ダイエーをめぐる、都合

2004-10-13 17:21:56 | 市民A
以前、数回触れたことがあるのだが、ダイエー再建問題、ダイエー球団売却問題(プロ野球再編)、UFJ銀行問題の相関図がだんだん煮詰まってきた。いずれの問題もタイムアップが近づいているのだが、徐々に問題構造が見えてきた。しかし、まだ出口は見えない。

まず、三つの問題を簡単にサマリーすると、

A.”ダイエー問題”は、事業の好転が見えない中、UFJを中心とした主力銀行が産業再生機構による処理を主張していたが、突然に産業再生機構側から10月12日をもっての期限切れ通告が出された。おりしもUFJに対し、金融庁の検査妨害の捜査が入った日に、頭取がダイエー社長と面会したが、結局時間切れとなり、産業再生機構が逃げきった形になりそうだ(当初は、民間査定が出た後の、後出しジャンケンで逃げるつもりだったが、閣僚に「後出しはダメだ」と言われ、急遽、再生機構側が奇襲に出て強制捜査の混乱に乗じた)。

一方、引き受ける方もイオン、ヨーカ堂とも本業スーパー部門はまったく振るわないことがわかってきて、本業の行方が昏迷してきている。さらにウォルマート、テスコなどの外国勢の名前も挙がるが、逆にカルフールの日本撤退の噂も流れていて複雑化の一途だ。また不動産系の会社は、スーパーをつぶしてマンションにしようとしているため、一緒に再建計画に付き合うというムードはない。

B.”ダイエー球団売却問題”は、いまだ未解決の問題であり、近鉄に続き、ダイエー球団もなくなるとすると、またしても10球団1リーグ方式が浮上し、新規参入希望者が落選ということになりかねない。ある意味で、新規参入の審査よりダイエー問題の方が先の問題なのだ。

C.”UFJ問題”は、金融庁の捜査妨害という、低レベルな犯罪の責任の問題と同時に、ダイエー自体の処理が決まらないと、UFJの評価自体が定まらないという問題がある。
さらにダイエーに融資しているのは、UFJを筆頭とし、三井住友、みずほであり、新パートナーに予定している三菱東京は含まれていない。その上に、ダイエー筆頭株主(20.7%)は政府系の政策投資銀行関連の(有)あかつきキャピタルであり、株主責任をとらせるわけにもいかず、UFJの一人負けになる可能性もある。12日になって、新たに法的整理の噂も流れ出したが、噂を流したのはUFJだろうが、そうなると、株主責任(あかつきキャピタル)の発生だけではなく、買掛金債権も紙切れになる。聞いた話だが、最大買掛金債権者は1社100億円位らしい(商社??)のだが、たまったものではない。それに倒産になれば仕入自体が滞り、事実上営業不能になる。また、依然として三井住友は統合をあきらめていないようだし、まさに逃げ道はなくなっている。頭取が給料を全額返済して、行員のボーナスを10万円にするという厳しすぎる発表は、何か別の問題があるのではないかとも疑ってしまう。


つまり、いくつかの問題の根元は、ダイエーのスーパー事業にあるわけで、スーパーの問題をまず中心的に考えてみる。

ダイエーの問題をとらえるため、イトーヨーカ堂とイオンの3社を昨年度決算で比べてみた。売上げ規模は似たようなものだ。2兆円前後。まず、一見してわかるのは、自己資本比率だ。驚くほど違う。ダイエー4%、イオン31%、ヨーカ堂69%。要するにアリとキリギリスである。方や、銀行まで始めた。かたや1兆円をはるかに超える借金地獄だ。次にすごいのは、所有している土地である。ダイエー4,570億円、イオン2,471億円、ヨーカ堂1,569億円。この4,570億円が減損会計だと、一気に激落するのだろう。そうすると自動的に資産が減り、自己資本比率はマイナス(債務超過)になる。
また、ダイエーの特殊事情を垣間見ることができるのは、短期借入が1兆1,303億円もあるのと短期貸付が2,668億円もあることだ(誰に貸しているのだろう?)。長期借入れは3,200億だけなので、要するに自転車操業になっていて月平均1000億円の返済期日がきていて、それに利子をつけてさらに短期借入れでつないでいる。サラ金そのものである。銀行が貸し付けをやめれば、即死だ。しかし社長が銀行の言うことをきかないのは「やけっぱち」ということだろう。

一方利益率は、3社とも同じくらいで、粗利は25-27%で、経常利益は、そろって売上高の1-2%しかない。スーパーが儲かる時代は20世紀で終わったのかもしれない。そのため、スーパー事業を引き受ける人の算出する事業価値はかなり低い(1000億円以下500億円超)のではないだろうか。また、連結子会社では外食チェーンが多く単体でも存続可能かもしれないが、目玉のローソンは既に売却済みだ。残る問題はスーパーの底地とスーパー周辺部に確保した土地資産だが、これは時価にしかならない。変な話だが、目黒区のダイエー碑文谷店など、人それぞれの評価が出るのであろうが、綜合スーパーをやめてマンションにするのだろうか?分譲マンションなら、建てて売って終わりである。
結局、次々に再建仕掛け人が現れるが、味見だけしていなくなるハイエナやコンドルのようなものである。

次に球団の問題だが、スーパー問題が片付かないと前に進まないのだが、王監督だけは、辞めるタイミングを見計らっているのではないかと想像する。振り回されているだけだから嫌になるだろう。しかし賢明な彼のことだから、言い出すタイミングを熟考しているのではないだろうか。今、辞任を言い出すと、ダイエー破綻の原因に挙げられそうだ。それと、ナベツネより先には辞めたくないと思っているかもしれないし・・・

次にUFJ銀行の問題だが、先日、銀行員が多いある会合で飲んでいると、UFJの行員が東京三菱、三井住友の行員から情報を仕入れていた。要するに「どっちの水が甘いか」ということ。彼の入手した情報では、「三井住友は激辛」、「東京三菱は中辛」ということらしい。アーメン。
こういう話も聞こえてきた。UFJ銀行の不良債権にばかり目が向いているが、UFJ信託銀行だって問題はあり、「ひびの入ったパンドラの卵」らしい。卵の中から出てくるのは、白鳥ではなく、カラスの死体らしい。

もともとUFJということば自体は何語だったのだろう?半年ほど前、私は中国の企業とスポットでビジネスを行ったのだが、前金の受け入れ口座としてUFJのある支店を指定したところ、中国銀行の香港支店から、「UFJ Bankの英語名を教えてほしい」と言われてビックリしてしまった。海外では無名だったのだ。それともUFJというのは日本語?ウッフジーとか読むのかな。