三重県木本で虐殺された朝鮮人労働者の追悼碑を建立する会と紀州鉱山の真実を明らかにする会

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国民国家日本のアイヌモシリ植民地化と朝鮮植民地化 7

2013年12月24日 | 個人史・地域史・世界史
■三 アイヌモシリ植民地化の数年後から
 一八七四年はじめ、日本政府地誌課は、「皇国全図」をつくった。それには、「北海諸州」と「琉球群島」も「皇国」の領域にふくめられていた(註15)。この年五~六月に、日本政府は「台湾蕃地処分」と称して日本軍を台湾に侵入させた。台湾原住民族は武装してたたかった(註16)。
 その翌年、アイヌモシリ植民地化の六年後、一八七五年九月に日本軍が、朝鮮の永宗島に侵入した。その四月前の五月に日本政府とロシア政府は「千島樺太交換条約」を締結し、アイヌモシリのこの地域を分割しあっていた(註17)。この条約に調印したのは榎本武揚であった。榎本は、「幕府軍」の指揮官として、一八六八年に「維新政府」軍に降伏して監禁され、釈放されたあと「維新政府」の官僚(調印時「開拓使」の四等官)になっていた。
 一八七六年二月、日本政府は江華島海域で軍事的威嚇をおこないつつ、朝鮮政府に不平等条約(「日朝修好条約」)を調印させた。日本の全権代表として調印した黒田清隆は、このとき「開拓使」の長官であった。朝鮮侵略条約に日本を代表して調印したのは、アイヌモシリ侵略機関の最高位官僚だった(註18)。
 その三年後、一八七九年に日本政府は「琉球処分」と称してウチナーを植民地とした。竹橋烽起の翌年だった。
 徴兵令施行五年半後、一八七八年八月二三日深夜、東京の竹橋に駐屯していた近衛砲兵大隊の農民兵士二〇〇人あまりが烽起し、天皇が住んでいた赤坂離宮に向かった。だが、数時間後に敗北した。その二か月たらずのちの一〇月一五日、日本政府は、烽起に参加した五三人を銃殺し、さらに翌年四月に二人を処刑した。殺された反乱兵士の年齢は、ほとんどが二〇歳代前半であった(註19)。
 一八九四年七月二三日、日本軍が朝鮮王宮を占領した。この時の日本公使大鳥圭介は、「箱館戦争」のとき榎本武揚グループの一員で、逮捕拘禁ののち、榎本釈放のすこしまえに釈放され、「開拓使」の官僚になっていた。大鳥はこの年七月一〇日、朝鮮政府に、「内政改革方案綱目」をだしている。その二〇日たらず後に軍国機務処がつくられた。
 「日清戦争」に勝利したあと、一八九五年六月、日本侵略軍が台湾に上陸した。このときから、台湾の漢族と先住民族は持久的に武装して抗日闘争を戦いつづけた(註20)。 
 この年、日本公使三浦梧楼(日本陸軍中将)を首謀者とする日本人集団が朝鮮王宮に侵入し、王の妻(「閔妃」)や宮内大臣らを虐殺した。その実行部隊長は、竹橋烽起のさいの裏切者岡本柳之助だった(註21)。兪吉濬(一八八一年に日本の慶応義塾に入学)は、「閔妃」虐殺後、その暗殺者が誰であるかを知りつつ、新親日派政権の内務大臣になった。

註15 『東京日日新聞』一八七四年一月七日。
註16 このときの台湾侵略軍の指揮官西郷従道は、一八八二年一月一一日に「開拓使」の長
  官となった。この年二月八日に、北海道は三つの県(函館県、札幌県、根室県)に分割さ
  れ、「開拓使」は廃止された。
註17 松本茂美は「北海道はもちろん、全千島はアイヌモシリ(アイヌの島)であった」とのべ
  ている(「アイヌと北方領土」、佐藤和彦ら三人編『地図でたどる日本史』東京堂、一九九
  五年、三八頁)。このように明快に事実をのべている日本人歴史研究者はすくない。
   森岡武雄は一冊の本のなかで、あるところでは「千島列島は歴史的にも国際法的にも日
  本の固有の領土である」と言い、べつのところでは「北海道は……アイヌの人たちが、自然
  と調和しながら自由に暮らして来た大地であった」と言っている(森岡武雄「千島全島が固
  有の領土」、桑原真人ら六人編『北海道の歴史 60話』三省堂、一九九六年、二五二頁、
  およびi頁)。「千島全島」においても北方諸民族が「自然と調和しながら自由に暮らして来
  た」という歴史的事実を認識するなら、アイヌモシリの一部であるこの地域を「日本の固
  有の領土」であると主張して国民国家日本のアイヌモシリ侵略の固定化に加担するのを、
  森岡は、やめるだろう。
註18、20 キ ムチョンミ『故郷の世界史――解放のインターナショナリズムへ――』の第一章「東
   アジアにおけるインターナショナリズムの歴史」、現代」企画室、一九九六年、参照)。
註19、21 竹橋事件百周年記念出版編集委員会編『竹橋事件の兵士たち』現代史出版会、一
    九七九年、参照。
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