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樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

アンズの林

2007年04月13日 | 木と医薬
写真はアンズのチョコレートケーキ。大阪で評判になっている「五感」というお店で買ってきました。ケーキ好きの妻が「今まで食べた中でこの店がNo.1」と言うので、最近よく利用しています。トッピングだけじゃなく、ケーキの中にも刻んだアンズが入っていて、とても美味しかったです。

      

このアンズ(杏)ですが、杏林(キョーリン)製薬という薬メーカーがありますし、杏林大学という医科大学(現在は4学部の総合大学)があります。アンズの林は医学に関係しているようです。
この「杏林」は中国の故事に由来します。その昔、中国に董奉(とうほう)という医師がいました。彼は患者を治療してもお金を受け取らず、その代わりに病気が治った人には杏の苗を植えてもらいました。
その杏が10万株もの林になると、今度はその実を売って穀物に換え、貧しい人々に配りました。以来、良心的な医者のことを「杏林」と呼ぶようになったそうです。アンズの苗ならいくらでも植えるので、こんな医者に治療してほしいものです。

      
         (アンズの花。万博公園で3月末に撮影)

アンズは植物学的にはウメに近い樹で、アンズとウメとスモモが一つのグループに分類されています。中国原産ですが、平安時代にはすでに日本に渡来していたようで、当時は「唐桃(からもも)」と呼ばれていました。
昨年、妻の具合が悪くなったので、近くの医者に往診してもらいました。高級外車に乗って看護士と一緒に…と思っていたら、意外にもトヨタのスターレットで一人で来られました。私の車よりも小さく古いタイプです。それを見て、「この医者は信頼できるな」と思いました。
その後、薬を受け取りに病院に行きましたが、狭い待合室は患者さんでいっぱいでした。このあたりでは評判のいい医者のようです。わが町の杏林かな?
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馬も鹿も嫌い

2007年03月16日 | 木と医薬
よく訪れる花寺ではアセビが満開でした。花が赤いのはアケボノアセビという栽培種で、野生のアセビの花は白です。

      
          (花寺のアケボノアセビ)

アセビは「馬酔木」と書きます。馬が食べると中毒を起こして酔っ払ったようになるからです。また、足がしびれるので「あしび」→「あせび」になったという説もあります。
葉にはアセポトキシンという有毒成分があるので、こういう現象が起こるのでしょう。昔はこの毒性を生かして、葉を煎じて便槽の殺虫剤にしたそうです。
また、前にも書きましたが、奈良公園にアセビが多いのは、有毒であることを知っている鹿が食べないからだと言われています。そのせいかどうか、春日大社の西にはアセビの純林があるそうです。
アセビはツツジの仲間。そう言えば、このスズランのような花の形はドウダンツツジやヨウラクツツジに似ていますね。
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難転屋敷

2007年02月07日 | 木と医薬
近所にナンテンを生垣にしている家があって、私は勝手に「南天屋敷」と呼んでいます。今頃はご覧のように赤い実をいっぱいつけて、道行く人もつい目を引かれているようです。
ナンテンは昔から「難を転ずる」という語呂合わせから家の鬼門によく植えられています。前にも書きましたが、こうした言葉の音(おん)によって別の意味を連想する文化は日本独特です。わが家も1本植えていますが、鬼門かどうかは知りません。

      

南天と言えば、のど飴。テレビでCMを流している常盤薬品のホームページによると、ナンテンの実に含まれる成分が気管を広げたり中枢神経に作用して咳を鎮めるうえ、殺菌作用で炎症を抑えるそうです。
そう言えば、赤飯の上にナンテンの葉を置きますが、あれもこの成分の殺菌作用を利用しているとか。ちなみに、ある本に「祝い事の赤飯は葉を表向き、仏事は葉を裏向きにする」と書いてありましたが、私は知りませんでした。

      

ナンテンはまたお箸にして、無病息災とか長寿の意味を込めます。これも殺菌作用によって食あたりを防ぐという由来があるのでしょうか。あるいは、単に「難転」という語呂合わせかも知れません。
ナンテンは住まいだけでなく、食生活でも人間のいろんな難を転じてくれているわけです。そんな樹がたくさん植えてあるあの南天屋敷は、ほとんどの災いが逃げていくんでしょうね。
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死神の樹

2006年12月07日 | 木と医薬
      

ビワの花です。今ごろ開花し、来年の6月に実が成ります。
この写真もそうですが、私の近所にはビワを庭に植えている家がたくさんあります。ところが、地方によって絶対に庭木に使わないところもあるようです。
「庭にビワがあると身内に死人が出る」「屋敷内にビワがあると病人が絶えない」「ビワは植えた人の死を待って開花結実する」など不吉な言い伝えが残っているからです。まるで死神扱いですね。

      
        (ビワの葉は大きな楕円形で葉脈が明確)

