居残り佐平治(演:柳家権太楼)

2024-05-08 00:00:09 | 落語
この噺、五人でひとり1円で飲みに行くところから始まる。1円と言ってもアルミ1グラムではなく、現在価値1万円ぐらいだろうか。行先は品川。品川の遊郭というのは、江戸時代は有名だったが明治以降もそうだったのだろうか。時代は江戸時代なのか維新後なのかはよくわからない。(落語ではよくあることだが)

中心人物は佐平治。残りの四人は特に友達と言うこともなく臨時に集められたようなもの。現代的に言えばネットで募集したようなものだ。品川の遊郭で酒や料理、そして芸者と遊べば現在感覚でいえば一人5万円ぐらいだろうか。とても金は足りない。

四人を先に返し、「自分は今夜はここに居残り、明日の晩に四人が金を持ってくるから」とさらに追酒や飯を追加。そして数日後に、ついに店から勘定を突き付けられると、「金はない」と居直る。そのため、布団部屋に監禁されることになる。

ところが、夜になって座敷が忙しくなると、のこのこと他の客の前に出て、芸を披露してご祝儀を手にしたりすると、店の使用人たちが怒り、ついに主人が追い出そうとやってくるのだが、佐平治は「自分は逃亡中の犯罪者」で、捕まると「この店が匿ってくれた」と証言すると脅し始める。そもそも品川の遊郭には免許がなかったわけで、そういう話になると困るということで、江戸(あるいは東京)を離れるように渡された大金を手にして、遁走するわけだ。

現代だと、逃亡中の犯罪者と名乗ったりすると、すぐに始末されてしまうだろうが、当時はそうはいかない。行き先が吉原ではなく品川というのは無免許営業の弱みに付け込もうという作戦だったのだろう。

それにしても1円で遊んだ4人だが、軽い気持ちで遊んで、後で逮捕されるこころの影を引きずることになったわけだ。