樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

鹿退治

2009年12月21日 | 森林保護
鳥と樹を観察するために通っている「栃の森」では近年シカが増え、その食害によって下層植生(=薮)が消滅しつつあります。約15年間野鳥の調査を続けていますが、薮で繁殖する鳥は10年ほど前から激減しました。ウグイスにいたっては、以前は記録するのが面倒なほど出現したのに現在はゼロ。


(地面近くの植生は壊滅状態)

ここを研究林にしている京都大学は、シカの食害が生態系に及ぼす影響を検証するため大規模な調査を行っています。先日、その中間報告会が開催されたので友人と2人で聴講してきました。
さすが京大、シカの食害と植物の関係のみならず水質や水生昆虫、アリへの影響など研究発表は7件。シカが草や幼木を食べる→土壌が弱る→雨で土が流出する→水質が変わる→水生昆虫が変わるという複合的な自然改変が進んでいるようです。


(異様に増えているオオバアサガラ)

私の興味は樹木との関係。以前も書きましたが、いろんな幼木が食べられる反面、オオバアサガラやテツカエデなど特定の樹木はやたらに増えています。「鹿が好む樹と嫌う樹があるからだろう」という推測を確かめるために質問すると、「スギや常緑樹は食べない。オオバアサガラの葉には有毒物質サポニンが含まれている」とのこと。しかし、それ以上の傾向は不明のようです。
そう言えば、以前ご紹介した森の牧場でも牛はスギやヒノキ、ツバキは食べないと言っていました。


(シカが食べないテツカエデの葉)

しかし、同じ針葉樹でもハイイヌガヤは食べ尽くされてほぼ壊滅状態。舌にチクチク刺さるはずなのに、ハイイヌガヤは食べてスギは食べないのはなぜか。テツカエデを食べないのはなぜか。疑問は残ったままです。
この鹿の肉を商品として流通させ、経済効果によって鹿を減らそうという試みが行われています。その一つが、地元の猟師と京都大学が協力して商品化した「鹿カレー」。さらに、京大のレストランでは「鹿肉フェア」を開催し、カツレツとキーマカレーをメニューにしています。


(鹿肉を使ったレトルトカレー、1個700円)

鹿の報告会に参加する前に鹿を食べておこうと、友人と2人で入店。カツレツは売り切れなのでキーマカレーをいただき、帰りにはレトルトカレーを8個買い占めて鹿退治してきました。
アメリカでヘラジカを食べたことはありますが、ニホンジカは初めて。レトルトカレーは肉片を鼻先で嗅ぐと牛肉とは違う匂いがしますが、口に入れるとカレーの香辛料でクセが消え、普通の肉としておいしく食べられました。キーマカレーは、ちょっと期待はずれ。


(鹿肉と豆のキーマカレー、714円)

なお、シカが増えて食害が広がるのも自然の推移で、人為的に駆除するべきではないという意見もあります。
コメント (4)
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