樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

栗の板で葺いた国宝

2008年11月03日 | 木造建築
神社など日本の伝統建築の屋根はほとんどがヒノキの樹皮を使った檜皮(ひわだ)葺き、または板を使った杮(こけら)葺きです。同じ字に見えますが、「杮」は「カキ」ではなく「板」を意味します。
杮(こけら)葺きには普通、サワラ、スギ、ヒノキなどを使いますが、クリの板を使った珍しいお寺があるというので行ってきました。
京都府北部の綾部市の山中にある光明寺。帰省する際、少し遠回りして寄ってきました。このお寺の仁王門はクリの杮葺きで、国宝に指定されています。京都府には国宝がたくさんありますが、府内で最も北に位置する国宝だそうです。

       
                (クリの杮葺きの光明寺仁王門)
       
                (近所の宇治神社は檜皮葺き)

何度かご紹介しましたが、クリは水や腐朽に強く、古代の掘っ立て小屋の柱に使われましたし、白川郷の合掌造りの家でも、台所など水周りにはクリが多用されています。だから、屋根にも使われたのでしょう。
とは言え、檜皮葺きよりも耐久性に劣り、20年~25年で葺き替えなければならないそうです。

       
          (光明寺仁王門の杮葺きはかなり痛んでいます)
       
          (宇治神社の檜皮葺きは去年葺き替えたばかり)

クリの杮葺きは出雲地方や山陰地方にわずかに残るのみで、現在は木材不足と後継者不足のダブルパンチで風前の灯だそうです。檜皮葺きも似たような状況で、屋根を葺く職人は結構いるものの、ヒノキの皮をはぐ職人がもう一人か二人しか残っていないそうです。
いつも思うことですが、こういう目立たない伝統技術が一つなくなると、神社仏閣や祭礼道具などの修理や復元ができなくなります。時代の流れととは言え、何とか残す方法はないものでしょうか。
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4 コメント

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どこだったか覚えてないんですが (scops)
2008-11-04 23:11:15
杮葺きの屋根を見たことがあります。(もちろん何の木だかはわかりませんが)
檜皮を確保するために、社寺林でヒノキを育てているところもあるようですね。清水寺も裏山でヒノキを育てていましたよ。
まだ檜皮がとれるような太さになっていないようでしたが、とれる頃には職人がいなくなっていたりして・・・。文化財の保護も大変ですね。

私事ですが、
いろいろあって忙しい日々を過ごしていたので、思いのほか長くブログを休んでしまいましたが、やっとのことで再開することにしました。またよろしくお願いします。
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清水寺のことは (fagus06)
2008-11-05 07:13:50
知りませんでしたが、有力寺院は修理や復元のための用材確保として敷地内でヒノキを育林しているようです。檜皮も確保できるからでしょうか。
檜皮は立木から、杉皮は伐採した木から採取するらしいので、ヒノキは成長し続けます。
ようやくブログ再開ですか。では、また閲覧させていただきます。
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杮落とし (guitarbird)
2008-11-05 08:19:19
なるほど、「杮落とし」とはきっとそこからきているんですね。
なんでカキなんだろうとずっと思っていました・・・
伝統技術を残すのはもう国か大きな財閥(って今は言わないのか)か、
財団で援助するより他ないのでしょうね。
そういうことを社会全体で考える国ではないようですが、この国は・・・
その辺のもどかしさは感じますね。
政府給付金なんてどうでもいいから、とか・・・(笑)。
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そうです (fagus06)
2008-11-06 08:33:48
「杮落とし」はカキではなく、こちらの意味です。
ただし、「板」という意味ではなく、この場合は「木屑」という意味のようです。
建物が完成すると最後に木屑を払って掃除して竣工となるので、竣工記念の公演などを「杮落とし」と呼ぶようになったようです。

伝統技術も残して欲しいですが、私は政府給付金も欲しいです(笑)。
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