樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

日本最古の野鳥図鑑

2020年06月11日 | 野鳥
現在、野鳥図鑑の歴史を調べています。日本で最も古い図鑑は『訓蒙図彙(きんもうずい)』という書物のようです。1666年(寛文6年)に京都の学者・中村惕斎(てきさい)が著した、図鑑というよりも百科事典。鳥だけでなく、植物や動物、人体、道具、衣服など約1500項目を図入りで解説しています。
この中の「禽鳥」の部で72種類の鳥を図とともに説明しています。下の写真の右上から左下へ順に、ウミウ、マナヅル、オシドリ、カイツブリ、ツル(タンチョウ)、コウノトリ、タカ、ワシ。



面白いことに、最初に登場するのは鳳凰。そして、コウモリも掲載されています。当時はコウモリも鳥と認識されていたわけです。
『訓蒙図彙(きんもうずい)』が発行されてから約50年後、今度は『和漢三才図絵(わかんさんさいずえ)』が編集されます。同じく図入りの百科事典で、天文、生物、人物、道具、衣服などあらゆるジャンルの事物を図入りで説明した105巻81冊に及ぶ大著。編集したのは大阪の医師・寺島良安。
鳥は水禽、原禽、林禽、山禽の4つに分けて約160種類を掲載しており、それとは別に、雌雄、巣、卵など20項目の用語も解説しています。下の写真は、右から白鶴子(だいさぎ)、蒼鷺(あおさぎ)、朱鷺(とき)、箆鷺(へらさぎ)。



例えば、朱鷺については以下のように解説しています。「東北の海辺に多くいる。鷺に似ていて冠毛はなく紅を帯びている。羽軸は最も紅い。嘴は黒く長くて末は曲がり、頬にも紅色がある。脚は赤く翅は淡朱鷺色を帯びた白色。高く飛び、樹に巣くい水に宿る。肉は生臭さがある」。
当時は野鳥も食糧だったので、必ずといっていいほど、肉の味についてのコメントがあります。中には料理法や薬効を書いたものもあります。
この『和漢三才図絵』は前述の『訓蒙図彙』の図を模写している場合が多く、上のウミウ、マナヅル、カイツブリ、コウノトリはそっくりそのまま登場します。当時は著作権という概念がなく、日本画でも他の作品を模写することが当たり前だったので、不思議ではありません。
『和漢三才図絵』の後、博物学がブームになったこともあって、さまざまな野鳥図鑑が編さんされます。美しい鳥がたくさん色刷りで描かれていて、なかなか魅力的で、そちらもいろいろ調べています。
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4 コメント

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Unknown (kazuyoo60)
2020-06-11 10:15:55
カメラもなく目の前にいるでもなく、細密に描く能力は凄いです。目の前にあっても形にならない私です。
トキも食用にされていましたか。ツルは奈良時代の饗宴で出されていたようです。印刷技術も素晴らしいですよね。
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kazuyo様 (fagus06)
2020-06-12 08:29:38
トキも昔はたくさんいたということでしょうね。ツルは、昔から高級食材として使われてきたようです。
近づいたら逃げる鳥を、画家たちはどうやって描いたのか、というところも気になりますね。それも調べてみようと思っています。
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Unknown (guitarbird)
2020-06-14 17:02:39
こんにちは
野鳥観察会で食べる話をするとやっぱり食いつきますね。
私は野鳥は食べたことはないのですが(多分完全な野生の鳥は一度もない)、身の回りにいる鳥ではツグミとヤマシギがおいしいらしいと、鳥の師匠から聞きました。
さらにその師匠は、知り合いの有名な野鳥研究者の方が、学生時代、日本では北海道にしかいない「シ●●●●●」を食べたことがある、という恐ろしいお話もしてくれました(笑)。
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guitarbirdさんへ (fagus06)
2020-06-18 09:42:48
ヤマシギはフランスでは高級ジビエ料理ですね。ツグミは京都の伏見稲荷で焼き鳥にして売っていました。輸入ものでしたが…。
私は子供の頃、スズメを食べたことがありますが、おいしいという記憶はないです。また、若い頃には焼き鳥専門の店でキジを食べたこともあります。
シ●●●●●は衝撃ですね。おいしいのでしょうか。魚食性なので生臭そうですね。
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