り」と「僅かな経済的損失」ということになったのだが、中にはもっと人生に重大な影響を与える場合もある。

奨励会三段リーグ。2004年後期の36回三段リーグ。年齢的に後が厳しい状況だったH三段は31回リーグの時に一度次点になっていた。迎えた13回戦。午前の対局で不戦敗を喫してしまう。その後、18回戦まで終わった段階で12勝6敗。不戦敗に「もし」を言ってもせんないが、もし、勝って13勝であれば、二度目の次点ということで、規定によりプロ棋士になっていたはずだ。

その後、H氏は年齢制限で退会し、かなりの大回りをしてアマ棋戦で優勝、三段リーグのアマチュア枠からの復帰を狙っているようである。

ただ、あの時一勝し、今も「先生」と呼ばれているのか、あるいは度重なる不戦敗を重ねた結果、鬼理事会から「辞職勧告決議」を突きつけられているのかは、よくわからないが。

さて、1月23日出題作の解答。



1題目。

▲5四金 △同玉 ▲6三飛成 △4四玉 ▲3三飛成 △5五玉 ▲4五竜まで7手詰。

無理やりに空中都詰にしたので、苦しそうだ。企画倒れの再建策みたいだ。

動く将棋盤は、こちら



2題目。

▲2五銀 △1七玉 ▲3七飛 △1八玉 ▲2七竜 △1九玉 ▲3九飛 △同香成 ▲5五角まで9手詰。

わざと6×6の枠いっぱいに作ってみた。6一の角は初手▲2六竜の余詰の防止なので、2一香に置き換えてもいい。

6×6の枠に入れても、すべて枠の外側で攻防が行われるようになっている。

飛車を「取る、打つ、捨てる」の3拍子という指摘もあったが、タイガーの趣味みたいだ。

動く将棋盤は、こちら


さて、本日の問題。



ヒントは「とどめの駒は?」。基本的には簡単な構造になっている。朝の4時まで考えて、寝坊する心配はない。

わかったと思われた方は、コメント欄に最終手と手数を記していただければ、正誤判断。