梶井基次郎の『檸檬』で知られる書店「丸善京都本店」が昨年8月、約10年ぶりに復活しました。以来、何度か足を運んでいますが、先日訪れた際に野鳥コーナーに行くと興味深い新刊が並んでいたので衝動買いしました。
今はなるべく本は買わないで図書館で借りるようにしていて、年末には蔵書の5分の1ほどを処分して「本棚がスッキリした」と喜んでいたのですが、目の前に面白そうな本があるとつい買ってしまいます。
タイトルは『鳥たちの博物誌』。当ブログのテーマである野鳥の雑学が満載されています。著者はイギリスのバードウォッチャー兼ジャーナリスト、デイビッド・ターナー。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/48/826ea8fdda76f6ff6050b37a73bf3cfe.jpg)
内容もさることながら、イギリス人ならではの視点が面白かった。例えば、日本の図鑑について、以下のように書いています。
わたしの持っている古ぼけた野外携帯用日本の鳥類ガイドブックには、もう野外に存在しない種まで採り上げるという、いささかげんなりさせられるような突拍子もない習慣がある。(ミヤコショウビンについての説明文を引用し)そのあと、まさにこの期におよんでグサッと一突き、「現況=絶滅」とくる。
1887年に1羽採集されただけのミヤコショウビンを野外観察用の図鑑に掲載するのはバカげていると指摘しているのです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/50/b2/5492bf5a9e046f9f5b9596d6bec13336.jpg)
『フィールドガイド日本の野鳥』に掲載されているミヤコショウビン
また、トキについて、日本の保護政策によって少数が、中国の保護政策によって500羽が復活したことを紹介した後、以下のように書いています。
今度ばかりは了見の狭い国家主義が(そもそも中国人を行動に駆り立てたのはこれだった)すばらしい恵みをもたらした。ニッポニア・ニッポンは中国で繁殖している。これにより中国は、数世紀に及ぶライバルとの競り合いでささやかな勝利をおさめた。現在くり広げられている宣伝合戦の勝利もトキの存続を保証することになるだろう。
最後の一文は尖閣諸島を巡る日中の争いを指しているらしく、別のところでは日本のトキ保護政策を「日本政府の善意に満ちた茶番」とこき下ろしていますが、全体としては日本にも中国にも冷たい視線を注いでいます。
イギリスの評論にはこういうアイロニーが効いたものが多く、そこが魅力でもあるのですが、その奥には大英帝国の栄光から来る傲慢とアジア蔑視があると私は見ています。
トキについて日中双方を皮肉っているので、アジア人を代表して反撃を加えておきます。
中国にも日本にも生息するトキにNipponia nipponなどと日本固有種のような学名を付けて混乱させ、中国がトキを国鳥に選べないようにしたのは、あなたの国の動物学者ジョン・エドワード・グレイですよ!
今はなるべく本は買わないで図書館で借りるようにしていて、年末には蔵書の5分の1ほどを処分して「本棚がスッキリした」と喜んでいたのですが、目の前に面白そうな本があるとつい買ってしまいます。
タイトルは『鳥たちの博物誌』。当ブログのテーマである野鳥の雑学が満載されています。著者はイギリスのバードウォッチャー兼ジャーナリスト、デイビッド・ターナー。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/48/826ea8fdda76f6ff6050b37a73bf3cfe.jpg)
内容もさることながら、イギリス人ならではの視点が面白かった。例えば、日本の図鑑について、以下のように書いています。
わたしの持っている古ぼけた野外携帯用日本の鳥類ガイドブックには、もう野外に存在しない種まで採り上げるという、いささかげんなりさせられるような突拍子もない習慣がある。(ミヤコショウビンについての説明文を引用し)そのあと、まさにこの期におよんでグサッと一突き、「現況=絶滅」とくる。
1887年に1羽採集されただけのミヤコショウビンを野外観察用の図鑑に掲載するのはバカげていると指摘しているのです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/50/b2/5492bf5a9e046f9f5b9596d6bec13336.jpg)
『フィールドガイド日本の野鳥』に掲載されているミヤコショウビン
また、トキについて、日本の保護政策によって少数が、中国の保護政策によって500羽が復活したことを紹介した後、以下のように書いています。
今度ばかりは了見の狭い国家主義が(そもそも中国人を行動に駆り立てたのはこれだった)すばらしい恵みをもたらした。ニッポニア・ニッポンは中国で繁殖している。これにより中国は、数世紀に及ぶライバルとの競り合いでささやかな勝利をおさめた。現在くり広げられている宣伝合戦の勝利もトキの存続を保証することになるだろう。
最後の一文は尖閣諸島を巡る日中の争いを指しているらしく、別のところでは日本のトキ保護政策を「日本政府の善意に満ちた茶番」とこき下ろしていますが、全体としては日本にも中国にも冷たい視線を注いでいます。
イギリスの評論にはこういうアイロニーが効いたものが多く、そこが魅力でもあるのですが、その奥には大英帝国の栄光から来る傲慢とアジア蔑視があると私は見ています。
トキについて日中双方を皮肉っているので、アジア人を代表して反撃を加えておきます。
中国にも日本にも生息するトキにNipponia nipponなどと日本固有種のような学名を付けて混乱させ、中国がトキを国鳥に選べないようにしたのは、あなたの国の動物学者ジョン・エドワード・グレイですよ!
この本は面白そうですね。
最近は買いすぎると困るので(鳥のものに限らず)、本当に必要で買う物がある時以外は書店に行かないようにしています・・・(笑)。
ところで「ミヤコショウビン」って私は二十歳になる頃までずっと岩手県の「宮古」のことだと勘違いして覚えていました。
飛び地でも島でもなんでもないところでただ一度だけ採取された鳥がいたなんて、と勝手な妄想を抱いていたものです。
しかし、実は沖縄の宮古島だと知り、それであれば島だし南の方から飛んで来たりという可能性は岩手県よりは高そうだと納得したのでした(笑)。
読んでいると「ヘェ~、そうなんだ」と思えることがたくさんあります。
そのうちにブログでもご紹介しますが、海外での鳥の声の「聞きなし」もいろいろあるんですね。
ミヤコショウビンなど絶滅種を野外用の図鑑に掲載するのは意味がない、という指摘は「なるほど」と思いました。