順位戦、瀬戸際のひとたち

2009-02-21 00:00:42 | しょうぎ
将棋界にとって3月は順位戦の季節。上から、A、B1、B2、C1、C2と五段階に分かれたリーグの間で、上がったり下がったり、あるいは引退を含めて地位の入れ替えが行われる。その1年の最後の1局が行われる。A級は3月3日。10日がC2、13日がB1、17日がC1、19日がB2である。ついでに奨励会は14日。

夏の頃から、順位戦の予想でも書いてみようかと思っていて、ずるずるきてしまったが、書かなくてよかった。リーグ後半で、様々な好不調の変化があり、書いていれば大はずれだっただろう。

そして、ファンの関心は、昇級する人のことだけではなく、「降級に追い込まれる人は誰だ」という点にもある。多くの場合、「他人の不幸は蜜の味」という一般論によるのだろうが、中には「陥落して給料が下がったり、各種イベントのギャラが下がったりしてかわいそうだ」という同情心を持つ人もいる。私の場合、「蜜の味」と「同情」のどちらが勝つのだろうか。「?」。そして、個別論。

A級。名人挑戦の可能性は、郷田、木村、佐藤ということだが、羽生名人からすれば、森内、深浦という苦手が登場しないことが確定して、「もう、もらったようなもの」だろう。むしろ、降級の方が混戦で、三浦、谷川、鈴木、深浦が同星であぶない。このうち2人がB級に落ちるわけだ。おそらく、「谷川永世名人(資格)の降級は見たくない」という人も多いだろう。現役引退(あるいはフリークラス宣言)し、次期連盟会長へ向け、立候補準備ということになるのだろうか。

そして、深浦王位。タイトルホルダーながら、あまりにA級運がない。過去2回のA級リーグでは、いずれも4勝5敗で陥落。今回も、最終局で勝って4勝5敗でも、陥落危険性が高い。理論的には、10人のリーグで一人が全敗して、残り全員が5勝4敗になることもあるが、何か、4勝して落ちるのも0勝でも、同じことになるのがむなしい。

B1級。渡辺竜王に昇級の目がない、というのが一つのポイント。そして、第12位山崎、第13位屋敷にピンチが訪れている。特に屋敷九段の5勝6敗。B1に上がってくるまで長々と時間がかかっていたのだが、実は、負け越したことは1回もない。過去19期でリーグ通算7割以上の勝率。指し分けたことが2回。後は勝ち越しである。そして、ふと見ると、最終局で負けると・・。関西の山崎王子の5勝6敗も同様、過去10年負け越しなし。こちらも・・。こういう時に落ちると、立ち直れないことがある。

B2級。本当は、B2ではなくCで、C1がDでC2がEなのだろうが、DやEだと、あまりにも弱そうに聞こえるのでABCだけにした、という俗説がある。加藤、内藤の両ベテランが降級の危機に追い込まれている。加藤九段は猫の餌付け問題でも近隣住民に追い詰められ、八方塞。内藤九段は、降級すれば連盟会長候補へ担がれるとの声も聞こえるのだが、どうなのだろう。

C1級。張出し宮田五段は2年前に急性胃潰瘍で入院。胃の摘出手術まで行い、次年度休場。規定により、降級点1の上、休場1年は降級店0.5点扱い。追い詰められた今年度。ついに勝ち越し決定。降級点はすべて帳消しになった。今のところ全棋士勝率トップなのだから、当然と言えばそれまでだが、これで油断して詰将棋に熱を入れすぎると、まずいかな。

C2級。有吉九段にピンチ。降級点をもって、引退ということになるそうだ。

あまり言われていないが、詰将棋系の先生、総じて不調だったような気がする。

そして、A級最終局は、通常、NHKの衛星放送で終局まで中継されるのだが、今年はどうなのだろう。放送枠の争いは、国会中継が強敵だ。深夜にわたる牛歩戦術とか最悪だ。

そして、できれば女流名人戦A級リーグの最終日も放送してほしいのだけど。

さて、2月7日、出題2題の解答。




1題目。▲2一角 △同玉 ▲3一角成 △同龍 ▲2三竜 △2二歩 ▲1三桂 △同香 ▲1二銀まで9手詰。

最初に▲2四桂というのがやりたい手だが、うまくいかない。6手目の合駒は、何でもいいのが欠点。




2題目。▲3九金 △1九玉 ▲2九飛 △1八玉 ▲2八飛 △同と ▲1七飛まで7手詰。

2手目△1八玉は、▲1七飛打で解決。

5手目の飛車の使い方が骨子だが、この味わかるかなあ。江戸の味。

動く将棋盤は、こちらこちら


今週の問題は、ついでに「江戸の小粋」。



お気に入りの作だが、こういうのは現代的ではないのだろう(江戸時代の作品は、意外に軽快ではないのが多い)。

わかった!と思われた方は、コメント欄に最終手と手数と酷評を記していただければ、正誤判断。


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2 コメント

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A級順位戦、NHK杯 (多良 剛)
2009-02-23 07:24:44
おおた 葉一郎さんおはようございます。

今回のA級最終局ですが、他人として将棋好き的に見ていて精神的にきつい展開です。
まだ終局になってないので断定上でどっちが勝ちかいいようがないのですが、確かに谷川永世名人が最終局負けるのはみたくないのです。また万が一での三浦先生の降級も。
そういわれるとここ最近数回見慣れた9位・10位の降級が最有力ですが、ちょっと次期は流れが違っていてB1で最終局を待たずでほぼ10年ぶりで井上先生のA級昇級が決まったんですよね。
手品のたねあかし(結果論的)で話すのもなんなんですが、実は井上先生のA級復帰の空気(雰囲気)はおそらくで少なくとも1年以上前からあったんです。
同様で高校竜王戦で横山さんが2連覇になる確率がかなりの高確率(競馬などの予測的にはすごくおいしいところ)だと初優勝獲得の時点(またはそれ以前)でわかっていたりとか。