その一方で、例えば静岡県のように、悪疫を予防するとか魔除けになると言って積極的に庭に植える地方もあります。実際、漢方では湿布薬としてビワの葉を使い、「大きな薬効がある王様の樹」という意味で大薬王樹(だいやくおうじゅ)と呼ぶそうです。地方によってまったく正反対の意味があるのは興味深いですね。
アメリカではJapanese Plum(スモモ)とかJapanese Medlar(カリン)と表記しますが、ビワは日本自生説と中国原産説があってはっきりしません。学術的にはバラ科ビワ属の樹です。
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昔のタンスにゴン

2006年11月24日 | 木と医薬
クスノキの英名はCamphor Tree(カンフルツリー)。カンフル剤のCamphorです。私たちはこの言葉を「局所的に使う刺激薬」という意味で使っていますが、もともとは樟脳(しょうのう)を意味します。

      
      (クスノキの葉。ちぎって匂いを嗅ぐと樟脳の匂いがします。)

若い人はご存知ないでしょうが、樟脳は昔の「タンスにゴン」です。防虫剤といえばこれしかなく、タバコと同じように、今はなき専売公社の扱い品でした。クスノキはクスシキ(薬師木)に由来するとも言われ、防虫剤以外にも、痛み止めや下痢止め、痛風、強心などの薬の原料になります。
各地に巨木があり、すべての樹種を含めた日本一の巨樹は鹿児島県の「蒲生(がもう)の大クス」(幹周り24m)です。ところが、ある学者はクスノキは日本の自生種ではないのではないかと疑問を投げかけています。

         
    (自宅近くにもクスノキの巨木があります。推定樹齢150年)

根拠は、天然更新が見られないから。つまり、クスノキの実が落ちて発芽し、樹木に成長するという事例がないんだそうです。低木段階で在来種に負けてしまって、成長しないらしいです。
そういえば、鎮守の森やお寺の境内など人工的な環境で大木をよく見ますが、クスノキの天然林というのは聞いたことがないですね。
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松で血液サラサラ

2006年10月05日 | 木と医薬
ペットボトルのお茶が普及して、宇治市民としては嬉しいような、でも宇治茶じゃないので嬉しくないような・・・。
最近は、健康にいいお茶とかダイエットに効果的なお茶とか、いろんなタイプが発売されています。私もつい先日知ったことですが、サントリーの「フラバン茶」って松のエキスが入っているんですね。知ってました?
「フラバン」つまりフラバンジェノールとは、フランス南西部に生育する海岸松(かいがんしょう)というマツの樹皮から抽出されたポリフェノール成分です。このフランスのマツは、日本のマツと違って、ポリフェノール含有量が多いために樹皮の色が紫色だそうです。

         
     (「宇治茶まつり」が行われる興聖寺の茶筅塚のマツで撮影。)

フラバンジェノールの発見はネイティブアメリカンの知恵が発端で、16世紀にフランスのジャック・カルティエが北米を探検した際、マツ科の樹木が健康にいいと原住民に教えられたことが始まりだそうです。その後、ボルドー大学の博士がフランス海岸松の厚い樹皮に健康にいい成分が含まれていることを発見し、以来30年間フランスでは健康維持成分として利用されてきたそうです。
私は機能食品とか機能ドリンクはあまり摂らない方ですが、マツの樹皮の成分と聞いて買ってきました。サントリーを贔屓(ひいき)にしていることもあります。敬愛する作家、故・開高健がサントリーのコピーライター出身なので、ビールをはじめ飲み物は基本的にサントリーにしています。
話がそれましたが、フラバンジェノールには抗酸化作用があって血液をサラサラにするとか、コラーゲンの生成を促進して美肌効果があるとネットの記事には書いてあります。美肌はさておき、血液サラサラを期待して飲んでみました。けっこうおいしくて、しっかりお茶の味がします。
でも、やっぱりお茶は、宇治でも静岡でも八女でもいいですが、茶葉を急須に入れて、お湯を注いで、じっくり蒸らして、お気に入りのお湯飲みで飲むのが一番おいしいです。
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毒にも薬にもなる市の花

2006年09月28日 | 木と医薬
昨日サルスベリをご紹介しましたが、キョウチクトウもまだ花をつけています。ムクゲの花もまだチラホラ・・・。夏の樹の花は長く咲く傾向があるようです。
サルスベリには「百日紅」の別名がありますが、それに対抗してか、キョウチクトウには「半年紅」という別名がつけられています。

      
    (6月30日に比べて数は少ないですが、まだ花が咲いていました。)

写真のキョウチクトウは6月30日の記事でご紹介したのと同じ生垣。もう3ヵ月も経つのに、まだ白い花をつけていました。サルスベリに劣らず花期が長いですが、いくら何でも半年はオーバーですね。

前回の記事でも書きましたが、この樹は花も葉も根も有毒です。逆に、汚染物質には強く、工場の緑化などによく利用されます。国立公害研究所によると、汚染物質に含まれる硫酸塩を最もよく吸収するのがキョウチクトウだそうです。
そういう理由からかどうか、公害訴訟で有名になってしまった尼崎市の市の花はキョウチクトウです。制定されたのは1952年ですから、まだ公害が社会問題になる前のこと。戦後の復興とともに工場が建てられ、その周りにキョウチクトウがたくさん植えられたので、市の花に選ばれたのでしょう。

      
      (3ヵ月経っても蕾があります。これからまだ花が咲くのです。)

一方、キョウチクトウを市の花に選定しておきながら、途中で変更した市があります。長崎県の佐世保市です。
市の花としてキョウチクトウを制定した矢先に、牛がこの葉を食べて中毒死するという事件が起きたそうです。当時、毒性のある樹を市の花にしていいのかという論議があったようです。
そして、平成14年の市政施行100周年を機に、市の花はカノコユリというユリの花に変更されました。担当者も、市の花を変更できてホッとしたでしょう。
毒があるということは、逆に言えば薬にもなります。キョウチクトウには強力な強心配糖体成分があり、それが強心薬に利用されるそうです。
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胃~腸し!

