樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

冬眠する鳥

2013年05月09日 | 野鳥
南の国から夏鳥が続々と渡ってきました。バーダーにとってはウキウキする季節。
昨年自分で探し当てた近くの夏鳥ポイントへ2週間前に様子を見に行ったときは声が聴こえなかったのですが、先週再び訪れたらオオルリ、キビタキ、クロツグミに加えて、早くもサンコウチョウが鳴いていました。
まずはオオルリのさえずりをお聴きください。



今でこそ、渡り鳥は繁殖と越冬のために何千キロも旅することは子どもでも知っていますが、昔の人々は夏鳥がなぜ冬になると姿を消すのか理解できなかったようです。
アリストテレスは『動物誌』の中で、「ある種の鳥は冬ごもりすることによって寒さを逃れる」と書いているそうです。夏鳥は冬眠するから姿が見えなくなると考えていたわけです。
さらに、「ある種の鳥は別の種類に変化するために冬の到来とともに姿を消す」とも書いているそうです。夏鳥は冬鳥に姿を変えると考えていたんですね。
キビタキが冬鳥に変身するとしたらジョウビタキかな?



賢明な哲学者でさえこんな荒唐無稽な推測をしていたわけですから、それだけ渡り鳥の習性が謎に包まれていたということでしょう。
16世紀にはある大司教が、漁師が海から網でツバメを引き揚げている絵を添えて、「ツバメは水中で冬を過ごす」と論文に掲載したため、以後19世紀初頭までそう信じられていたそうです。
水中で越冬することはあり得ませんが、冬眠する鳥が1種類だけいるそうです。ヨタカの仲間で、名前はプアウィル。


Common Poorwill(画像はパブリックドメイン)

北米からメキシコにかけて生息するこの鳥は、体温を6℃程度に低下させ、岩の割れ目で最長88日間眠っていたとのこと。その間、目に光を当てても反応がなく、鼻孔に鏡を当てても曇りがなく、聴診器を当てても心音が聞こえない状態にありながら、春になると飛び立ったそうです。
このヨタカに関する限り、アリストテレスの説は荒唐無稽ではなかったわけです。

コメント (2)
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