ガリンペイロ(国分拓著)

2022-12-14 00:00:45 | 書評
アマゾンにこだわる作家、国分拓氏によるドキュメンタリー風小説。



アマゾンの奥地には今でも金鉱石が眠っている。そして多くは非公認の鉱山だ。岩石の中に含まれる金を掘り出して、砕石し、精錬するのは厳しい肉体労働だ。多くは4~5人のチームで作業を行い。採れた金の7割は鉱山主、3割がガリンペイロと呼ばれる肉体労働者の頭割りになる。

そこには、来るものを拒まぬ開放性と、破れば殺されるような厳しい掟がある。無法地帯なので、殺人犯をはじめとする犯罪者や無一文の人生破綻者が多く集まり、そのうち消えていく。

少人数の仲間で働いても、しょせんは働きが悪いと割り勘負けするので追い出される。行き先があろうかなかろうか関係ない。

掟が厳しいのは新撰組のようだが、新選組はれっきとした公務員だった。生活の悲惨は『蟹工船』そっくりだが、『蟹工船』は表面的には資本主義の底辺で苦しむ工員小説だが、その構造の先には国家資本主義という枠があったのだが、ガリンペイロは蟹工船と同じような労働者小説であるのだが、その奥に何かの見えない枠があるわけでもない。自由意思で秘密の鉱山に来てもいいし、抜けるのも勝手だ。

本小説の主人公のような存在は『ラップ小僧』といわれる調子のいい無責任男で、億万長者になることを夢に見て鉱山を渡り歩いて、結局は他人の掘った残滓の山の中から一人で落穂拾いをすることになり、結局、人生で掘り出した金の総量は4グラムということなる。

楽しい話がまったくないのだが、人生に行き詰った人がこの本を読んでも「ラップ小僧のような辛い人生もあるのだ」と思ったところで、あまり慰めにもならないような気がする。

突然、山から消えてしまうわけだ。

今年、100冊目の読了。