2006年09月22日 | 木と医薬
昨日ご紹介した黄檗山(おうばくさん)万福寺は、中国から渡来した隠元禅師が開いたお寺です。福建省の黄檗山から来られたので、その中国の地名がお寺の名前になっています。
この「黄檗(おうばく)」、実は木の名前で、日本では「キハダ(黄膚)」と言います。この樹の外皮の下に黄色い内皮があるのでこの名があります。この内皮は昔から胃腸薬に使われてきました。

           
  (よその樹なのでできませんが、外皮をはがすと黄色い内皮が露出します。)

      
   (キハダの特徴はコルク質の外皮と、小葉の間隔があいた羽状複葉)

わが家では、お腹が痛いときや食あたりの時は「百草丸」という和漢薬を飲みます。15年ほど前、信州・御岳のバードウォッチングツアーでお土産に買って以来、この薬のお世話になっています。
主成分は「オウバクエキス」、黄檗(おうばく=キハダ)の内皮です。そのほか、ゲンノショウコも配合されています。関西では奈良県の「陀羅尼助丸(だらにすけがん)」が有名ですが、これも主成分は同じくオウバクやゲンノショウコです。

           

御岳では「百草丸」がお土産になっていますが、山形県の銀山温泉ではキハダで作った湯呑みがお土産になっていて、「お湯を注いで飲むだけで整腸作用がある」を売り文句にしているそうです。
それにしても、「百草丸」の製造元「長野県製薬」という名前は注目です。県名がフルネームで入っている社名は珍しいでしょう。
箱のフタには「胃~腸し!キャンペーン実施中」と印刷してあります。私も駄洒落は大好きですが、コピーライターという職業から見ると、胃が痛くなるような文案です。
なお、万福寺の境内にはキハダの老木があって、宇治市名木百選に選ばれています。
      
      (万福寺のキハダはたくさんの実をつけていました。)
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モクレンの狂い咲き

2006年07月01日 | 木と医薬
いつも通る道で、ある家の庭に紫木蓮(シモクレン)が咲いているのを見つけました。3月末に開花するのが普通ですが、狂い咲きでしょうか、汗ばむ時期に見るモクレンは初めてです。

         

うちには白木蓮(ハクモクレン)があるので、春先にはいつもこの紫木蓮(シモクレン)を見ながら、「うちの花より大きい」とか「花の数はうちの方が多い」と比べていました。

わが家のハクモクレンは狂い咲きはしていませんが、この時期、若い実をたくさん落とします。お隣の駐車場にも落果するので拾い集めるのが大変です。秋には、もっとゴツゴツとしたコブシのような実をつけます。

      

「モクレンは鼻の薬になる」と樹の専門書で読んだことがあります。そう言えば、妻が鼻炎で苦しんでいたときに漢方薬を飲んでいたので、ひょっとしてと思って探したらありました。

      

右側に描いてある樹はハクモクレンです。漢字の2行目の最後に「辛夷(シンイ)」という文字が見えると思います。日本ではコブシにこの漢字を当てますが、中国ではモクレンを意味します。
ハクモクレンの若い実を捨てるのがもったいないので、鼻の薬にならないかと思ってとっておきましたが、調べたら、薬になるのは花の蕾だそうです。残念!

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口にしてはいけない樹

2006年06月30日 | 木と医薬
そろそろ夾竹桃が花を咲かせ始めました。うちの近所にも、赤と白の夾竹桃を植えた生垣があります。

      

この樹が有毒であることをご存知の方は多いと思います。明治初期の西南戦争で、官軍の兵士がキョウチクトウの枝を折って箸がわりに使ったところ中毒になったという記録があるそうです。
よく似た話がヨーロッパにも残っています。西仏戦争の際、フランス兵がマドリードでセイヨウキョウチクトウの枝に肉を刺して焼いて食べたら、11人の中毒者が出て内7人が死亡したといいます。

      

イタリアでは別名「ロバ殺し」、インドでも「馬殺し」という名前があるそうです。また、日本の博物学者・南方熊楠(みなかたくまぐす)は、「ヨーロッパでは不幸を招く不吉な樹として忌み嫌われている」と書いています。

      

日本には江戸時代に渡来したようです。花が桃に、葉が竹に似ているので「夾竹桃」と名づけられましたが、その花も葉も、枝も根も有毒です。目にするだけで、決して口にしてはいけませんよ。
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