房総のあじ(でもなかった)

2010-02-26 00:00:07 | あじ
rakkyo1「玉黄金らっきょう」という食品がある。

簡単に言うと、らっきょうの漬物である。それだけの話ではある。

先週、千葉県でゴルフを楽しんだあと、同伴プレーヤーの一人がクラブハウスの中の売店で購入され、プレゼントしてもらった。といっても、その購入財源は数十分前まで私のサイフの中に眠っていて、何らかの原因で、所有権が移転したわけだが。

もっとも、普通では大量にこういう商品を買うこともないので、たまにはいいかなと思いながら、最初の一粒を食べると、これが異次元のあじだった。

まず、歯先で、シャキッと小気味良い音で噛み切れる。さらに、噛むと、シャキッ、シャキッ、と細かな破片になる。よくカレーのつまみで売っているらっきょうだと、皮の硬さが不均一で、噛み切れなかったり、中身がするっと抜けたりする。そういうことはまったくない。

rakkyo2甘くもなく塩辛くもなく、ちょうどいい。1、2、3、4、5、・・と、どんどんつまんでしまう。

あまり食べ過ぎると腹をこわすに決まっているので、きょうはこれだけ、と決めてからさらに1個を食べてしまう。

こういうありふれた野菜の食材も千葉県は旨いなあ、さすがに野菜王国だ、と勘違いする。

そして、このエントリーを書くために、この玉黄金らっきょうのHPを開いてみる。コミヤ味工という歴史のある会社だった。

沿革を読むと、創業は、亨保年間。安房郡豊津村西の浜で雑穀・雑貨販売業を始め、その後、味噌・糀の製造及び酒類販売等を手掛ける。昭和5年、館山海軍航空隊開設と同時に漬物製造を開始し、海軍指定御用商人として、漬物・味噌・うどん等の納入を行う。昭和20年以降、房州特産の生姜を原料とした製品(主に紅生姜漬)の製造に努め、昭和28年頃より、楽京・沢庵・福神漬の製造も加え、漬物専業メーカーとなった、とされる。玉黄金らっきょうは昭和41年から発売を開始したようだ。

海軍ご用達だったそうだ。海軍の食事と言えば「カレー」というのが定番だから、福神漬やらっきょうがよく納入されたのかもしれない。というよりも、カレーにそれらが付け合せになったのは、この会社のおかげなのだろうか。まったく調べる素材が手元にないので、そちら方面への思考は中断しておく。

また、別のページには、この製品の製造過程が紹介されていたが、らっきょうは茨城県産とのこと。素材にこだわったら茨城になったのかどうかは不明だ。

もともとは千葉県産の野菜素材で漬物を作っていたのには違いないだろう。工場のある館山は千葉県の南端で、他県とはかなり離れている。


ここで、千葉県の野菜の話。語源はわからないが、JA千葉みらいの直営店に「しょいかーご」という農産物直売所がある。通りがかりに寄ってみたことがあるのだが、新鮮な野菜があふれている。千葉は野菜王国なのだ。(案外、千葉県産らっきょうも育ちが良すぎて、前歯で噛み切れないのかもしれない。)

ただ、千葉だけにしかない貴重な野菜というようなものはまったくなくて、どこにでもある普通の野菜や、今まで日本にはなかった新品種とか、そういうスタンスである。

要するに、「儲かる野菜作り」ということだろう。


ところが、千葉県の農家の中にも、稀に野菜作りに長けていない人もいるわけだ。普通は、農業を辞め、土地を手放し、会社や市役所に勤めたりするのだが、中には何らかの理由で農業を続けようと、形や色のまばらな野菜類を、段ボールにつめて、全国の支援者の元に宅配便で販売する人もいるわけだ。

支援者の立場としては、その人が、現在耕作中の騒音のうるさい場所から、もっと広い代替地に移って、飛行機がスムーズに離発着できるようになると、「もう野菜は買わないからね」ということになるらしいわけだ。まあ、あらゆるところで日本には疲労が蓄積されているようである。