贋作「さくらんぼグミ」と贋作「森伊蔵」の差は

2004-10-06 16:47:09 | 市民A
6aaafa90.jpg二つの贋作事件があった。事件の内容はあざらしサラダさんの10月04日景品表示法違反(優良誤認)と詐欺の違いとは?でも取り上げられている。まず「さくらんぼグミ」の方は、山形県のお土産品店で売られていた”さくらんぼ果汁100%使用”の「さくらんぼグミ」に”リンゴ果汁”が使われていたという事件である。次に「森伊蔵」である。最近の芋焼酎ブームで3,000円台のメーカー価格が、ネットオークション市場では25,000円程度につりあがっているのに目をつけ、偽造ラベルを別の焼酎に貼りかえて出品し、160万円程度を売上げた事件である。

あざらしサラダさんも疑問に思われておられるが、さくらんぼグミ事件に対しては公取が排除勧告を出したのにとどまり、森伊蔵事件は刑事事件として詐欺罪が適用され、一審では懲役2年8ヶ月執行猶予4年の判決が下された。この差はなんだろう。少し考えてみた。もちろん事件なんてマスコミで報道される部分は一部だけだし、捜査だって完璧かどうかわからないので、すべて憶測を含むことになるが・・・

まず、厳密に考えると、グミ事件の場合、景品表示法違反(優良誤認)で排除勧告を受けたのだが、だからといって詐欺罪を免れたことにはならないのだが、たぶんこれで終わりだろう。公取と検察の縄張りがあるのだろうから。

次に被疑者の比較だが、グミ事件は大会社が登場。店頭上場企業「タカチホ(卸売り)社」と「札幌グルメフーズ社(メーカー)」。タカチホの売上は年間120億円もあり、長野県の本社以外に8道県に営業所をかまえている。お土産品卸の大手のようだ。一方、森伊蔵事件はほとんど個人の犯罪。
まず、森伊蔵事件の方を見ると、ネット犯罪という側面がある。ネットオークションを使っている人にとってはニセモノの横行は大問題だ。また、わざわざラベルの張替えなど行っているわけで、計画的悪意を感じる。背景には、「25,000円も払えばすぐには飲まないだろう」とか「本物の森伊蔵と飲み比べて差を調べることはないだろう」とか「本当は細かな味の差はわからないだろう」という心理が働いたと思われる。さらに飲んだあとでは証拠は残らない。同じような事件は大手スーパーでの「松坂牛」のすり替え事件があったのだが、これは日頃松坂牛を食べ慣れていた顧客が見破ってしまった。そして、実際、事件が発覚したのは偽造ラベルの質感が違うことからだったらしい。つまり、森伊蔵事件はネット詐欺としての性格が強く、発見した顧客から警察へ訴えられたものと思える。

次にグミ事件だが、こちらはやっかいだ。まず、リンゴ果汁だが、使用理由は「さくらんぼ果汁よりおいしいから」と言っているらしい。ちょっと筋違いだろう。それなら「果汁の表示」をしなければまったく問題はなかったはずだ。やはり、製造原価を下げたいための偽装表示だろう。実はもともと箱の裏側には原材料名として”リンゴ”と明示されていて、「さくらんぼ果汁」との表示の不一致を指摘されていたそうだ。それが今年1月の時点。その後さくらんぼの文字を消さずにリンゴの文字の方を消したわけだ。確信的である。

しかし、グミ事件の特殊性は、「安価なお土産品」ということかもしれない。佐藤錦1箱1万円のニセモノなら森伊蔵事件と同様になる。が、グミという商品自体、かなり本物から離れた商品である。1箱350円くらい。それでも25,000個を卸していたらしい。8百万円。お土産品を旅行や出張先で買う人というのは、実際には値段で選ぶのではないだろうか。本来は贈り物に必要なものは「気持ち」であり、あるカード会社のCMでも「(カードで)買えないものは、気持ちだけ」とは言っているが、さくらんぼグミにはあまり気持ちはこもらないのではないだろうか。もちろん、もらった人もあまり心からうれしいとは思わないがちょっとうれしい。つまり、ユーザー側の被害者が特定されにくいわけだ。グミの中身がリンゴであっても、烈火のごとく怒る人はいない。

もちろん、ユーザーの被害が小さいからといって不正表示がいいわけないし、さくらんぼグミだけの話かどうかもわからない。もしも「リンゴグミ」なる商品があったとして、同じものを違う箱に詰めていたら、森伊蔵事件とほぼ類似と言える。ユーザーにわからないからと思って、不当表示する考え方は「悪魔的行為」という範疇だ。また信用を失った者に到来するものは、厳しい経営危機という「本物の悪魔」であるということを忘れてはならない。裁判所よりもこわいはずだ。