樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

コントラバス

2009年12月10日 | 木と楽器
日本最大の楽器メーカー・ヤマハはバイオリンとビオラとチェロは製作していますが、コントラバスは作っていません。そのトップメーカーは、意外にも宇治市にあります。
以前から製造現場を見学したいと思っていたところ、仕事場にお邪魔しなくても見られる機会ができました。ヒガシ弦楽器製作所の代表者・東澄雄さんが宇治市の技能功労者として表彰され、その会場で実演されるというので見に行ってきました。



大きなコントラバスの裏板を足で抱え、小さな鉋で削っておられる姿はいかにも職人。部分によって4~5ミリから8~9ミリの厚さに削り分けるそうです。
ベニヤ合板による30万円くらいのものから、100万円以上の本格的なものまで、6人の職人さんで月に30台~40台生産されるとか。


(100万円クラスの本格派)

木材マニアとしては材質が気になるところで、バイオリンと同じく、表板はドイツトウヒ(スプルース)、裏板と側板はイタヤカエデ、指板はコクタンだろうと予想していました。しかし、東さんに尋ねると、表板はアラスカ産のスプルースとのこと。ヨーロッパにはコントラバスに使えるだけの大きなスプルースがないそうです。


(表板はアラスカ産スプルース)

裏板や側板、ネックは普通のカエデ。イタヤカエデは硬過ぎるそうで、何カエデかまでは分かりませんが、日本産のカエデということですから北海道あたりに自生する大径木のカエデでしょう。指板のコクタンはバイオリンと同じ。
よく似た楽器なのに、大きさが違うために使用する木材も微妙に異なることが新たな発見でした。


(東さんの道具)

実際に弾いて音を披露された息子さんに素朴な疑問をぶつけたところ、クラシックで使うコントラバスとジャズで使うウッドベースは全く同じとのこと。一方は弓で、一方は指で弾くので、プレーヤーの調整方法は違うそうです。


(バイオリンのルーツ、ビオラダガンバも製造されています)

当日、技能功労者として表彰されたのは17人。宇治ですから製茶はもちろん、左官、造園、大工、理美容など職種もさまざま。その中でも 楽器製造というのは珍しい職種です。
ヒガシ弦楽器製作所のwebサイトはこちら
コメント (12)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする