樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

ウクライナの野鳥

2022年06月02日 | 野鳥
毎日テレビでウクライナの戦争シーンを見ていると、現地の人の生活や命はもちろん、「環境や野鳥にもダメージが広がっているのではないだろうか」とか「どんな鳥がいるのだろう」と気になります。そこで、ウクライナの野鳥について少し調べてみました。
国土のほとんどが草原ですが、いくつかの川が注ぐ黒海沿岸には湿地が点在しており、草原地帯にはアネハヅルやノガンなどが、湿地帯にはペリカン、カモ、アジサシなどが生息し、シギなどの渡り鳥も飛来するようです。これまでに記録された鳥は約450種類。ただ、主要な生息地は激しい戦闘が続く南部に多いようです。



ヨーロッパの大河ドナウ川はウクライナとルーマニアの国境で広大な湿地を形成し、「ドナウデルタ」と呼ばれています。ユネスコの世界自然遺産と生物圏保護区に指定されており、300種の鳥類が確認され、何百万羽の鳥が繁殖に訪れるそうです。モモイロペリカンやニシハイイロペリカン、メジロガモ、サギ類などたくさんの水鳥のほか、オジロワシ、イナダヨシキリも生息しているとのこと。
ニュースによく登場するオデーサの東にはティリグリ河口が広がり、ここにもモモイロペリカンやイナダヨシキリなどが生息するそうです。


モモイロペリカン(画像:pixabay)

激戦地ヘルソン州にあるアスカニア・ノバ自然保護区では、原生状態の草原を保護しながら野生の馬など多くの動植物を研究しています。鳥類も多様で、アネハヅル、クロヅル、マガン、アオガン、アカツクシガモ、ウスハイイロチュウヒなどが生息し、IBA(重要野鳥生息地)に指定されています。
クリミア半島の東に伸びるのはケルチ半島。現在はロシアに併合されていますが、自然の草原と農耕地からなる緑地、いくつかの湖や山など多様な自然環境が形成されています。野鳥も豊富で、草原地帯にはノガン、アネハヅル、セグロサバクヒタキ、イナバヒタキなどが、山や湖のある地域にはチュウヒワシ、ニシオオノスリ、バライロムクドリなどが生息しているそうです。


アネハヅル(画像:pixabay)

歴史のあるアスカニア・ノバ自然保護区は2つの世界大戦で荒廃しました。1983年にようやく再編されましたが、今回も激戦地になっているので再び荒廃するのではないかと心配されます。
ただ、世界の鳥を記録するウェブサイト「eBird」でウクライナのページをを見ると、戦争の最中でも投稿されており、バードウォッチャーが健在であることが分かります。また、ウクライナ野鳥保護協会(USPB)が活動しているようです。現地のバードウォッチャーに期待しましょう。


USPBのホームページ(写真はクロライチョウ)
コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« イソヒヨドリの巣立ち | トップ | 自然観察会 »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (kazuyoo60)
2022-06-02 15:42:03
鳥たちは危険を察して逃げたと思いますが、建物も設備も全破壊でしょう。拷問後に殺害の情報もです。人の命と尊厳を何と心得ているのやらです。
人命もですし、鳥の命も減らないようにと願います。
返信する
kazuyoo60様 (fagus06)
2022-06-02 19:51:22
内戦が続いたスリランカでは、戦闘があった地域の鳥は、人間から逃げ出す距離が長くなっていたそうです。自然が破壊されたことと、兵士が食料として鳥を撃つので、警戒する距離が伸びたとのこと。
戦争はいろんな悲劇をもたらします。
返信する

コメントを投稿

野鳥」カテゴリの最新記事