新聞1面最下段の広告は基本的に「本」の広告しか載らない。そう聞いて購読紙を1カ月さかのぼって繰って見た。形は違うが本以外の広告は載っていなかった。もっと広告料の高いものがあるのではと思うが載せていない。出版と新聞は文字という共通点が親和関係であり、また新聞の1面という体面を保つことにもなる。
そんな本の広告の典型は「サンヤツ広告」と呼ぶ。昔新聞は15段あった。「サン」は記事3段、「ヤツ」は横を八分割したことから名付けられた。今は活字が大きくなり12段になり、3段分ではなく2段と少しだがサンヤツという。サンヤツ広告には絵やイラスト写真は一切使われていない。サンヤツ以外の本の広告にはそれらが使われている。
サンヤツにはさらに細かい規制がる。活字は明朝かゴシック系のみ、網掛けやベタもダメ。「?」や「!]も大きくは出来ない。線は縦横は問わないが直線を使用する。各出版社には「サンヤツ」担当者がいる。ひとつの公告に紹介する本の冊数に規制はない。似たような広告で横六分割のものがある。こちらは書体ほか何の規制もない。
サンヤツの広告には目を通す。いつもあの狭いスペースに推したい本、読んでもらいたい本、買って欲しい本、文言を工夫して収めていると感心する。新聞はテレビ欄だけ見るという人も多いというが、1面は黙読だけでも積み重ねれば知識になる。八分割や六分割の広告にも同じ効果が期待できる。新聞社が体面を保つだけのいい意味を感じるのは肩の持ちすぎだろうか。