おそらくで羽生先生はわかっているはずですが、今回挑戦者が森内、深浦でないからおいしいとは思えてないはずです。そう大半で思った瞬間でおそらく今までの傾向で名人失陥になっているはずです(逆で挑戦者が森内、深浦だったらおいしいの考え方も存在)。

NHK杯ですが、昨日22日は森内-渡辺戦でした。近々の傾向では竜王5連覇の渡辺断然有利だったはずですが、かなりショッキングな結果(昔風ないいようで、早い段階で森内先生の指がしなった展開)でした
その前の週で羽生先生も勝ちになっていましたが、この2局の比較でいうと今の私は森内先生の今回NHK杯の将棋の進め方に好感をもっています。

ここには詰将棋おもちゃ箱の詰将棋メモのリンクから来ているので詰将棋的に言うとこのNHK杯の2局を単純比較すると森内先生の実戦の詰め方がすぐれています。確か羽生先生は11手詰くらいの決めを1度パスしてしばりというか、必至をかけられていますが、一方森内先生はおそらくでアマ初段ならほとんどの人が詰めにいかない(いけない)手数のを詰めきっています。
ただどちらにしろ最終盤で逆転負けになっていないので決勝で2人が当たるとするならそれはそれで別の1局が展開していきます。

女流名人戦も1-1になったまでで次対局(第3局)がいつかは忘れていたんですが、土曜日囲碁将棋Jを見ていてこれはこうなるの予想(結末)が見えました。確率は99%でどっちが絶対ではないんですが、どう転んでも気持ち(感想)は単純には言えないところです。

最近はどうもプロ棋士にとっては、TVで首相や大臣がああいうことになってると同様になっているようです。
簡単に言ってしまうと市販の激指、新東大将棋、AI、Bonanzaなどあると別に将棋棋力がアマ10級未満だったとしても愛好年月や、興味がある程度行けると(またはCOMソフトがある程度使えるなら)やっぱり一般アマからプロ棋士への敬意ってだんだんとこのままでは下がっていく一方なのかもしれません。

最近「決定力を鍛える ガルリ・カスパロフ(NHK出版)」を再読したんですが、将棋はかなりチェス(囲碁)の現状からかなりで遅れています。
考えようで自己啓発本で翻訳になってない外国本が先進だと同様なところなのでしょう。

今現状で将棋の最強・最高は?って質問されてそれは羽生永世6冠だとか、渡辺竜王5連覇者だと答えれる世界中のCOM将棋プログラマーのエキスパートはいらっしゃらないと思います。かといって今奨励会3段前後の将来有望な、若手棋士(男性女性ともに)でもないんです。

谷川先生についてはA級最終局の結果がどうであれ、今まで以上に多忙になるはずです。どういう結果あっても、時代の流れには適応していけないとTOP棋士(世界BEST10)の地位は今後は特に維持していけないのです(人間棋士どうしの間であっても)。

アマチュアにとっては将棋を存分に楽しむ上でたいへんいい、便利な時代です。
おそらくでご存知だと思いますが、昨年5月にCOM世界大会の8ソフトは多少の対局結果の違いはあれど、アマ初段前後から見るとそれぞれ個性があっていいコーチ役になれるソフトばかりです。今度の5月COM将棋大会で棚瀬将棋が出れないのではのNEWSもさっき見ましたが、昨日の最強戦の結果からいくと現状でいい強さ(一般アマから見て)なのだと思えました。

今度の世界大会は昨年以上に期待できるところですね。
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Unknown (おおた葉一郎)
2009-02-24 11:01:07
多良剛さん、こんにちは
長いコメントありがとうごさいます。
順に。
1.A級、NHK杯のこと
 特に個人的に肩入れしているのは谷川先生ですが、最近の調子からいうと、「達人戦」以外はタイトルは無理かな、と思えるのですが、晩節を醜くしないでほしいと思ってます。
 誰かが陥落しないと、次の人が上がれないのすから仕方ないでしょうし、張り出しを作ると、新聞上問題がでそうですね。10人リーグだと、45局。これに7番勝負を足すと52局。365日で割ると一局7日。手数が140手(プロ用棋譜用紙1枚)とすると、1日20手。囲碁と違い、読者は頭の中で駒を動かさなければならないので、20手は限界的です。
 NHKは見ていないので、評価できないのですが、トップ棋士の詰め将棋の力は、谷川、佐藤、森内は抜けていると思います。詰めに行くのは、すべての変化を読みきってからなので、結構危険ですから。(もちろん受けなしの場合は、どんどん行くしかないですけど)

2.羽生さんも、うかうかしていると無冠になって、来年の今頃は、3勝5敗で最終局みたいな展開になって、将棋界の破滅を飾ったりしかねないのですね。「羽生がいないなら、スポンサー降りる」とか。

3.カスパロフ本さがしてみます。
4.com将棋ですが、序盤は定跡拝借型で、それでいいのかなとか思ってます。東大将棋部みたいで、本当の真価を感じるのは、中盤の底の方と、入玉を狙ってくるタイミングですね。
5.将棋は伝統芸能としては、生き残ると思いますけど。
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