大震災の夜に一瞬笑った、かもしれない人

2011-03-19 00:00:29 | しょうぎ
順位戦B1級最終戦。注目は、屋敷伸之・松尾歩戦。勝った方がA級に昇級。直接対局である。ところが、対局の行われた3月11日。東京の将棋会館も地震に襲われることになる。将棋連盟のHPによれば、地震のあと、午後6時まで対局が中断し、その後、余震の続く中、再開されたとなっている。結果、屋敷九段の勝ちということで、39歳で、初のA級昇進ということになった。

個人的には、二人ともに昇級してもらいたかったのだが、昇級枠2のうち既に1席は佐藤九段に決定していた。佐藤九段が突如引退でもしなければ、どちらか一人ということになる。

実際、松尾七段は渡辺竜王と兄弟弟子の関係にあるわけで、仮に松尾昇段だった場合、A級に渡辺明が二人いるような感じになっただろうから、メンバーの多様性という意味で言えば屋敷九段の方が面白いのかもしれない。何しろ、本業の将棋の研究が嫌い、という、なまけもの型人間には鑑のような棋士である。

ただ、若くして棋聖位を獲得した一方、順位戦では大渋滞に巻き込まれてきた。地震のあとの日比谷通りみたいだ。

昭和63年前期三段リーグを1期で卒業。

平成元年。C2リーグを9勝1敗で1期で卒業し、C1級に昇級。

この時、本人含め、棋界の誰もが、今後の彼の大渋滞を予測してはいなかっただろう。事実、棋聖位を獲得する。

C1級の1年目は8勝2敗であったが、この年、C1は上下に勝ち星が分かれてしまい6位になっている。

そのC1の1年目の最初に当たったのが、所司五段(当時)。奇しくも渡辺竜王と松尾七段の師匠である。対局は屋敷新五段の勝利に終わったのだが、負けた所司五段は、その後9連勝し、9勝1敗となったのだが、運悪く、全勝者が2名いたため、頭ハネとなってしまう。後年、竜王就位式などのパーティーのスピーチで、「9勝1敗で昇級できなかったショックで、もう棋士として上を目指すのではなく、将来の名人を目指す棋士を育てる気になった」と述懐している。

痛恨の一局ではあるのだが、逆に竜王を生んだ運命の一局だったというのかもしれない。

そして、棋士屋敷伸之はC1リーグを一度も負け越すことなく牢名主として14期を務め、平成15年、B2級に脱出。B2級も一度も負け越すことなく4年かけてB1級に昇級。ここで初めて順位戦での負け越しを経験。というか降級の危機を逃れる。3年目にしてA級に昇級したものの来期の順位は最下位。4勝5敗の負越しでも陥落危機となるわけである。

遅れてきた青年とは既に呼べない39歳である。思えば、大震災の夜に誕生したA級棋士。相手は皆強いかもしれないが、勝負は時の運としても、ネバーギブアップ精神で粘りぬいてもらいたいものである。


さて、3月6日の出題作の解答。



▲1二金 △同玉 ▲1三金 △2一玉 ▲1一飛 △同玉 ▲2二桂成 △同玉 ▲1二金まで9手詰。

初手が3手目と連動している。そして、この3手目が見えにくいわけだ。1三同玉は1一飛、1二合、2二桂成、1五桂、2二飛成まで9手、駒余りで詰む。4手目下に逃げるようでは勝負ありとなる。

この問題、持ち駒が、飛金金となっているが、飛香歩でも詰むのだが、それでは誰でも歩、香、飛と順番に駒を打ってすぐに詰ませてしまうのだろう。

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今週の問題



以前の作のリメイクで恐縮。通勤疲れで余裕なし。


わかった、と思われた方は、コメント欄に最終手と手数を記していただければ、正誤判断。




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