メダル交換の周辺

2021-08-15 00:00:24 | スポーツ
東京オリンピックは障害物競走のように様々なレベルの低次元の問題をまき散らしながら、その都度、妨害物を除去しながら開会にこぎつけ、多くの感動シーンが色あせないようにという配慮の元に印象の薄い冴えない閉会式を終えることになった。

閉会式(開会式もだが)が惨めだという声は多いが、考えてみれば、日本の台風シーズンの最中に(実際、二つの台風の隙間に閉会式だった)、大金を投入する気にはならないだろう。雨を防ぐはずだった国立競技場の屋根は、ごたごた劇の第一幕で除去されていた。

そして、ごたごた劇のアンコールのように幕が下りてからの寸劇があった。名古屋市長によるソフトボール女子選手の金メダル噛みつき及びセクハラ発言。

当初、組織委員会はメダル交換の事案ではないとしていたが、選手所属チームで五輪スポンサーでもある自動車会社や文部科学大臣の怒りもあり、予備のメダルと交換されることになった。

この件については、「交換するほどでもないのではないか」とか「本人が我慢するというのだから交換しなくてもいいのではないか」とか「みんなで一緒に受け取ったメダルの方が嬉しいのではないか」という意見もあった。名古屋市長も、お前が言うかと思うが「噛んでも傷はついていないはず」と開き直り的であった。


個人的に思うと、それでも本人が交換するということになったのは、メダルに傷がついたのではないだろうか。何年もの努力の末に手にいれた金メダルである。業者主催のゴルフコンペのトロフィーじゃないわけだ。

ということで、金メダルの金について調べてみた。無論、金メダルは銀メダルに金メッキをほどこしたものということは周知なので、金の厚さを計算してみる。

まず、東京五輪の金メダルと銀メダルだが、どちらも直径が約85ミリ。厚さは7.7ミリから12.1ミリである。この4.4ミリの幅だが、台の上にギリシア神話の女神、「ニケ(NIKE)」の彫像が施されていて、その厚さである。余談だが「ニケ」で有名なのが、ルーブルにあるサモトラケのニケ。ヘレニズム期を代表する大理石の彫刻であり、ナイキ社の社名の元である。あのレ点のようなブランドマークはニケの翼のカーブに由来している。

重量は銀メダルが550g、金メダルが556g。これは、金メダルには6gの金を使うという規則があるからだ。つまり銀メダルを作ってからメッキをかけているのだろう。ということでニケの彫像部分の厚みは無視して、直径85ミリ、厚さ7.7ミリのメダルの表面積に対して6gの金は厚さが何ミリになるかということになる。

まず、表面積。表の部分は円の面積だから42.5ミリ×42.5ミリ×3.14‥=5672平方ミリとなる。
裏の面積も同じ。さらに横腹の面積だが円周×厚さとなる。85ミリ×3.14‥×7.7ミリ=2055平方ミリとなる。表、裏、横の合計は、5672×2+2055=13339平方ミリとなる。

次に6gの金の体積は金の密度(19.32g/立方センチ)から、6÷19.32=311立方ミリとなる。

したがって金メッキの厚さは311÷13339=0.023ミリとなる。コピー用紙0.07ミリの1/3である。

キズが付いたのは間違いないだろう。水でゆすいで、消毒用にアルコールで表面を拭いて、殺菌のために紫外線を10分間浴びせても、キズは残る。よく見れば、小さな傷があり、選手は言うに言われず、嫌な気持ちが続いていたのだろう。

結果として、メダルは元に戻っても、想い出はなくなってしまった、ということだろうか。

ただ、ポジティブに考えるならば、この追加交換メダルは、本来なら男子マラソンの勝者が手に入れたはずだった記念すべき「東京オリンピックの最後の金メダル」になったことは間違いないだろう。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