樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

鴨川の千鳥

2018年03月01日 | 野鳥
京都・鴨川沿いの先斗町(ぽんとちょう)を歩くと、写真のような提灯が目につきます。描かれているのは千鳥。先斗町のシンボルマークであり、「都をどり」のマークにもなっています。



また、三条大橋の東にあるお酢の老舗・村山造酢の商標は「千鳥酢」。同社のウェブサイトによると、「鴨川や 清き流れに 千鳥すむ」という詠み人知らずの古歌から名づけたとのこと。
さらに、三橋美智也が歌った『あゝ新選組』という歌は「加茂の河原に千鳥が騒ぐ…」という詞で始まります。つまり、昔は「鴨川=千鳥」というイメージが成立していたわけです。
バードウオッチャーとしては、その千鳥がコチドリなのかイカルチドリなのかが気になります。季節や場所によって違うでしょうが、私が探鳥会やその下見で観察した限りでは、イカルチドリが圧倒的に多いです。下の映像は、鴨川ではなく宇治川のイカルチドリ。



いずれにしても、現在は一般の人々が「鴨川=千鳥」というイメージを抱くほどチドリと接する機会はありません。バードウオッチャーでさえ、「千鳥が騒ぐ」ほどの群れに遭遇することはありません。昔は多かったけれど、今は少なくなったということでしょうか。
その疑問の答らしきものを、木屋町三条下ルにある瑞泉寺で見つけました。豊臣秀次の墓所として知られるこのお寺の境内に、「千鳥碑」という石碑があり、次のように刻まれています。



「鴨川流域に棲息し清楚な姿と可憐な声は遊子都人に愛され、詩歌に俳諧に、又、画材ともなって名鳥の聞こえが高かったが、近来都塵に絶えて見ることを得なくなった」。
やはり、往時はたくさんのイカルチドリだかコチドリがいたわけです。碑文はさらに次のように続きます。
「ここ先斗町はその形を紋章とし鴨川をどりのマークに名残りを止めている。今秋鴨川をどり百回記念の事業として先斗町歌舞会に依って由縁のこの地に千鳥の碑を建立し永く鳥の雅名と情緒を伝えることになった。幸いに鴨涯散歩のせつ一瞥して鴨川千鳥の風流を偲ばれんことを」
昭和42年に揮毫(きごう)されたこの碑文は「鴨川の千鳥はすでに絶滅した」という認識で書かれているのです。
つまり、一般の人々にとってはすでに絶滅したと思えるほど数が減少したということです。逆に言えば、昔は鳥に関心がない人々さえ気づくほどたくさんのイカルチドリやコチドリが生息していたということですね。
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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (kazuyoo60)
2018-03-01 08:40:40
夜半から今も奈良は風が強いです。チドリって可愛い鳥ですね。チドリの碑、立派な石です。
あなた様だから気付かれたのでしょう。出会われて良かったです。
あの日に、RSSに登録したのです。
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チドリ (なつみかん)
2018-03-01 21:42:22
こんばんは!
いつも楽しく拝見しています。
先斗町の提灯の鳥がチドリというのは知りませんでした。
イカルチドリはちょうど一年前の今頃、宇治川で見たことがあります。
そのときには名前が分からず、あとで首のわっかで名前が分かりました。
チドリの仲間、好きなのですが、確かに出会うことは少ないですね。

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kazuyo様 (fagus06)
2018-03-02 08:43:24
コメントありがとうございます。また、登録していただきありがとうございます。
お花や食品をいろいろいただいて、ありがとうございました。
早速お餅もいただきました。また、2人でおじゃましますね。
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なつみかん様 (fagus06)
2018-03-02 08:48:43
コメントありがとうございます。
そうですか、宇治川でイカルチドリをご覧になったのですね。小さい鳥で、中州の石と同じような色なので見つけにくいです。
でも、見ているとかわいいです。
先斗町にはチドリをモチーフにしたスイーツを販売している店もあります。
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