裁判長は冷静でなければ

2006-12-28 00:00:56 | 美術館・博物館・工芸品
姉歯秀次裁判で東京地裁の川口政明裁判長は”懲役5年”の判決を言い渡した後、被告に対して、反省を求めたにもかかわらず、シカトされ、「法廷では大変な事をしたという感じが伝わってこなかった。いら立ちを覚えたのも偽らざる事実だ」と怒りのコメントを発表したようだが、気持ちはわかるが、もう少し冷静に対処すべきではないだろうか。日本は三権分立の国であり、司法の責任は重い。今後、裁判員制度が導入されるというのに、感情に任せたように思われる判決は、いけないのではないだろうか。

最近、いくつかの法廷ブログ(HPも)もあり、裁判の内容は広く公開されつつある。また知的所有権や民事の裁判では、当事者の両方から、裁判の内容、裁判官の言葉、証拠物件などを公開、さらにいずれも側からも弁護士の意見まで公開され、裁判所外で公開裁判風の事例もある。

例えば、将棋連盟会長の米長邦雄氏および関係会社が同連盟の武者野六段及び関係会社から将棋ソフト盗作問題で訴えられた件では、双方のホームページに証拠や裁判官の発言(失言)、などの暴露合戦になっていた。(事件は、また誰かが分析するだろうが、武者野六段の名前で売れなかったソフトを、廃棄させ、微修正して米長名で発売したところ売れた。著作権を武者野六段が放棄したのかしなかったのかというようなところが争点だったような気がする。最近、双方とも公表していた内容を少し削除始めていたと思ったら、結局、米長会長側の盗用が認定され、対価を支払うようである。

裁判官も常に判決文が市民の目にさらされるようになったということで、緊張を強いられるようになったということ。私の勘では、2007年度は公判傍聴ブームになるのではないだろうか。なかなか変わった裁判官もいるわけだから・・


さて、話を姉歯事件に戻すと、懲役5年というのは、マンション強度偽装設計の罪ではなく、国会での偽証罪ということ。まさか、単に刑が重いからという理由で、偽証罪の方を採用したことはないのだろうが、どこが偽証なのかと言えば、「強度偽装の強要の圧力を感じていた」というところである。つまり、この部分を偽証と結論したことは、この事件は、姉歯主導型の事件であり、強要はなかった、ということにお墨付きを与えてしまったように考えられる。

全貌が存在するのではなく、個別の詐欺とか、手抜き検査とか、建築士資格の名義貸しとかがそれぞれ存在するだけであり、「これにて一件落着」ということになる。仮に、姉歯氏が国会で、「圧力があったとかなかったとか証言し、後で発言を裏付ける証拠が提出できないと、偽証の罪を問われる可能性が否定できないので、これ以上は発言しません」と言っていれば、罪は相当軽かったはずだ。自分で証明できないことをあいまいに喋ると、重い罪を受けるとなれば、今後、証人喚問で聴きだせるのが氏名だけということになるのかもしれない。


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