地名の謎を解く(伊東ひろみ著)

2024-05-20 00:00:14 | 書評
新潮選書のことだが、内容とタイトルが食い違っていることがある。本書もそういうところがある。

日本中には数万ではきかないほど多くの地名がある。できたてのものもあれば、千年以上前からの地名もある。地名とその語源は、多くは物語でつながっている。あるいは、つなげるために物語が作られることも多く。混在していて見分けることは難しい。嘘でも1000年経つと真実になったりする。



さらに、実際には千年どころか、日本が統一国家になった頃に留まらず、弥生時代やその前に1万年続いた縄文時代からの地名もあるようだ。

そして、縄文時代論になっていく。そもそも、依然考えられていた縄文時代人と弥生時代人の混血によって日本人が作られたというような簡単なことではなく、縄文時代人の段階でいくつものルーツがあったと考えられていて、それらのルーツにはもはや源流(アジアのとある場所)が絶えてしまったものもあるそうだ。結局、日本から先は海なので、西の方から何らかの理由で日本に来たものの、そこから先には行けない(行けると信じて丸太船で漕ぎ出した家族はいるかもしれないが)。民族の墓場なのかもしれない。

そして一部の語源のわかっている地名と、よくわからない地名がたくさんあるということのようだ。つまりタイトルの『地名の謎を解く』ではなく『地名の謎が解けない』の方が正しいような気がする。