樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

あの世に渡る船

2009年02月27日 | 木と歴史
先日、名古屋市の病院建設予定地で約2000年前の木製の棺が発見されました。舟の形をしているそうです。
これまでの最古の舟形木棺は私の故郷の丹後で発見されたもので、約1800年前のもの。今回はそれを200年もさかのぼるうえに、ほぼ完全な形で発掘されました。
樹種の同定はこれからのようですが、『日本書紀』にスサノオがスギとクスノキは舟に使えと教えた記述もあり、テレビのニュースで見た印象からもスギだと思います。
棺を舟の形にするのはあの世に舟で渡るという意味があるからでしょうが、興味深いのは古代エジプトの遺跡からも船形の木棺が発見されていること。

       
                 (レバノンスギの板)

クフ王のピラミッドの周囲から「太陽の船」の一部が発見されています。その木片を鑑定したのが京都大学の宇治キャンパスにある樹木研究室で、樹種はレバノンスギでした。以前見学した際、その展示コーナーで撮影したサンプルが上の写真です。
「太陽の船」は棺というよりも、王が死後に旅するためのものらしいですが、死後に船に乗って旅するという発想は人類共通なのかも知れません。

             
               (新宿御苑のレバノンスギ)

日本の杉はスギ科ですが、レバンノン杉は名前に反してマツ科。私の知る限り、日本でレバノンスギの生木が見られるのは東京の新宿御苑のみ。
どうしても見ておきたくて、2年前仕事で東京に出張した際に立ち寄って撮影したのが上の写真。けっこうな巨木でした。現地のレバノンではすでに小さな森にしか残っていないそうです。
私が死んだら舟形じゃなく普通の棺桶でいいです。材も高価なヒノキやキリじゃなくて、安いモミでいいです。
コメント (2)
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