樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

湿原の樹木

2013年05月20日 | 樹木
先日、いつもの仲間3人で毎年恒例の鳥見ツアーに行ってきました。今回は近場の福井県敦賀市にある湿原。鳥もさることながら、植物や昆虫など自然観察が目的です。
残念ながら1日目は雨でしたが、2日目は晴れ。池河内(いけのこうち)湿原でじっくりと鳥や樹木を観察してきました。


木道が整備された池河内湿原

湿原には下の写真のような実をつけた樹木がたくさん生えています。こういう実はハンノキ属特有ですが、京都周辺で見かけるハンノキ類(ヤシャブシやオオバヤシャブシ)とは様子が違います。


ハンノキ属特有の実(昨年の実が残った状態)

図鑑を持参しなかったので現地では同定できず、帰宅後に調べるとハンノキそのものでした。湿地を好んで自生する種類とのこと。しかも、根が水没していて酸素が吸収できないので、樹皮から吸収するそうです。
一般的に樹木は「二酸化炭素を吸収して酸素を排出する」と思われていますが、それは光合成を行う昼間だけで、夜は葉も酸素を吸収して二酸化炭素を排出します。また、根も土の中の酸素を吸収します。水没しているとそれができないので、樹皮から酸素を吸収するわけです。


酸素を吸収するハンノキの樹皮

湿原にはところどころにタチヤナギも生えていました。この樹もハンノキと同様、樹皮から酸素を吸収するメカニズムを持っているそうです。


タチヤナギ

そう言えば、ヌマスギやマングローブ(ヒルギの仲間)も湿地に生えますが、水面に気根を出します。水辺で生きる樹木は、水と酸素の両方を獲得するために、それぞれ独自のメカニズムを発達させたわけですね。
湿原の樹木にあらためて自然の不思議を感じました。
コメント (4)
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