樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

カップの樽酒

2007年03月05日 | 木と飲食
前回に続いて、「杉と酒」の話。
以前、テレビで杉の木片をセットしたカップ酒があるというニュースを見ました。薄い杉のシートをカップ酒に浸して、樽酒のような香りをつけて飲むというユニークな日本酒です。
飲んでみたかったのですが、関西では入手できないので、「北の錦」という北海道の蔵元に直接注文して送ってもらいました。

      

箱の中には普通のカップ酒と杉のシートが入っています。説明書によると「日本酒が世界に誇る『たる酒』を気軽に楽しんでいただきたいと秋田の酒樽屋と北海道の造り酒屋が二人三脚で商品化しました」。シートの袋には「酒樽用秋田杉」と書いてあります。
この杉のシートを丸めてカップの中に入れ、10分以上おくと木の香りが出てくるそうです。私は比較するために、杉のシートを入れる前にひと口飲み、セット後20分くらいしてからいただきました。
シートを入れる前はどちらかというと辛口のお酒でしたが、シートを入れた後は木の甘い香りがほのかに漂って樽酒の風味がしました。

         

以前、「樽と桶はどう違う?」で「日本酒の樽には杉の板目を使う」と書きましたが、樽酒は杉の木香(きが)が移るので美味しく感じます。昔は樽の中にわざわざ杉の切れ端を入れたこともあったようです。
この「自分でつくる樽酒カップ」は1個483円。関西だと送料が1,560円かかりますが、お酒の好きな方はぜひ一度トライしてみてください。私は嫌いな方じゃないので4個注文しました。
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酒と杉

2007年03月02日 | 木と飲食
私が住む宇治市は京都市伏見区に接しており、近くには「伏見の酒」をつくる蔵が建ち並んでいます。そこを歩くと、あちこちに蜂の巣のような丸い物体がぶら下がっています。大きさはサッカーボールくらい。杉の枝を束ねて球形にしたもので、「杉玉」と言います。

      
      (伏見の酒蔵にはあちこちに杉玉がぶら下がっています)

この杉玉の由来にはいくつかの説があって、一つは「新酒ができましたよ」という目印にしたという説。緑の葉が茶色く変色する具合を見て、熟成された飲み頃を判断したそうです。なぜ杉なのかについて、「杉材を樽に使った後、枝や葉が残るので杉玉に使った」という話をどこかで読みました。
もう一つの説は、酒の神様を祀る大神神社(奈良県桜井市三輪)のご神体が杉だからという説。その杉の枝をいただいて軒に吊るし、良い酒ができることを祈願したのだそうです。

      
      (酒蔵の板壁も杉材。街には酒の匂いが漂っています。)

いずれにしても、現在は酒屋の看板として常時吊るされていることも多いようです。杉の樽に詰めたり、酒蔵に杉玉を吊るしたり、日本酒と杉はなぜか因縁が深いです。
ちなみに、私たちが目にする杉は日本の固有種で、スギ科スギ属の1属1種。外国には以前ご紹介したメタセコイヤなど別の属のスギ科の樹がありますが、日本にあるスギ科の樹はこの1種類のみ。秋田杉とか北山杉というのはあくまでも産地名であって、植物学的には同じ種類です。
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