建築士Aのミニチュア作品

2006-03-04 07:00:16 | マーケティング
38f90e6c.jpg表参道ヒルズがオープンして20日経過。最初行った時は休日でもあり、まさに正月の明治神宮状態で、ただただ表参道駅から原宿方面に下る緩やかな坂道から自動的に建物に吸い込まれ、なぜか建物の中に設置された坂道を歩き続け、本人の意図に反し、お賽銭を何ヶ所かに寄贈して帰ってきた。たまたま、2月末に都内のホテルで行なわれたシンポジウムのつまらなさに途中で失礼することとなり、時間のスキマに再訪する。まったく顧客層が変わっていて、心配数々。

まず、建物の構造だが、全面道路の表参道に250メートルも面する一等地だが、奥行きがない。どうしてこういう地型になったかはっきりわからないが、たぶん道路拡張が原因なのだろう。そこに横長の建物を建てたわけだが、3棟並ぶ真中の「本館」が中心である。地上6階、地下6階という妙な構造は地上3階、地下3階が一般店舗で地下4階は駐車場。残りのフロアのことはよく知らない。設計は安藤忠雄氏。

そして、このダックスフントのように横長の建物に入ると、第一感が「狭い!」。第二感が「どこかで見たことが・・」。

38f90e6c.jpgどういうことかと言うと、横長の建物の中に細長い吹き抜けのパティオ(中庭)がある。先の尖った二等辺三角形の中に穴をあけたようなものである。パティオを取り囲んで通路があり、その外側に店舗がある。そして、その通路は微妙に傾斜がついていて、一周すると、次の階となる(スパイラルスロープ)。表参道自体が坂道なので、下手をすると、坂道を歩き続けることになる。そして地下1階から地下3階へとつながるパティオの底には、地下3階の見えない場所にある[O:]という名前の多目的スペースへの長い石段が広がる。しかし、その階段は、地下1階側が幅2メートル程度の極細なのに、地下3階側が幅15メートルほどと末広がりになっていて、非常時に地下から地上に這い上がろうとすると、非常に危なそうに見えるのだが、ビルオーナーの森ビルは「歴史的建造物には悲劇的伝説が必要」という教訓を、既に六本木ヒルズで学習済みだ。(もう一つのリスクは、売上不振の店長が精神的に追い詰められて中庭に飛び込む可能性だが、痛そうなので、忘れておく)

スパイラル店舗で有名なのは、渋谷の東急ハンズであるし、三角形のパティオで有名なのは新宿高層ビル街の住友三角ビルであるが、ショッピングモールとして、既視感をもたらしているのは、ホノルルにある「アラモアナセンター」ではないだろうか。まあ、建築士「A」は絶対に認めないだろうが・・

そして、空間の話をすれば、「いくらなんでも店舗を詰め込み過ぎ」ではないだろうか。息苦しい。話は飛ぶが、地球温暖化問題の議論の先には、CO2がある濃度を超えると、O2が減少して、地球上の動物が全部窒息死するというデッドラインがあるそうだ(動物が全部いなくなると植物の世界になって、また酸素濃度は高まるらしい)。表参道ヒルズは、実験室になるかもしれない。

ところで、オープンの時はランダムだった顧客層だが、かなり一極集中しているように思えた。年齢層20歳から26歳。女性比率2/3。買物比率少な目。カフェは満員+長蛇。そして困ったことに、出店している店舗(ブランド)は、「中の上」、「上の下」といったところのように思える。狙い目年代は30~35歳(団塊ジュニア)かなと思うが、実際の来店顧客は少し若い方(団塊ジュニア以後)になっている。ちょっとおカネには厳しい世代のはず。そして、この場所の苦しいのは、もう少し高級店(上の中、上の上)は、既に表参道に進出して立派な店舗を構えている。

そして、レストランやカフェが絶対的に不足している。そして、これからブームになるウィスキーのシングルモルトをひっかけようとしても、飲み屋は1軒もない(ようだ)。一方、大部分の店舗は25時まで開いているので、「店長苦難物語」が予想されるのである。やはりパティオにはセイフティネットが必要かもしれないが、それは、3月分の各店舗の営業報告書ができ上がってからなのだろうと推測。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